世界が憎しみで 壊れてしまう前に。
京都シネマにて鑑賞。 残念ながら、初日の監督さんの舞台挨拶には行けませんでした。上映は1日1回。14:50から上映のみ。終了は19:35。何と4時間半強という長さです。「愛のむきだし」以来の長丁場となりました。
物語は複数の人物が登場します。家族を殺された幼い娘、妻子を殺された若い夫、復讐代行を副業にする警官、理由なき殺人を犯した青年、その青年と家族になろうとする女性。。。。彼らを中心に、20人以上の登場人物が、複数の殺人事件をきっかけに繋がっていくストーリーです。
全9章からこの作品はなっています。
4時間38分の物語をどう書き記したらいいのか分かりません。なので印象深いところをいくつか書きたいと思います。 妻子殺害事件で思いだすのは、あの山口県光市母子殺人事件です。夫である男性の会見が今も印象的だったのを思いだします。まさにその当事者と同じく、夫の憎しみを抱いたあの発言は重なります。 ここで描かれているのは、犯罪被害者となった家族の姿です。裁判での極刑が下されないなら、自らの手で加害者を殺したいという強い憎しみ。そりゃ愛するものを失って正気でいられないでしょう。 しかしその思いは永遠に背負わなくてはいけないものでしょうか?また苦しみから解き放たれることはないのでしょうか? 両親と姉を殺された幼い少女サト。犯人は事件後、自○してしまいます。復讐したくてもその相手はいません。そんなサトが偶然テレビで目にしたのが、妻子を殺されたともきの会見でした。司法でだめなら、自らの手で、、、。この言葉がサトの心を打ちます。その日から、トモキは彼女のヒーローに・・・・。
復讐を美と捉えているような気もしたのですが、、、。どうでしょうか。
そしてこの人、サトが焦れたヒーロー的存在 トモキ
妻子を殺された夫トモキ、加害者の少年が無期懲役となり、その事に怒り苦しむ。法律が罰しないなら、自ら手を下すと言い放つのだが。。。。。
第3章『雨粒とRock』では、鍵屋で働いていており、その姿を見る限り、復讐に燃える執念の男には見えないです。多分事件への記憶は時間とともに薄らぎ、気持ちも平穏になりつつあったのかも、、、、。
そして新しい出会いが。
トモキと、幼い頃父親から受けた暴行のため右耳が聞こえなくなった、ロックギターをやっている22歳のタエ(菜葉菜)との出会い。タエがトモキに絡み、それを優しく受ける?というか彼もどうしていいか戸惑う。必然的にそれは結婚へと繋がった。
一方、犯行当時19歳だったトモキの妻子殺しの犯人のミツオ(忍成修吾)には、事件から約1年後の2000年8月に無期懲役の判決が下され、確定していた。
トモキにすれば、無期懲役という決定は十分ではなかったはず。出来れば極刑を望んだはず。でもタエとの結婚を機にその思いは当時より薄らいだようだ。
さてそんなトモキとサトの接点は第4章『船とチャリとセミのぬけ殻』で、、、、。事件から8年が経過していた。
16歳になったサト(寉岡萌希)は今、とある島で妻・タエとかわいい娘の3人で幸せそうに暮らしているトモキの元を訪ねる?のが目的みたい。訪ねて何をどうするのか?
あくまでも、接点は2人が遭遇した家族殺人事件である。
サトはトモキに何を求めるのか?そしてついにサトの口から切り出される重い話で何となくわかる。
「殺してやるんじゃなかったんですか」と詰め寄るサト、それに対しトモキは「家族を殺された人間は幸せを願っちゃダメかな」だ。
その答えに、サトは何と「ダメだと思います」というきっぱりとした言葉。
8年の経過でトモキの気持ちに変化。しかしサトはこう続ける。無期懲役だったはずの憎っくき殺人犯・ミツオは今、釈放されて刑務所を出ている。それを見過ごすべきなのか?と、、、、。
つまり8年前の宣言を実行するべきだ実行せよというのだ。さて迫られたその復讐をトモキは一体どうするのか?
サトとトモキの関係は復讐という接点で動き始める・・・・。
そしてその復讐のターゲットとなるミツオ。彼は刑務所を出所後、保護司のフォローでに就職先を探していた。ミツオの就職を頼まれたシオヤ(光石研)は、予想どおりミツオの採用を真っ向から断った。
さてミツオだが、彼は恭子の養子となって2人で仲良く暮らしていた。それはすべて恭子の申し出からである。しかし現在の恭子の病状は日々悪化。そして、今やミツオに対してすら、時々「あなた、一体誰?」と言い出す状態。この先2人のいく末は?
第2章『桜と雪だるま』では雪深い東北の鉱山跡の廃墟で、カイジマ(村上淳)が波田(佐藤浩市)を追い詰め殺そうとする場面が展開される。警察官であるカイジマは実は裏の稼業「復讐代行」なるものをやっていた。彼が波田を殺そうとしているのは、波田の妻からの依頼を受けたビジネスらしい。その後も動物園の飼育係黒田(津田寛治)を拳銃で追い詰め、撃つという場面もある。これもその裏稼業のようだ。
公務員なので、この副業が見つかるとヤバいはずなのに、どうして?目的はおわかりのようにお金だが、、、。
その理由は後半で分かる。
第6章で、サトの言葉に刺激され、自らの「罪と罰」を意識し始めたトモキが、建築現場で働くミツオの様子をうかがう場面が展開されます。どうなんでしょう。トモキは自らの意思で本当に手をかけることを決めたんだろうか?どうもサトの後押しが勝っているようにも見えたけどね。
復讐の準備は始まった。でもその代わり、幸せだったトモキの家庭には今少しずつヒビが入ろうとしていた。
ミツオを執拗に尾行を始める。ちょっとびくびく、おどおどしながらの尾行である。何だかかんだ言ってもいざ復讐への一歩を踏み出すのは、躊躇するのは当然だ。
ミツオを尾行していたトモキはたまらずミツオの前に飛び出してそう詰問する場面は観ている私も凄い緊張感を覚えた。まるで自分がトモキになった気分である。憎き犯人に手をかけるのは当然?いやそうではない。相手がどんな奴でも手をかけるというのは罪なことだ。
そしてサトは完全にトモキの復讐に加担する協力者だ。
第7章『空にいちばん近い町1 復讐』は、第2章に登場した東北の鉱山跡の廃墟が舞台。ここがひとつのこの作品の主題のポイント的な場所かも、、、、、。
実はここが恭子の故郷だったのである。恭子の先が短いとみたミツオは施設から恭子を連れ出し、恭子に故郷の風景を見せようとしたようである。
恭子役 山崎ハコ。
70年代、一世を風靡したフォーク歌手。こんな人だったのね。遠目でしか見た事がないので、どんな方か知りませんでした。
小柄で細いとは知っていましたが。。。。若年性アルツハイマーだと告知されてショックを受ける人形作家・恭子役で登場。
サトじゃないけど、恭子もまたテレビの報道でミツオの事を知る。
公表されたミツオのコメント、「これから生まれてくる人間にも僕のことを覚えていてほしい」というメッセージ。いずれ、自分の事さえも分からなくなるだろうという記憶喪失の病気に絶望感を感じていた。そんな時ミツオとの接点を求めはじめることに。
このあたりは、何となく薄らとほのかなかすかな希望?のようなものも感じられる。
どなたかが書いておられたが、他にもほっとするような場面があった。それはプレゼントを贈るというもの。
第6章『クリスマス☆プレゼント』
カイジマが殺してしまった強盗の妻・チホ(根岸季衣)にお金を届ける
カイジマをチホの義娘・カナ(江口のりこ)はからかうが、カイジマがカナに贈るあるクリスマスプレゼントが印象的。ストラップのようなものらしい?
江口のりこさんのふてぶてしさが何とも言えない(笑)愛想もないし可愛くないけど。
ミツオが恭子に贈るためにクリスマスプレゼントを買う場面。
サトがトモキに贈るために買ったクリスマスプレゼントを渡す場面。
問題を起こす息子・ハルキに対して、カイジマがあるクリスマスプレゼント?を贈る場面。これはなかなか洒落ていたよね。
復讐、贖罪、、、、、。暗いことがいっぱい描かれていた中。このプレゼントシーンはちょっと気持ちが救われた?ような気分に。
まだまだ印象的なシーンはたくさんありましたが、このままいくと書ききれないので、、、、。
あらすじ(MovieWalkerより拝借) ネタばれ含みます。
少女サト(本多叶奈)が8歳の夏。友達と海水浴に出かけている最中、家族が何者かによって殺害される。1人残されたサトは、祖父ソウイチ(柄本明)に引き取られることに。事件の日からオシッコが出なくなったサトは、テレビで“法律が許しても、僕がこの手で犯人を殺してやります”と言い放つ男を目にする。それは、妻子を殺された鍵屋のトモキ(長谷川朝晴)だった。その日から、トモキはサトにとってヒーローとなる……。1人息子を育てている警官のカイジマ(村上淳)は他人には言えない副業をしている。関東では桜の季節、しかし東北の鉱山跡はまだ雪。カイジマは雪の中で仕事をこなした。戻ったカイジマは花見をしながら息子に土産を渡すが……。バンドでギターを弾いている22歳のタエ(菜葉菜)。父親の暴力のせいで片耳が聞こえず、孤独な彼女は、雨の日、トモキと知り合う。少し暗い影を持つ彼にタエは惹かれる……。ある船着場。16歳になったサト(寉岡萌希)が降り立つ。そこは、彼女のヒーロー、トモキが住む町だった。セミのぬけ殻を“虫の死体”と呼ぶ少年の自転車を強引に借りたサトは、トモキを探す。こうして、復讐が始まろうとしていた……。若年性アルツハイマーと診断された人形作家の恭子(山崎ハコ)。ある日、恭子は病院のテレビで、理由なく殺人を犯した少年の言葉を知る。“これから生まれてくる人間にも、僕のことを覚えていてほしい”。やがて落葉が舞う季節となり、彼女に変化が訪れる……。夏、かつて“雲上の楽園”と呼ばれ、カイジマも訪れた東北の鉱山跡の廃墟を2人の男女が訪れる。あれから8年、そして悲劇が訪れる……。サトはヒーローとともに、彼の住む町にいた。彼はすでにヒーローではなかったが、それでもサトは彼が好きだった。事件から10年が経過。季節外れの雪が舞う紅葉の山中を走るバス。その中には、すでに亡くなった姉の年齢を追い越したサトが乗っていた……。
メディア | 映画 |
上映時間 | 278分 |
製作国 | 日本 |
公開情報 | 劇場公開(ムヴィオラ) |
初公開年月 | 2010/10/02 |
ジャンル | ドラマ |
映倫 | PG12 |
解説(goo映画より)
殺人事件をきっかけにつながりあう20人以上の人々の姿を通して、復讐と再生を描くドラマ。全9章、上映時間4時間半を超える大作。監督は「ドキュメンタリー頭脳警察」など、ピンク映画からメジャー作品まで幅広く手掛ける瀬々敬久。出演は「掌の小説」の寉岡萌希、「ハッピーフライト」の長谷川朝晴、「必死剣鳥刺し」の村上淳。
サト役 寉岡萌希はまだ17歳だそうです。
それにしても見ごたえのある作品でした。。。。。