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鈴木清順監督『ハイティーンやくざ』その2

2021-06-29 05:01:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

“コーヒー ロビン”の看板。“祝開店 輸入コーヒー チモトコーヒー”の立て看板。店内はほぼ満員。「いらっしゃいませ。いらっしゃいませ」。
“中華そば”の暖簾。「まいどありー」和子「(注文を取っているセリフ)」店主「あいよ」。
 芳夫「次郎ちゃん」次郎「よお、どこ行くんだい?」「次郎ちゃんちのコーヒー飲みに行こうと思ってな」母「そう、混んでますよ」芳夫「そりゃいい。父さん、俺、次郎ちゃんと話があるから帰っててくれる?」「じゃあ父さんも今度にしようか。芳夫、~に回るからってお母さんにそう言っといてくれ」「ああ」「次郎ちゃん、奴らが分かったんだ。金、返してもらおうよ」「どこの奴らだい?」「町田から流れこんできたヤクザだ」「ふ~ん」。(中略)
 中華そばの店主「奴らにはどの店も手を焼いているんですよ」「警察に行ってもダメかしら」「ダメでしょうね。ハエと同じですよ。ハエと。ま、私は税金と同じで諦めてるんですよ」。
 テーブルの上で紙幣を数える手。「どうもありがとうございました」「どうもご苦労様」。店を出てきたヤクザをやっつける次郎ら。「やめなさい。次郎ちゃん」「こんな奴らに食い物にされて黙ってられるか」「畜生。覚えてろ」「おい、待て」和子「ケンカよ! ケンカよ! 早く、早く、あっちよ」。大勢の野次馬。
 ヤクザ「勘弁してくれ」。芳夫、足を刺され、倒れる。
 バイクに乗ってきた男「旦那、よっちゃん、ヤクザにやられて重体だよ」。
 芳夫の父を乗せたバイク、疾走。ダンプと正面衝突。“ダンプとオート激突、建築店主即死”の記事。
“中川建設”の看板。恵子に次郎「君もよっちゃんも学校に来ないから、どうしてんのかと思って。災難がいっぺんに来ちゃったからな。よっちゃん、どう?」「母さんとお金を集めに行ってるけど、なかなかうまくいかないらしいわ」「もう出歩いていいの?」「じっとしてられないのよ。留守番してる私の方が滅入っちゃうほどだから」「大変だなあ」「兄さんも私ももう学校へ行けないわ」「そんなに困ってんの?」。うなずく恵子。「元気だせよ。よっちゃんが帰ってくる頃また来るわ」。
「申し訳ありません。一日も早くお払いしようと思っていてつい」「いえ。こちらでもいろいろご都合がおありでしょうが、何分にも事故が重なりまして」「大変でございましたねえ。でも芳夫ちゃんが元気になって」「まあ脚ぐらいで、かわいそうですが、この子にももう働いてもらいませんと」芳夫、おもむろに席を立ち、「母さん、行こう」。母「よっちゃん!」と後を追う。芳夫、ひどいビッコを引いている。
次郎「よっちゃん、なぜ逃げるんだよ。恥ずかしいのか? お金取りに行くの。当然の権利じゃないか。もっといばって取れよ」「どこも払ってくれないんだ。俺が子供でおまけに、おまけにチンバときているからな。みんなバカにするんだよ」「それは君の思い過ごしだよ。自意識過剰って奴だ。よっちゃん」「放っといてくれよ!」。泣き、歩き去る芳夫。見守る次郎と芳夫の妹・恵子。
 ラッキーボール屋。ヤクザ、犯人の仲間に「おい、保釈の間、おとなしくしとけよ。だからラッキーボールやって普通にしてんじゃねえの」「おい、行こう」。尾行する芳夫。
“シャネル”の看板。ダンスクラブ。芳夫、犯人を捜す。やがてナイフを手に。果物を取る男の手。光るナイフ。犯人を刺そうとした芳夫は肩を触られる。「あっ」「坊や、ナイフを貸してくれないか?」。芳夫、男を振り払おうとするが、逆に倒される。
 リンゴの皮を剥きながら男「訳があるんだろ? 話してみなよ。力になれることだってあるんだよ」。
 去ろうとする芳夫にヤクザら「待て!」。芳夫、ヤクザらを叩きのめす。男、芳夫を助ける。「どうだ? 腹の虫がおさまったか?」。うなずく芳夫。「よーし、貸し借りなしだ。あんたも男ならさっぱりするんだな。おめえたちもいいな。本当なら命がなかったのかもしれねえんだぜ。(芳夫に)体を大事にするんだぜ。債権取りだって、この体じゃ無理だ。俺に任せとけ」。芳夫はうなずいて、去る。男、ヤクザたちに「ご苦労だったな」「はい、いただきます」「お前ら、よかったら、シャネルの2階に来ないか? 面白い仕事があるぜ」。(中略)
 町民「中川建設の未払い分? 冗談じゃないわよ」。次郎「お願いします」「昨日全部払ったわよ」「どんな奴が来たんですか?」。
 次郎「無理言ってすいません」「そう泣きつかれると。はい」と紙幣の束を渡す町民。
 次郎「何度も来た甲斐があったな」恵子「でもごめんなさい。忙しいのに」「なに、さてあと何軒だ? 今日中にさっぱりしちゃおう」「ええ」。(中略)

(また明日へ続きます……)