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桐生祐狩『夏の滴』

2007-06-10 15:11:25 | ノンジャンル
 昨日夜NHK・BS2で放映された「コンバット」は、捕虜になったヘンリー中尉を弾切れのサンダース軍曹とケリーたちが助けだす、という面白い設定の話でした。とりあえず、ご報告まで。

 さて、吾妻ひでお氏が「妙に明るく無気味な話」と評した桐生祐狩氏の「夏の滴」を読みました。 
 小4の夏、僕・藤島と車椅子の徳田、町工場の娘の河合、桃山の4人組は皆本好きな仲間です。町では伝統工芸博覧会が失敗に終わり、その影響で倒産する企業が続出しています。そんな時、桃山が急にいなくなります。クラスにはいじめられっ子の八重垣という女子がいて、時々ブームを起こすのですが、今日は植物占いを持ち込み、彼女の周りに人垣ができています。八重垣は植物占いの本を見知らぬ男からもらったと言います。担任の根本先生は明日から地元ケーブルテレビの取材が始まることを告げます。「トッキーとその仲間達」という連続ものの番組の撮影で、車椅子の徳田を普通の生徒として受け入れている同級生の姿が人気を博しています。今回はメインが夏休みの権現谷での母子キャンプだとのこと。レポーターは若くてきれいな江上さん。根本先生は植物占いのせいで甲田が骨折したことを伝え、植物占いを禁止します。先生は八重垣の机周辺を家捜ししますが、占いの本は出て来ません。八重垣はその時間を最後に学校に来なくなります。いじめの対象がなくなった僕らはイラつきます。僕は夏休みの自由研究のネタ探しに閉園した植物園に忍び込みます。ミヤマスギの根に足をとられ、土が陥没し、地中に飲み込まれそうになりますが、八重垣が本をもらったという男・等々力に助けられます。終業式の日、徳田が突然いじめられ始めます。僕と河合と他の同級生たちでケンカが始まりますが、江上さんが来て収まります。僕と徳田と河合は僕らを待ち伏せしていた江上さんと東京にいることが分かった桃山に会いに行きますが、江上さんが注意を引き付けてる間に僕らは家の裏から侵入すると、地下室に気味の悪いゼリー状のものが入った瓶を発見し、逃げ出します。等々力さんはミヤマスギが穴に落ちた動物を植物化させることを教えてくれ、僕らは彼の先祖が首切り役で、普段は植物研究をしていたことを調べ上げます。僕は自分が知ってることをすべてママに話し、その夜僕はママを相手に初体験をします。キャンプ当日八重垣が現れ、サバイバル指導員は等々力さんでした。夜、徳田は父のパソコンで、人肉を使った特効薬を桃山の親が発明し、町ぐるみで金儲けしていることが分かった、と言います。等々力さんは、自分の祖先はどんな病気にも効く特効薬を子どもの体から作る事に成功し、またその効き目は子どもの誕生日、両親の誕生日に左右されることも判ります。吉右衛門は不老不死の薬を作る事にも成功しますが、彼は不治の病人が暮らす権現谷へこもり、やがてミヤマスギの大穴の中に閉じ込められたのだと言うのです。そしてその不老不死の薬を作ろうと狙っているのがママの義兄なのでした。僕ら男子数人で八重垣をミヤマスギの大穴に放り込もうとしますが、足場が崩れて僕と徳田は洞窟に落ちます。奥でボロ切れを巻き付けた病人のような男に出会い、迷子になった末、大人達が座っている広間に出ます。ママは僕を殺し、そして僕との間にできた子もかわいがり、やはり殺すと言います。そこで徳田は切断されている足の先に甲田から作った薬を塗られ、痛みに絶叫します。八重垣も現れ、もう身も心もボロボロで、自分が味わった恐怖を僕らにも知ってほしかったと言います。そこで天井に穴が開き、江上さんが僕らを助けてくれました。江上さんは僕らのクラスの番組を見て、徳田君が差別を受けないために、ためたストレスを受け止めている同級生が必ずいると思ったと言います。広間に戻ると、町の連中がダムの放水をし、撮影スタッフは溺死します。徳田は僕1人で何十億円という薬が作られると言い、彼の足は歩けるまでに回復してきました。気付くと僕の足のひざ下もミヤマスギになっていて、ママは河合の首をナタで切り落とし、等々力は携帯でネットに薬の秘密を世界中に流し、半殺しにされます。そこへさっき出会った病人のような男が現れ、ママの首をはね、僕は江上さんの薬のおかげで木になった部分を溶かすことに成功します。等々力さんはさっきの病人のような男が吉右衛門だと言います。その後、世界では子殺しや金のための出産が頻発し、一方で難病の人たちの命が多く救われるようになりました。徳田は彼女が出来、彼女と僕との薬の相性は抜群です。僕は彼女を監禁してでも子どもを作りたいと思っています。結局、僕らは何も判りあっていないのでした。
 以上、読んでお分かりのように、長い。とにかく長い。これでもかなりはしょったんですが‥‥。前半は台詞が活き活きしていて、無駄な文章もなく、吐き気を催すような八重垣に対するイジメがなければ秀れた青春小説で、「人情紙風船」や「女人哀愁」などの名前が出て来ることから映画にもかなり詳しい人だな、と思ったんですが、後半のホラーぶりには付いて行けませんでした。主人公も結局悪党で、救いようがないエンディングです。読みごたえはあるので、お閑な方にはオススメです。

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1 コメント

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Unknown (読者)
2008-04-14 20:10:17
今日、「夏の滴」を読了したのですが、爽やかな表題と乖離したその内容に驚愕しました。
若干9歳で異様に爛熟した主人公。
その9歳の息子と事もあろうに寝てしまう母親。
腕を車椅子で轢く等、障害罪レベルのイジメを受けながら笑ってる八重垣。
そのイジメに積極的に加担する担任教師…と、この小説の登場人物達は人格が欠損した異常者ばかり。
冒頭の他愛もない植物占いに、消える子供、斬首役人の子孫…と次第に伏線がまとまっていく…。
ラストの吉右衛門の登場には戦慄を覚えずにはいられない!
なんでこんな傑作が大賞じゃないの…?
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