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レオ・レオーニ『平行植物』

2012-05-21 04:50:00 | ノンジャンル
 ティム・バートン監督の'88年作品『ビートルジュース』をスカパーの洋画★シネフィル・イマジカで見ました。シルヴィア・シドニーが幽霊への指南役で出演している映画で、特殊撮影を豊富に使った、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさに満ちていました。

 さて、岡野宏文さんと豊崎由美さんの対談本『読まずに小説書けますか』の中で紹介されていた、レオ・レオーニの'76年作品『平行植物』を読みました。架空の植物「平行植物」について書かれた本です。
 前半では「平行植物」とは何かについての学術的記述がなされ、かなり難解なのですが、その中で「平行植物」が形態は持っていても実質は持たず、人間の手に触れただけで霧散霧消してしまうことが語られ、その中で、自然物と人工物を人間はどのように見た目で区別しているのか(有機性の定義)が論じられ、「平行植物」は遠くから見ても近くから見ても大きさが変わらず、写真に写すのも困難であることが語られます。そして後半では具体的な「平行植物」についての記述が行われていくのですが、その見出しをそのまま引用すると、「タダノトッキ 想念を送りこみ、音を発し、催淫作用を及ぼす代表的平行植物」「森の角砂糖バサミ 碁の名対局のごとく自らの戦略的位置を決定する知的植物」「カラツボ 男根と陰門のシンボルとして地上に君臨するエロチックな平行植物」「グンバイジュ 錬金術師たちの書き記した幸運の葉は、果たして裏か表か?」「キマグレダケ 叩けば金属音を発し、触れればたちまち粉と化す不可思議植物」「アリジゴク 大食のアリから身を守るために恐るべき変異を遂げた植物の意思」「マネモネ 芸術が自然を模倣するのか、自然が芸術を模倣するのか?」「メデタシ ミサイルを思わせる無気味な芽は何に狙いを定めているのか?」「キチガイウワバミ 進化過程の攻撃本能はいかにして自殺本能に変わったか?」「ツキノヒカリバナ かつて月が主役だった時代に地上に咲いた花なのか?」「夢見の杖 螺旋状にとり巻くこぶはジプシー音楽の空間的楽譜だった!?」「ユビナリソウ 実なのか花なのか? たわわに実り咲く奇妙な平行植物」といったものです。
 最初の難解な学術的記述を乗り越えて、最後まで読むことができたのは、具体的なエピソードや架空の学術的論争、各植物にまつわる伝説などが楽しく読めたおかげでした。著者による図版も幻想的で、その自然物とも人工物とも見ることができる造形も面白く見させてもらいました。しかし掲載されている人物写真(おそらく架空の人物)は一体誰の写真なのでしょう? 謎の残る本です。ファンタジーものが好きな方には特にお勧めなのかもしれません。

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マイケル・マン監督『ALI アリ』その2

2012-05-20 03:17:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。
 アリはアリの後に王者となったフレイジャーがコーセルの番組に出ている時に電話して挑発し、コーセルに頼んで自ら彼の番組に出演し、フレイジャーをテレビの前で挑発すると、テレビ局の電話は鳴り止まず、フレイジャーは直接アリに会いに来て、前哨戦を勝ったら相手をしてやってもいいと言います。アリが前哨戦をTKOで飾ると、場内は「アリ!アリ!」の大合唱に包まれます。
 ブラウンは自分がユダヤ教徒でありながら、アリが受け入れてくれたとインタビューに答え、高裁では国内外で試合をすることが許される判決が出されます。
 無敗のフレージャーとの世界戦。アリは一方的に打たれ、クリンチで逃れますがダウンしてしまい、次もフックが来ると分かっていながら逃げられずに浴びてしまい、2度目のダウンを喫し、判定負けしてしまいます。半年後のフレージャーとの再戦に気持ちを切り替えるアリでしたが、フレージャーはアリとの再戦を前にジョージ・フォアマンに敗れてしまいました。
 アフリカのキンシャサでフォアマンとの世界戦が決まったアリは、現地に着くと、空港に集まった大群衆から「ブンマヘ、アリ!」の大合唱を贈られます。32才になったとインタビューで語るアリは、彼の熱狂的なファンの少年たちをしたがえて、村の中でロードワークをします。記者会見で年齢のことを質問するコーセルに、余裕をもってユーモアで答えるアリ。フォアマンが練習中にケガをして帰国するかもしれないと聞いたアリは、記者会見でそのことを取り上げ、自分から逃げたがっているフォアマンを励ましてやってくれと記者たちに言います。女性記者のポーシュと知り合い、デートするアリ。妻のブリンダとは喧嘩が絶えなくなってきます。コンゴの大統領とプロモーターとの会談。
 大観衆が見守る中、いよいよフォアマンとの試合が始まります。ロープに追い込まれ、連打を浴びるアリは、防戦一方となります。顔が腫れて傷ができ、試合が決まりかけたと思った時、打ち疲れたフォアマンにアリのパンチが当たるようになり、連打が決まると、フォアマンはたまらず倒れ込み、アリのKO勝ちとなります。両手を上げて勝ち誇るアリに対し、会場の大観衆の声がこだまし、豪雨が降り始める中、やはり熱狂的な観衆が会場の外で喜びを爆発させます。「アリは、1976年にブリンダと離婚し、77年にポーシュと結婚。86年には人生のほとんどを一緒に過ごしてきたロニー・ウィリアムズと同居するようになり、現在もミシガンで暮らしている。78年にはタイトルを失うが、3度目のタイトル奪取を成し遂げた」との字幕とともに映画は終わります。

 R&Bの音楽が絶えず流れる中、マン監督ならではのシャープな映像の連鎖が楽しめましたが、裁判が始まる当たりから間延びし始め、最後の方の会話のシーンなどは飛ばし見してしまいました。2時間37分もの長さでしたが、せめて1時間40分前後ぐらいだったら気持ちよく最後まで見られたんじゃないかと思います。ちょっと詰め込みすぎた感のある映画でした。

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マイケル・マン監督『ALI アリ』その1

2012-05-19 04:40:00 | ノンジャンル
 今朝の新聞で女優の中原早苗さんの死去を知りました。享年76才。ウィキペディアで調べると、一時川地民夫さんと事実婚状態になるも、短期で別れ、その後、深作欣二監督と結婚。深作監督のたびたびの女性問題にも深作監督の逝去まで別離を選ばず、深作監督の死後は表舞台に一切出ず、引退状態だったとのことです。私にとっての中原さんは、鈴木清順監督の映画での「おきゃん」で元気な女性という印象が強く、特に'63年の『関東無宿』で刺青に興味を示し、女学生にもかかわらず侠客の刺青見学に出向く役が鮮烈に心に残っています。改めてご冥福をお祈りいたします。

 さて、マイケル・マン監督・共同脚本の'01年作品『ALI アリ』をDVDで見ました。
 「1964年2月24日」の字幕。ノリのいいR&Bの歌手とそれに熱狂する女性の観衆のショットに、パーカーを着て夜の街でロードワークするカシアス・クレイ(ウィル・スミス)、パンチングボールを無心で叩く彼の姿、ブラックムスリムの教会でマルコムXが「いつか正義と平和がもたらされる」と演説するのを、後ろで立ったまま聞く彼の姿、縄跳びで汗を流す彼の姿、シャドーボクシングやスパーリングする彼の姿、それぞれのショットがインサートされます。計量時、チャンピオンのリストを挑発するクレイ。スタッフもクレイも無言で試合に備える控え室。下馬評ではチャンピオンが圧倒的に有利と見られる中、軽やかに相手のパンチをよけながらジャブを当てペースを握ったクレイ。一旦は油断してボディを喰らい苦し気な表情となりますが、休憩後はまた軽やかなフットワークが復活し、6ラウンド終了後、リストがマウスピースを吐き出して戦意を喪失し、TKO勝ちします。俺はまだ22才だと吠えるクレイ。
 行く先々に人だかりができる中、彼はマルコムXの訪問を受けます。白人からの差別に対し忍耐の限界に達したと述べるマルコムは、クレイをイライジャ師に紹介してあげると言います。スーツ姿で師の元を訪れたクレイは、奴隷の名前であるカシアス・クレイに替わってモハメド・アリという名前を師につけてもらいます。
 聖職者として停職処分を受けるマルコム。一方、故郷の地で凱旋パレードをするクレイは、イスラム教信者の旧友との再会を喜びますが、巡礼の話でケンカとなり決裂します。フェイドアウト。フェイドイン。
 クレイはクラブで出会ったソンジーと関係を持ち、彼女と結婚するつもりだと仲間に告げ、ブラックムスリムに改宗するとも告げます。そんな中、マルコムは大勢が集まった集会場で演説を始めようとしたところを、白人に雇われた黒人の放った銃弾を何発も受け、暗殺されます。知らせを聞いたクレイは表情を消しますが、目からはすーっと涙が流れ落ちます。
 クレイの試合会場はFBIによって警備され、試合はクレイが一発で相手を倒し、TKO勝ちします。祝福に訪れたソンジーと彼は口論となり、彼女は故郷のシカゴに去ります。
 有名なスポーツキャスターのコーセルの番組に出たクレイは、奴隷の名前を捨て、これからはモハメド・アリと名乗ると宣言し、批判するコーセルのカツラに手を出します。
 そんな彼の元に召集令状が来ますが、彼はクレイの名前での6週間の入隊を拒否し、逮捕されます。王者は自国の戦争に参加すべきだという仲間に反論するアリ。裁判では、自分は被告などではないと言って勝手に退席し、裁判は騒然となります。計量で相手を挑発し、相手に殴りかかられるアリは、それでも挑発し続け、試合では勝つものの、観衆から大ブーイングを受けます。
 裁判は徴兵拒否の罪でで執行猶予付きの懲役5年と5万ドルの罰金の判決となり、国内での試合を禁じられます。弁護士は来月連邦高裁に上訴すると言いますが、国はビザも出さない方針で、アリは試合ができなくなります。やがて子持ちのムスリム信者・ブリンダと付き合うようになるアリ。社会では反戦運動が激化していく一方、アリはブラックムスリムからも追放処分となり、仲間のブラウン(ジェイミー・フォックス)に八つ当たりします。地下鉄に乗り、無表情に景色を見るアリ。(明日へ続きます‥‥)

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高三啓輔『字幕の名工 秘田余四郎とフランス映画』

2012-05-18 02:40:00 | ノンジャンル
 ジョン・スタージェス監督・製作の'63年作品『大脱走』を久しぶりにWOWOWシネマで再見しました。タイトルロールでは、スティーヴ・マックイーン、ジェイムズ・ガーナー、リチャード・アッテンボロウが主役扱いで、チャールズ・ブロンソン、ドナルド・プレザンス、ジェイムズ・コバーン、デヴィッド・マッカラムは傍役扱いとなっていました。
 小学生の時、テレビでかなりわくわくして見た記憶がありましたが、今見ると、マックイーンがバイクで国境沿いの草原を疾走する有名なシーン以外は画面がくすんでいて、かなり暗い印象を受けました。それでも約3時間の長さのちょうど真ん中辺りで、一つ目のトンネルがドイツ側に発見されてしまい、最初の犠牲者が出るという小さなクライマックスがあり、それからは様々なエピソードが急速に展開し始め、ラスト50分の日中のそれぞれの逃走劇は今見ても結構見ごたえがあり、『ハリウッド・リライティング・バイブル』にかなった作りになっていることに感心したりもしました。俳優の存在感では、マックイーン以外だと、ゲシュタポに拷問されて目に傷を負っても強い意志を持って作戦を指揮するリチャード・アッテンボロウと、彼の逃亡を助けるため駅のホームで射殺されるデヴィッド・マッカラム(この頃の彼はまだテレビシリーズ『ナポレオン・ソロ』でスターになる前だと思います)が抜けていたと思いました。

 さて、朝日新聞で紹介されていた、高三啓輔さんの'11年作品『字幕の名工 秘田余四郎とフランス映画』を読みました。
 海外映画の輸入・配給の最大手である東和(現東宝東和)は創業の昭和3年から秘田さんが死去する昭和42年までに177本のフランス映画を輸入・配給していますが、秘田さんはこのうちの132本の字幕を担当しています。さらに秘田さんの仕事は東和だけに限らず、フリーの字幕屋として他の輸入会社の仕事も請け負ったので、その字幕翻訳の仕事は、生涯に600本はくだるまいと言われています。秘田さん自身、「私は今までに15カ国語、21ケ国の映画の日本語版を手がけた」と書いています。ただしフランス屋の秘田さんが、それ以外の外国語の字幕をつけるときは、下訳がついていてそれを基に字幕化していたようです。
 翻訳の世界では、原文に忠実すぎるあまり、日本文としては硬すぎ、かえってわかりづらいことを「忠実なる醜女」と言い、逆に原文には必ずしも忠実ではないが、日本文としてはこなれていてきわめてわかりやすく、かつ原意をも十分に伝えている訳文を「不実なる美女」と呼びますが、秘田さんはまさに後者だったということが、主に『天井桟敷の人々』の字幕によって検証されていきます。映画の字幕の場合、平均的な日本人が1秒間に読める字幕の字数はほぼ4文字という原則があり、秘田さんはこの制約の中で見事な訳文を生み出していったのでした。その見事さは山田宏一さんをフランス語へと向かわせる原動力となったことが本書でも触れられています。
 ただし、本書は全200ページ余りのうち、半分以上のページを秘田さんの戦前の生活史を描くのに費やしていて、そういった点では字幕の見事さを中心に置いたというよりも、秘田さんの東和の川喜多長政さんや作家の高見順さんとの関わりが中心になっている感があり、物足りなさを感じもしました。人間・秘田余四郎を知りたい方にはお勧めの本です。

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マイケル・マン監督『レッド・ドラゴン レクター博士の沈黙』

2012-05-17 04:12:00 | ノンジャンル
 マイケル・マン監督・脚本の'86年作品『レッド・ドラゴン レクター博士の沈黙』をDVDで見ました。
 階段を上り、ベッドで寝ている女性を照らす懐中電灯。タイトル。バーミングハムとアトランタの一家惨殺事件の捜査に協力してほしいと引退した元刑事のウィルに言うジャックは、裏方の仕事なので名前は公にはならないと言って説得します。事件は満月の夜ごとに起こっていると言うジャックは、家族団欒の2枚の写真をウィルに渡します。亀の卵を保護する柵を息子と作るウィルは、その夜、ジャックの申し出を受けることを妻のモリーに話します。
 現場検証をするウィルは、血まみれの寝室を見て犯行の様子を声で録音していきます。手袋を外して目を開かせ、犠牲者の夫人に噛み付いていたことに気付くウィル。やがて夫人の爪からは犯人の皮膚が、息子の目からは指紋が発見されます。
 過去に9人を殺し精神病質者として監禁されているレクター博士に会いに行ったウィルは、犯人を探るヒントを得るため、資料を博士に渡しますが、「俺と同類だからあんたは俺を逮捕できたんだ」と言われると、ウィルは動揺して逃げ出します。レクターは電話で相手をうまく騙してウィルの自宅の住所を聞き出します。
 捜査に協力しているチルトン博士から犯人からの伝言がレクターの部屋から発見されたと聞いたウィルは、その伝言が途中で途切れているのに気付きます。ウィルを知る新聞記者のラウンズは、ウィルが捜査に協力していることをタトラー紙の記事にし、ウィルの怒りを買います。そしてタトラー紙の広告欄でレクターと犯人が連絡を取っていたことも分かります。
 やがてラウンズが犯人に襲われ、パンストを頭に被った犯人は、ラウンズを車椅子に縛り付け、ウィルへの伝言をラウンズに読ませて録音した後、歯型を口に入れてラウンズの顔を噛み、車椅子ごと燃やして坂を転げ落とします。
 レクターが犯人にウィルの住所を教えたことを知ったウィルは、すぐに自宅へ向かい、モリーと息子を警察によって避難させます。ウィルは息子に、以前自分が精神科医で、レクターの被害者の一人が自分の患者だったこと、そしてレクターの影響を受けて邪悪な考えを一時持つようになったことを語ります。
 一方、犯人のダラハイドはフィルムの調達を盲目の女性リーバに頼み、リーバは歯の治療のために麻酔をかけられた虎の鼓動を楽し気に聞きます。リーバを自宅に招いたダラハイドは、彼女と愛し合いますが、翌日リーバが別の男に送られ、玄関先でキスのようなことをしているのを見て誤解したダラハイドは、男を射殺し、リーバを自宅へ拉致します。
 満月の夜、ウィルはようやく被害者の2家族がホームムービーを同じ写真館で現像していたことに気付き、そこから犯人をダラハイドと特定することに成功します。ダラハイドの自宅に急行したウィルは、リーバがダラハイドに襲われようとしているのを見て、援軍を待たずに一人で窓を割って侵入し、ダラハイドに倒されます。やって来る警官を次々と撃ち倒すダラハイド。しかし結局ウィルの銃弾に倒れ、リーバは助けられます。
 ラスト、亀の卵がほとんど孵って喜ぶ息子とともに、ウィルはモリーの体を抱いて海のかなたの太陽を見るのでした。

 ラストの銃撃戦もマシンガンが出てこないので迫力不足はいなめず、レクター特有のおどろおどろしさも今一つで、期待していた猟奇的シーンもラウンズが火に包まれて車椅子ごと転げ落ちる場面だけで、物足りなさを感じました。次作に期待です。

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