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山田詠美『熱血ポンちゃんが来たりて笛を吹く』

2006-09-15 16:34:31 | ノンジャンル
 今日の山田詠美作品は「熱血ポンちゃんが来たりて笛を吹く」です。すっかり山田詠美さんのエッセイとして、というか半日記文学として定着した感のあるこのシリーズ。今回もポンちゃんこと山田詠美さんとその仲間たちの楽しい時間が語られています。
 特に詠美さんと編集者の小林女史のイタリア旅行記「アントニオな年の瀬」に笑いました。詠美さんはどうもイタリアと相性がよくないようです。相変わらず面白いこのシリーズ、本作ももちろんオススメです。

 と本の紹介が終わってしまったので、ちょっと私事を。父が人工透析を受けることになり、そのための手術が昨日行われました。手術後24時間は患部であるひじを曲げてはいけないのですが、認知症の父はすぐに忘れてしまい、腕を曲げようとします。始めは母が手をつないで、次に手を曲げられないようにベッドに手首を結び付けると、大声を上げて暴れだし、手首のひもをほどこうとします。そこで手首のひもははずして、ギブスのようなものでひじを固定して曲げようと思っても曲げられないようにし、夕食後、安定剤を与えて、眠りについたのを確認して、母が帰ってきたのですが、今日、午前中に行ってみると、病室に父の姿なく、血が点々とついたパジャマが置いてあります。ナースステーションに行くと、そこに彼はいて、夜にもギブスをはずそうと暴れたらしく、看護師さんと格闘の末、ナースステーションで夜を過ごしたのだそうです。退院のきわに看護師さんに「何ごともなく退院できてよかったですね」と声を掛けられましたが、何ごとどころの騒ぎではなかったようです。認知症がどんどん進んで行く父。これからどうなっていくのでしょうか? 

山田詠美編『せつない話・第2集』

2006-09-14 17:15:43 | ノンジャンル
 山田詠美編「せつない話・第2集」を読みました。第1集よりもたくさん読めました。
 これまでのエッセイでどういう作家の方たちと詠美さんが親しく、どんな方たちを尊敬しているのか、という知識があったので、それを頭に読んだのですが、田辺聖子さんの「雪の降るまで」を読んで、詠美さんが書いたのかと思う程、作風が似ていました。詠美さんは田辺聖子さんを好きなあまり、文体を無意識のうちにパクっているのでは、と思えるほどでした。
 詠美さんと叔父さんと娘のような関係の宮本輝さんの「夜桜」はしみじみとしたいい話で、詠美さんの憧れの人、森瑶子さんの「マンション・ダ・モール」は主婦が書いたものとは思えないおしゃれな作品でした。
 他にも作家仲間の内田春菊さんの「夜の足音」は夢の中で自分の足を食べる、という恐い話が出てくる印象的な作品でした。
 また、詠美さんと親交はないと思いますが、あのトルーマン・カポーティの「誕生日の子どもたち」も楽しく読めました。
 田辺聖子さん、森瑶子さん、宮本輝さんの作品群は、いずれきちんとした形で読もうと思っています。
 ということで、第1集よりも充実した時間をすごさせてくれた第2集でした。

山田詠美『エイミー・セッズ』

2006-09-13 16:25:43 | ノンジャンル
 今日の山田詠美作品は、'99年8月の「AMY SAYS(エイミー・セッズ)」です。この後に、「AMY SHOWS(エイミー・ショウズ)」が出版されました。
 内容はエッセイで、三つの章に分かれていますが、特に内容によって三つに分けたという感じはありません。ただ、第一章は差別、それも人種差別だけでなく、外人差別、男女差別、てんかん差別、SM差別といったものが実際にどういう形で現実に顔を表すのかを扱ったものが多い気がしました。あと黒人差別に関するものとして、「黒人は巨根を持っている」ことに関する偏見も多く語られていました。
 第二章は、著者の私生活に関するものが多かったように思います。
 第三章は、英語でいう「wild」の意味、恋の不純物、女の子が男の子の心をゲットする秘けつ、「ぼくは勉強ができない」の主人公時田秀美について、予感・満足・雨と題された散文詩、指輪について、蜜の味について、香水の話などです。
 彼女のエッセイは、具体的な事件、出来事から話が始まり、それに対する意見、考察という順に話が進んで行くので、大変分かりやすいです。このエッセイ集も一日で読んでしまいました。書かれている彼女の意見はリベラルで、共感できるものです。最近身の回りに起こる理不尽な出来事に怒っている方、この本を読むと、少しは気が晴れるかもしれませんよ。

山田詠美『放課後の音符』

2006-09-12 16:54:22 | ノンジャンル
 今日の山田詠美作品は、'89年作品「放課後の音符(キイノート)」です。8編のティーンエイジャーの女の子を主人公にした短編と、「放課後が大好きな女の子たちへ」と題された詠美さんのあとがきからなっています。
 第一話「Body Cocktail」は、17才にして男とベッドを共にするのを日常にする女の子が妊娠して子供を産むという話を、離婚した父と暮らす私に語るというもの、第二話「Sweet Basil」は、私の幼な友だちで気楽に話しをする仲の純一に恋をするリエを、私は彼女の視線から感じ取り、リエに詰問してしまい、それが原因で純一との仲もぎくしゃくしたものになりますが、最後には純一との気楽な仲を取り戻すという話、第三話「Brush Up」は、アメリカ生まれで日本の中学に転校してきた雅実は、日本人の閉鎖的な物事の考え方に辟易し、高校はアメリカン・スクールに行き、たまに私の所へ来て、好きな男の子がいること、しかし彼はクラスメートのジェーンと既に寝ていること、それでもジェーンのアドバイスで彼と寝たことを話すという話、第四話「Crystal Silence」は、南の島での耳が聞こえず言葉も話せない男の子との恋の話をクラスメートの子から聞くという話、第五話「Red Zone」は、サエキ君にふられたカズミは涙にくれていたが、やがて立ち直り、サエキ君がつきあっている28才の女性を見て、自分のあのような素敵な女性になったら、またサエキ君にアタックする、と言うという話、第六話「Jay-Walk」は、クラスの女子のボーイフレンドを片っ端から横取りしていくヒミコに、じゃんけんで負けた私は文句を言いにいきますが、逆に気に入られて、夜のクラブに連れて行かれるという話、第七話「Salt and Pepa」は、卒業式の真近な日、私は音楽室で抱き合うカヨコ先輩と音楽の先生を目撃し、その姿に憧れ、カヨコ先輩に恋を語ってもらうという話、第八話「Keynote」は、第二話の後日談で、結局私と純一が結ばれる、という話。
 外人がほとんど出てこない最初の小説であり、どうしてもジメっとする傾向にある女子高校生の世界をカラっと明るく描いた小説でした。第四話は、他の南国ものに通じる短編でした。気軽に読めるものばかりなので、まだ読んでいない方、オススメです。

山田詠美『ひざまずいて足をお舐め』

2006-09-11 16:03:48 | ノンジャンル
 今日の山田詠美作品は、'88年に出された「ひざまずいて足をお舐め」です。題名から分かるとおり、舞台はSMクラブです。
 お姉さんとよばれる女性と「ちか」と呼ばれる女性の会話が大半を占めるのですが、「ちか」は、最初に書いた小説が新人賞を取り、SMクラブの女王を職業としているということで、マスコミに騒がれ、黒人とその息子と同居しているのですが、直木賞と思われる賞の候補になった直後に、その黒人の恋人が逮捕されるということで、またマスコミに非難され、直木賞を取った途端にマスコミが打って変って好意的になる、という出来事も折り込まれています。皆さんもお分かりだと思いますが、この「ちか」という娘、作者の分身ですね。
 冒頭では、SMクラブの女王様と奴隷の客の描写があったりするのですが、その後はほとんど二人の女性の会話だけで進んで行きます。結構長い小説なので、一気に読める量ではなく、ところどころ解釈に苦しむところもありますが、それ以外は難しい表現もなく、素直に読めました。
 あとがきで、詠美さんは編集の担当者に「私の原稿を待ち続けた明け方、ファクシミリで原稿の代わりに届けられた私のメッセージ『ごめんなさい。才能がなくなりました』に涙した伊藤さん」と書いていて、結構修羅場を乗り越えて書かれた小説だったことが分かります。初の長篇小説に挑んだ詠美さん、そして編集者の方の苦労が忍ばれます。ただ、単純に読んでいる限り、そんなことはまったく感じさせません。私が鈍感なのかもしれませんが‥‥。
 面白い長編小説に挑戦したい方、オススメです。