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F・W・ムルナウ監督『吸血鬼ノスフェラトゥ』

2009-07-21 12:36:00 | ノンジャンル
 スカパーの260チャンネル「洋画★シネフィル・イマジカ」で、F・W・ムルナウ監督の'22年作品「吸血鬼ノスフェラトゥ」を再見しました。
 「第一幕」「これは1938年ヴィスボルグを襲ったペストの記録である」の字幕。ノスフェラトゥが不吉な名であることを示す字幕。町に住むフッターとエレンの夫婦は幸福な日々を送っていましたが、フッターが無気味な上司のクノックからトランシルヴァニアのオルクロック伯爵にフッターの自宅の向かいの部屋を売るために伯爵の元へ行くようにうまく言いくるめられます。不安がるエレンを船主のハーディングに預けて出発するフッター。険しい山を越えて辿り着いた村には不吉な影が射し、宿屋で吸血鬼ノスフェラトゥについての本をフッターは手に入れます。雇った馬車はこれから先は幽霊が出ると言って引き返してしまい、そこから徒歩で進むと無気味な馭者が乗り、コマ落としで動く馬車が迎えに来て、真夜中に城に着くと無気味な伯爵が出迎えます。「第二幕」の字幕。フッターが食事中に指を切ると、それを吸おうとする伯爵。朝目覚めると伯爵はいなくなっていて、首に傷がついています。用意されている豪華な朝食。夜になると伯爵が現れ、エレンの写真を見てその首に魅せられ、フッターの家の向かいの部屋を買います。本で伯爵の正体を知ったフッターはおそれおののき、伯爵は襲いかかりますが、夢の中でそれを察知したエレンの力によって伯爵は退散します。フッターは朝になると棺に眠る伯爵を発見し、夜伯爵が自らを箱の中に横たえて城を出発するのを見て後を追います。筏で運ばれる箱。「第三幕」の字幕。発狂したクノックは病院に隔離されます。砂浜で一人たそがれるエレンはフッターからの手紙の不吉な内容に動揺します。そして伯爵の箱を乗せた帆船の乗組員は次々に伯爵の餌食となり、ついに船は伯爵に乗っ取られます。「第4幕」の字幕。帆船がついにヴィスボルダに着き、コマ落としで開く扉から伯爵が現れ、クノックも看守を殺して病院から脱走します。フッターはようやくエレンの元に戻りますが、帆船から航海日記が発見され、町はペスト対策を講じます。「第五幕」の字幕。それにも関わらず、首に傷がつくというペストが蔓延し死者が続出します。吸血鬼の本で退治方法を知ったエレンは、向かいの部屋からこちらを見つめる伯爵をおびき出し、フッターに吸血植物の研究をする教授を呼びに行かせます。エレンを襲った伯爵は一番鶏の声を聞き、滅びます。逮捕されていたクノックも主人の死を知りますが、エレンもまたフッターの腕の中で息を引き取ります。ペストはその瞬間に終息し、城も崩れ去るのでした。
 ハイエナ、影、無数のネズミ、食虫植物、クモ、巨木、廃墟、葬列など、不吉なもののオンパレード。しかも帆船、一軒家、ラストの崩壊した城など、見事な画面の連続で魅了させてくれます。大学生の頃に見た時には伯爵のメーキャップにばかり目がいっていましたが、今回はこの映画の偉大さを再認識できました。ハンス・エルドマンの不安をあおる音楽が秀逸だったことも付け加えておきたいと思います。文句無しにオススメです。

佐藤多佳子『ごきげんな裏階段』

2009-07-20 14:48:00 | ノンジャンル
 佐藤多佳子さんの'09年作品「ごきげんな裏階段」を読みました。三つの短編が収められている本です。
 「タマネギねこ」では、三階建てのマンション「みつばコーポラス」の裏階段にいた子猫のノラがタマネギを食べるのが大好きで、ある日裏階段に生えていたタマネギを食べて頭がタマネギ形になり人間の言葉を話すようになってしまいます。ノラを隠した小村家はノラを洗ってやると、ノラは洗う度ごとに小さくなり、最後にはオニオンスープに溶けてなくなってしまいました。翌朝ノラは裏階段に元の姿となって現れ、小村家では改めてノラを飼ってやることにするという話。
 「ラッキー・メロディ」では、両親の旅行中に「みつばコーポラス」に住む叔父の家に預けられた一樹が裏階段で数日後のテストに向けてリコーダーの練習をしていると、人間の言葉を話すクモに出会います。クモは聞いた人に不幸を呼ぶ不幸の笛と幸運を呼ぶ幸運の笛を吹きますが、一樹は数日間クモを守ってやる代わりにテストの時に自分に代わって幸運の笛を吹いてもらいます。しかし多くの生徒が聞いたため一人当たりの御利益は少なく、一樹は今後は自分の力でリコーダーをうまく吹けるように練習しようとするという話。
 「モクーのひっこし」では、「みつばコーポラス」に引越して来たナナが裏階段のダストシュートに住む、煙を食べるお化け・モクーを見つけ、パパの知合いが経営するスナックにエアクリーナーとして引越させてあげ、様々な形の煙になる芸を見せて人気者になりますが、人の指図で動く生活が嫌になり、ナナの家で引き取るという話です。
 小学校高学年以上を対象にした児童書ですが、楽しく読めました。皆架空の生き物がでてきますが、ユーモラスでほのぼのとしていて、たまにはこういう世界に浸るのもいいなと思いました。オススメです。

佐々木昭一郎『紅い花』

2009-07-19 15:00:00 | ノンジャンル
 山田宏一さんが「山田宏一の日本映画誌」の中で絶賛していた、佐々木昭一郎監督の'76年作品「紅い花」をNHK放送博物館で見ました。つげ義春さんの複数のマンガを原作とした単発のテレビドラマです。
 つげ(草野大悟)のマンガを見る編集者(藤原鎌足)は、つげの描く最近の女性がどんどん若くなっていると言います。運河の水面をゆるゆると前進移動するカメラにかぶさる、東京大空襲を語るナレーション。タイトルが終わると、前進移動は逆光の線路上となっていて、それがまたオーバーラップして戦時中の都電の終着駅に。戦時中の僕と妹、路地、そこの隣人たち、金太郎飴を売る母、行商に出かける母。紅い花の流れる川に妹と行きたいと母に言うと、母は危ないと言い、妹の悲鳴が聞こえ、川は火に覆われます。僕が描く少女の絵にキクチサヨコ(中尾幸世)がオーバーラップします。彼女の噂を狐の面をする少年たちがすると、マサジは彼女は山の下から来た狼少女なのだと言います。水汲みをするキクチサヨコにいたずらするマサジ。彼女と一緒に住む寝たきりの老人(嵐寛寿郎)に役人が訪ねて来て、脱走兵がこの辺にいると言います。その役人を釣りの穴場にマサジが連れて行くと、役人はマサジが本物の軍帽を被っていることに気付きます。ドラム缶風呂に入るキクチサヨコを覗くマサジ。老人はサヨコに一緒に住んでいたミヨコ(中尾の二役)が脱走兵に犯され死んだので、老人が男を殺したことを告白し、死んでしまいます。遺体を手押し車に乗せて山道を運ぶ、狐の面をつけた男たちとサヨコ。川を流れるたくさんの紅い花と初潮で腹が痛くて川にしゃがみ込むサヨコ、それを見るマサジ。二人は人間らしい生活ができるという森の奥へと進んでいきます。銃声。落ちた鴨を拾うサヨコと出会う道に迷った青年。村人たちが銃を持って脱走兵を追ってきます。サヨコは暗い目をして自分の家に青年を上げかくまってやると言いますが、枕元には眠ると首を締めにくるという蛇がいます。青年は寝つけず、サヨコの首に手を伸ばし、やがて彼女を抱きます。翌朝、サヨコによく夜ばいをかけに来ていた男が青年を泊めたことでサヨコを責めますが、青年は既に家を出ていました。そして紅い花に見とれていた青年を射殺した村びとたちはすぐに人違いだとわかります。時間は飛んで戦時中の日本へ。古本屋の店番をしているサヨコは毎日来て発禁本の「ハックルベリーフィン」を5ページずつ読む学生を見つめます。翌日、学生はその本にはさんであった札を拾い、あわてて店を出て行きます。次の日その金で学生が本を買おうとすると、別の客(清水絋治)が2倍の金を払って買っていきます。学生がその客を追って行くと、客は自分のためた金なのでこれで本を買ってくださいと書いてあるサヨコの手紙が本にはさまっていたと言って、学生に本を譲ります。学生は本を持って帰りますが、客の密告により刑事が先回りしていて学生を逮捕します。道に散らばる本を見つめるサヨコ。店に帰ると誰もいず、本棚も空になっています。燃える本。真っ赤な口紅をつけるサヨコ。また二人を森に帰してあげようというナレーションとともに、キクチサヨコとマサジがじゃんけんをしながら森の奥に移動していきます。それを見つめるつげ。妹を書き続けると言うつげは、東京大空襲で妹とはぐれた時の様子を語り、番組は終わります。
 佐々木監督が白羽の矢を立てたという中尾幸世さんはさすがに存在感があり、当時19才ぐらいだったと思いますが、思春期のあやうさを見事に体現していたと思います。つげさんの作品の映像化としても成功しているのではないでしょうか。30年以上前の作品ですが、全く古びていません。オススメです。

広川泰士『STILL CRAZY』

2009-07-18 18:16:00 | ノンジャンル
 広川泰士さんの'94年作品「STILL CRAZY nuclear power plants as seen in Japanese landscapes」を見ました。広川さんが'91年から'93年にかけて日本全国で写した原子力発電所の写真を集めたものです。
 のっけから海水浴場で遊ぶ人々の背後に原発の姿が見えます。次の写真では、人がいなくなった海水浴場とその背後の原発。その後、海辺の原発建設予定地、建設中の原発、完成した原発、民家のすぐ後ろにある原発、民家が密集する村のすぐ後ろにある原発などが写されています。全部で39枚、1枚の大きさはB3という大きさです。そして巻末には、「原子炉は建設後、約40年で解体撤去することを原則としている。」という原子力白書の言葉と、「高レベル放射性廃棄物に最も多く含まれるネプツニウム237の半減期は214万年である。」という原子力中央研究所の発表が掲載されています。
 写真を見て感じたのは、原発の小ささ。もっと巨大なものを想像していましたが、ちょっと大きめの工場といった感じでした。このぐらいの大きさならどこにでも作りたくなる気持ちも分かるような気がしました。今後ソーラーパネルが普及して、この写真集にある風景が過去の遺物になる時代がくればいいのですが‥‥。原発の現物を見たことがない方にはオススメです。

清水宏監督『みかへりの塔』

2009-07-17 18:21:00 | ノンジャンル
 WOWOWで、清水宏監督の'41年作品「みかへりの塔」を見ました。
 子供の更正施設を母たちに草間先生(笠智衆)が説明すると、それにしたがって起床の鐘、寝小便の布団を干す、朝食の用意、体操、掃除、礼拝、授業、屋外整備、農作業、木工、ミシンかけをする子供たちの様子が描かれます。新入生の多美子と父(坂本武)は保母(三宅邦子)に紹介されますが、院長は草間にまた大変な子が入ってきたと言います。保母は同じ部屋にいる 12人が皆兄弟で、自分は母だと説明しますが、多美子は少女同士のケンカに怯えます。多美子はレベルの低い授業に嫌気がさして教室を飛び出しますが、保母に連れ戻され、保母はやはり教室を抜け出した善雄に指をかまれます。しかし善雄を担当する保母は彼をうまく誉め、自分から母に手紙を書くように導き、草間は善雄に謝りに行かせます。多美子は靴を無くして裸足で外へ飛び出し、林で正夫と昼寝をしていると、正夫の母が訪れてきます。正夫の母は自分の髪を正夫に託し、父も酒を控えて働くようになったと言って泣きます。正夫に母からもらったものを見せろと言う善雄と、自分も母から数珠をもらって身に付けていて正夫をかばうコウジの間でケンカが起こり、興奮したコウジは列車に飛び込もうとしますが、先生らは二人を仲直りさせます。今度は多美子ら6人が脱走事件を起こします。捕まるとすぐ多美子は家に帰りたいという父への手紙を正夫に託し、皆の前で施設への不満を爆発させます。父はすぐに迎えに来ますが、院長に諌められ帰っていくと、それを見た多美子は一人でも出て行くと言い張り、ついに保母は手を上げます。保母は辞めると言いますが、草間が思いとどまらせ、多美子はまた脱走を誘われると断り、保母は泣いて多美子に感謝します。信一に義母が訪ねてきますが、信一は逃げ出し、草間らは戻ってきた信一に義母の気持ちを考えるように説教します。多美子と同部屋の直子は多美子を保母が依怙贔屓するので部屋を変わりたいと院長に直訴しますが、多美子の靴を隠しているのがばれ、そのことが後ろめたくて直訴したことが分かります。そこへ卒業生の岡本が遊びに来ますが、前歴を知った人の目に耐えられなくて仕事を辞めてきたことが分かり、草間から励まされます。そんな折、井戸の水だけでは水が足りなくなり、試行錯誤の結果、草間が他の先生を説得して、子供たちと大人が協力して2キロ先の池から水を引く工事を行うことになります。工事は難航し、病傷者や脱走者を出しますが、希望を持って働いた子供たちのおかげでついに水路が完成し、流れる水の中を子供たちが走り下っていきました。これにより多美子、正夫、善雄、岡本ら施設始まって以来の多くの卒業生を出す事になり、一人ずつ謝辞と抱負を述べ短歌を詠み、鐘を皆で鳴らし、螢の光を歌いながら保護者とともに施設を去っていくのでした。
 おそらく室内も含めてオールロケだと思います。話は古めかしいものですが、カメラが動き出すと画面は活気づき、子供たちが屋外を走り回る様子は壮快でした。この作品までで清水宏監督の戦前の5作品を連続して見ましたが、決定的といえる作品にはめぐり合えませんでした。今後に期待です。