gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

斎藤美奈子さんのコラム・その91&前川喜平さんのコラム・その52

2021-08-09 07:40:00 | ノンジャンル
 さて、恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず8月4日に掲載された「自宅療養の真意」と題された斎藤さんのコラムを全文転載させていただくと、
「撤退を転進、全滅を玉砕といいかえて、国民の目をあざむいたこの国の過去を思い出す。
 政府は二日、新型コロナウイルス感染症の診療方針を転換すると発表した。「重症患者や重症リスクの高い方以外は自宅療養を基本とし、症状が悪くなれば入院できる体制を整備する」
 なんてこったい。
 アメリカで内科医をしている安川康介さんは、ツイッターで中等症とは「肺炎が広がり、多くの人にとって人生で一番苦しい」状態。重症は「助からないかもしれない」状態と説明している。また政府が方針転換したのは医療崩壊寸前だからだし、自宅療養は事実上の放置に近い。以上を勘案すると、先の発表は次のように変換できる。
 「危篤に近い状態にある方以外は、死ぬほど苦しくても自宅放置。症状が悪くなっても入院できるとは限りません」
 いわば政府のお手上げ宣言。国民の命は守れないと公言したに等しい。三日各誌も一面トップで伝えている。読売新聞は発表通り「『入院重症者ら限定』に転回」。東京新聞は踏み込んで「中等症も自宅療養」。毎日新聞「入院患者以外は原則自宅」は意味不明。当たり前ですよね、それ。
 しかしながら、産経新聞の一面トップは五輪ネタで「村上『銅』」、朝日新聞は「高齢者2回接種75%」だった。両紙は新聞と名乗るの、もうはめれば?」

 また、8月1日に掲載された「また安倍晋三と書くのか」と題された前川さんのコラム。
「「桜を見る会」前日の夕食会を巡り、検察は安部晋三前首相の元公設第一秘書を略式起訴したが、安倍氏への公職選挙法違反などの刑事告発に対しては「嫌疑不十分」として起訴しなかった。
これに対し、7月30日に公表された東京第一検察審議会の議決は「不起訴不当」と断じた。夕食会参加者への費用補填(ほてん)は違法な寄付行為の疑いがあるということだ。議決では「秘書や安部氏の供述だけでなく、メールなどの客観的資料も入手して犯意の有無を認定すべきだ」と指摘した。
 検察審査会は主権者である国民が検察を監視するための大事な制度だ。検察が改めて真剣に客観的な証拠の収集にあたることを望みたいが、あまり期待はできない。
 一方、安倍氏の政治責任は、刑事責任の疑いが生じた時点ですでに生じている。安倍氏は国民に説明する責任を果たさず、逆に「明細書はない」「差額は補填していない」など、国会で百回以上の「虚偽答弁」を繰り返した。自ら説明をしないのなら、国会で証人喚問するしかない。
 森友学園問題や加計学園問題での安倍氏の政治責任も追及されずに残っている。普通の羞恥心があれば政治家を続けられないなずだが、この人にそういう羞恥心はない。だから僕は山口4区の有権者に聞きたい。「投票用紙にまた安部晋三と書くのですか」と。」

 そして、8月8日に掲載された「飢えた子どもを救え」と題された前川さんのコラム。
「毎日なともな食事をするという最低限の生存条件が満たされない子どもが日本にもいる。NPO法人「キッズドア」が支援対象世帯に夏休み中の食事への不安について聞いたアンケートで「子どもに栄養バランスの良い食事を与えられない」という回答が76%に及んだ。新型コロナ感染拡大以前に比べ「食事の量が減った」と答えた世帯も47%あった。
 日本国憲法25条はすべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障する。子どもの権利条約は締約国に子どもへの「十分に栄養のある食物」の供給を求め(24条)、必要な場合には保護者に対し「栄養、衣類及び住居に関して、物的援助及び支援計画を提供する」よう求めている(27条)。子どもに栄養のある食事を保障することは憲法上も人権法上も国の義務なのだ。
 子ども食堂は貴重な共助の取り組みだが、日々の食事に欠ける子どもには公助が必要だ。学校給食を夏休みも含め通年で実施することも考えるべきだ。理屈はどうにでもつく。任意参加の食育授業にしてもいい。
 政府はGoToキャンペーンなどの昨年度予算を三十兆円も使い残した。そんな金があるなら子どもを抱える困窮世帯の支援に使うべきだ。こども庁をつくる暇があるなら、まず飢えた子どもを救えと言いたい。」

 どの文章も一読に値する文章だと思いました。

増村保造監督『痴人の愛』その3

2021-08-08 09:21:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 ナオミを車で迎えに来た熊谷は、「学生のうちは遊んだけど、就職したら一所懸命働くつもりだ。お前も考えておいた方がいい」と言い、堤防脇の道路でナオミを降ろす。
 譲治は上司から「このところ仕事上のミスが多いし、遅刻、早退、欠勤も度々だ。どういう訳だい? 真面目な人間ほど女に溺れたら深みに入りやすいが、少しは控えたらどうかね。ナオミとかいう女と遊ぶの」と叱責を受ける。「あいつとは別れて、ほっとしているんです」「別れた? そりゃ良かった。やっぱり共同便所なんてやめたほうがいい。大体悪趣味だよ。今度こそ、堅気の立派な嫁さんを世話してやるから、仕事をしっかりやりたまえ。これ以上評判が悪くなるとクビだぞ」と上司は言う。
 ナオミがいなくなり、涙ながらに一人で馬遊びをする譲治。そんな時、譲治は母が危篤である知らせを受ける。
 「ナオミってのは、そんな女だったのかい。やっぱり育ちが悪いんだねえ」と母が言うと、譲治は「自分がわがままに育てたからだ」と反論し、「悪いのは母ちゃんだ。幼い時、一緒の布団に寝たように、ナオミに抱かれて甘えたかったんだ」と続けると、「では私が早く死ななきゃならないねえ」と母は言うと、息を引き取る。「母ちゃん、許してくれ。ひどいことを言って。悪いのは母ちゃんが言っていたようにナオミだ。あんな女のことはきっぱり忘れて、真面目に生きるよ。だから許してくれ、母ちゃん!」」と取り乱す譲治。
 譲治の母の葬式。泣き伏す譲治。
 間もなく譲治に同情した浜田がわざわざその後のナオミの消息を伝えに来る。色々な男と関係を持ってはその家に転がり込むという生活で、今では遊び人の間で娼婦扱いされ、軽蔑の対象だというのだ。やがて突然ナオミが譲治の家にあらわれる。内心喜んだものの、わざと冷たくあしらう譲治。その時は服を取りに来ただけで、ナオミはすぐに帰ってしまう。しかしこれが譲治の気持ちに火をつける。
 譲治は上司に会社を辞めると言う。「母が死んで遺産が手に入ったもんで。僕みたいな人間は田舎に引っ込んで、ひっそりと暮らした方がいいんです。こんな機械相手の仕事は向きません」「うらやましいね。俺もそうしたいんだが、うちは貧乏だからな。親、女房、子供のためにせっせと働かなきゃならないんだ。」
 再度姿を見せたナオミに譲治は復縁を懇願する。「友だちならいいわ」とナオミ。「お礼にキスをしてあげる」と言って、エアキスをし、「これが友だちのキスよ。私に少しでも触ったらだめよ」と言って去る。
 ナオミの裸体の写真を触りまくり、顔の写真にキスして、頭をかきむしり、「ナオミ、じらさないでくれ!」と叫び、暴れまくる。そこへ花村医師が現われ、精神安定剤を処方してあげると言う。「あの女と別れて15年は寿命が延びた」という花村医師に「お前みたいな覗き屋に、俺の気持ちが分かるか!」と譲治は物を投げつける。
 譲治が目覚めると、そこにはナオミがいた。ナオミは首の後ろのうぶ毛を肌に触ることなく剃ってくれと頼む。「私の体、変わった?」「ああ、昔より油がのって、みずみずしくなった」「見たいでしょ? でもダメ。友だちなんだから」。首筋が終わると、わき毛まで剃るように言うナオミ。我慢できなくなり、ナオミを押し倒す譲治。「もうからかうのはやめてくれ。友だちなんてやだ。夫婦になっておくれ。なぜ黙ってる? なんとか言ってくれ」。譲治を繰り返し平手打ちするナオミ。「いやか? いやなら僕を殺してくれ。もう我慢ができない。頼む」。譲治がナオミに触れようとすると、ナオミは「きちがい!」と言って譲治を蹴とばす。「きちがいで悪いか?」「きちがいなんか、相手にするもんか」とまた蹴とばすナオミ。「じゃあ、馬でいい。いつかのように僕の背中に乗ってくれ。それだけでいい」。ベッドの上で四つん這いになった譲治にまたがったナオミは「さあ、これでいいか?」「ああ、いい」「あたしの恐ろしさが分かったか?」「わかった」「これから何でも言うことを聞くか?」「聞く」「もっと立派なうちに住んで、うんと贅沢させるか?」「させる」「あたしが言うだけ、いくらでも金を出すか? あたしに好きなことをさせるか? 誰と付き合ってもいいか?」「いい」「あたしの言うことは、なんでも信じるか?」「信じる」「あたしを呼び捨てにしないで、ナオミさんと呼ぶか?」「呼ぶ」「きっとか?」「きっと」「よし。歩け!」。立て続けに尻を叩くナオミ。「やっと夫婦になれた。もう逃さんぞ。一生放すもんか」「譲治さん、私だってあんたしかいないのよ」。譲治に抱きつくナオミは、泣き出す。「浮気しても許すか?」と聞かれて従順にうなずく譲治。こうしてナオミとの生活を取り戻し、譲治は再び幸せに浸るのだった。

 譲治の独白が多用され、安田道代の悪女ぶりが傑出していたと思います。

増村保造監督『痴人の愛』その2

2021-08-07 06:56:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 サンオイルをナオミの背中に塗る譲治。あくびをするナオミは「面白いこと、ないかしら。何かおいしいもの、食べたいなあ。譲治さん、私、死ぬほど退屈なのよ。なんとかして」「じゃあ、英語の勉強だ」。ナオミを無理やり室内に引っ張り込む譲治。英語のページを発音して訳せと譲治が言うと、ナオミは「わかんない」と言う。ナオミを馬鹿よばわりする譲治。「わかんないものは、わかんない」「じゃあわかるまで考えろ。今夜一晩中かかってもいい。できるまでやるんだ」。ナオミは譲治を睨み、テキストを破り捨てる。「何をする気だ。僕に反抗する気か? ナオミ、勉強して立派な女になるっていうのは嘘か? 嘘なんだな?」「ふん」とふてくされるナオミ。「よし、それならいい。もう結婚はやめだ。こっから出てってくれ。あの汚い家に戻れよ」。ナオミを突き飛ばす譲治。「出てゆけと言っているんだ! 聞こえないのか! それとも悪いと思って謝るか。どうなんだ、はっきりしろ」。ナオミの頭をこずく譲治。「家に戻りたくないのか?」。うなずくナオミ。「じゃあ、手をついて謝れ」。ナオミが謝ると「よし」「私、どうせ勉強するんなら、イタリア語やりたいな」「イタリア語?」「この先の貸別荘にケインさんていうアメリカの将校さんがいるでしょ? あの奥さんがイタリア人で、うちで教えているの。習いに行ってもいい?」「だめだよ。またすぐ飽きて止めるんだから」「今度はちゃんとやる。だってイタリア語なら発音もきれいだし、音楽の勉強の役に立つわ。一生懸命やるから、いいでしょ?」「本当にまじめに通うね?」「週3回しっかり行くわ」「じゃあ、いいだろう」「譲治さん、大好き!」と譲治にキスするナオミは、ベッドに座ると「あたし、英語は嫌いな上にバカだって言われたでしょ? 腹が立ったから、わざと解らないふりをしたの」「本当かい?」「当たり前よ。こんな英語、誰だって分かるわ。それを本気で怒るんだからおかしくって」と譲治の背中を蹴る。「僕をからかった訳か」「そうよ。あたしの方がよっぽど利口ね」「偉いねえ、君は」「分った? じゃあ馬になりなさいよ」。譲治は四つん這いになり、背中にナオミを乗せる。譲治の口にハミを食わせ、両足で譲治の胴体を締め付け、尻を叩いて、早く前進することを要求するナオミ。
 月給の前借を上司にお願いする譲治。「年末のボーナスを抵当に、借金しているそうだな。どうしてそんなに金がいるんだ? 独身だし、なんの道楽もない君なのに」「訳はちょっと申し上げにくいのですが、何とか貸していただけないでしょうか?」「許可しないのは会社の方針だが、まじめな君のことだ。特別に認めよう」「ありがとうございます」と頭を下げる譲治。
 ある日、早く帰宅すると、ナオミは青年に背中をかかせていた。「ああ、いい気持ち」とのけぞるナオミ。「僕、帰るよ。また明日来る」とあわてて帰る青年。譲治は隠れて、青年をやり過ごす。
 勉強を押しつけてばかりの譲治にナオミは飽き足らなくなり、一緒にイタリア語を習っている慶應大学の学生・熊谷と体の関係を持ってしまう。譲治は最初そのことを知らず、彼女と一緒にイタリア語教師のパーティに行ったり、その後、熊谷とその仲間である浜田(田村正和)を終電が終わったので、譲治とナオミのアパートに泊めて、ナオミは3人に平等に体を与えてみたりと4Pを楽しみ、浜田の態度からナオミと肉体関係があるのではと譲治は疑うが、ナオミはきっぱりと否定する。
 翌日、出勤すると、上司と同僚がナオミが青年たちを次々に荒らしていて、女便所と呼ばれているので、決して結婚などしないようにと忠告する。すぐに家に帰った譲治はナオミに詰問するが、ナオミは全否定し、そんなに疑うならイタリア語も何もかも辞めて、一日中家にいることにする、私には譲治さんさえいればいい、と言う。譲治の誠意を試すために、また譲治に馬乗りになるナオミ。
 しかし、ナオミの寝言から、また疑いにとらわれた譲治は、花村医師を訪ね、トランク2つを預け、もし自分が留守の間に誰か訪ねてくるようだったら知らせてほしいとお願いする。花村が断ると、花村が双眼鏡で自宅のふろ場を覗き見していることを世間にばらすと脅し、自分に協力させることに成功する。譲治は家を出る時、電話線を切り、インターフォンも取り外して外出する。それを知ったナオミは酒屋に頼んで、浜田に連絡するように頼む。しばらくして譲治に花村から電話が入り、青年が譲治の家に入っていったと報告する。譲治は現場に踏み込み、自分を騙してアバンチュールを楽しむナオミと熊谷たちを目撃。「やっぱりまーちゃんねえ。一番いいわあ」と言うナオミの姿に激怒してナオミを殴り倒し、家から追い出す。

(また明日へ続きます……)

増村保造監督『痴人の愛』その1

2021-08-06 06:16:00 | ノンジャンル
 増村保造監督、谷崎潤一郎原作、池田一朗脚本、山本直純音楽の1967年作品『痴人の愛』をDVDで観ました。

 以下、サイト「映画ウォッチ」のあらすじに加筆修正させていただくと、

「河合譲治(小沢昭一)はある工場に勤めるエンジニア。30歳を過ぎているのにまだ独身だ。酒、麻雀、パチンコ、競輪、競馬にも縁がなく、もちろん浮いた噂などひとつもない。周りからはペットとして猫をかわいがるしかない、野暮な朴念仁と見なされて、影の薄い存在だった。ある日、帰宅時にバスを降りると、花村医師(内田朝雄)が家まで送ってあげると言う。そして顔色がよくないから、栄養注射を打ってあげようというが、譲治はその申し出を断る。「何事もかわいがりすぎると、体によくありませんよ。かわいがるにしてもほどほどに」と言う花村医師。そんな風に何の趣味もないと周囲から思われている譲治だったが、実はある女性(安田道代)とすでに同棲していて、彼女との生活に生きがいを見出していたのだ。彼女の名前はナオミ。まだ18歳だ。行きつけの喫茶店でウエイトレスとして働いていた彼女を譲治が見初め、家を買った上で一緒に暮らしはじめたのだった。利口そうな彼女はこんな喫茶店のウエイトレスにはもったいないと譲治は思った。そして帰宅直後、水着姿のナオミを夢中で写真に撮るのだった。
 譲治の実家は山林を持っていて、お金には困らなかった。そして飲み屋をやっているナオミの両親も「いい厄介払いができた」とばかり、むしろ同棲に乗り気だった。天真爛漫なナオミは18歳だというのにまるで子供で、譲治には父親のように接していた。譲治の方でも顔色の悪い彼女の心身を磨き上げ、自分の望む女性に仕上げてから結婚するつもりだった。風呂で文字通りナオミの体を磨き上げる譲治。「早く結婚して。この場で結婚して」と譲治に迫るナオミ。譲治はその誘惑に抗しきれなくなり、ついに彼女と関係を持つ。その様子を双眼鏡で盗み見る花村医師とその妻。
 鉄橋の上で、「(両親は下賤で、姉はトルコ譲やストリッパーをやってる)あの家が嫌で、よくここに来て泣いたわ。でももう縁も切れたし、その必要もなくなった」と言うナオミ。「あたしって運がいいのね。譲治さんに拾われるなんて」「僕こそ運がいいんだ。君を妻にできるんだから」「譲治さんのお母さん、結婚を認めてくれるかしら」「大丈夫さ。すごく物分かりのいい人間だよ」「譲治さん、私を捨てないでね。きっといいお嫁さんになるから」「僕はね、君のために生きているんだ。君の望みはなんでも叶えてあげる。ずっと勉強して、立派な女になっておくれ」「なるわ。英語もピアノも一生懸命勉強して、きっと譲治さんの気に入るようになるから」「ナオミちゃん」。キスを交わし抱き合う二人。
 「ナオミの日記(6)自 1967-6-10 至」の字幕。晴れて正式の夫婦となった二人。ナオミの肉体は日々成長していったが、勉強の方は一向に成果が上がらなかった。服はけばけばしいものばかりで、何着でも買いたがる。20万円もするピアノを買ったのに、先生が気に入らないからピアノは辞めると言う。要するに飽きっぽくて根気がない。その上、だらしがない。譲治は「ちょっと締める必要がある」と思うのだった。

(明日へ続きます……)

増村保造監督『妻二人』その2

2021-08-05 06:41:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 苦しんだ健三は犯行時間に順子といっしょにいたことを警察に話すことにする。道子にはあらかじめ、そのことを話す。嘘が嫌いな道子にふさわしい男であるためと説明する健三だった。
 だが、警察ではかつて順子と恋仲だった健三の証言は信用できないと言う。そして住み込み女中は社長に買収され、あの夜順子を見たことを否定する。それでも健三が利恵のアリバイを否定したことを知った永井は健三をクビにする。
 順子のために健三は真犯人を見つけようとする。利恵から井上の妻が社長の愛人であったことをきき、道子から障害児救済基金の経理が問題ありであることを教わった健三は井上夫妻のアパートへ行く。だが、そこでわかったのは犯行時間には社長と井上夫人の情事を井上が見ていたということだった。
 帰宅した健三に問いただされ、道子はあの日大阪から飛行機で東京にとんぼ返りして小林と会い、小林を殺して深夜の飛行機でまた大阪に行ったことを告白する。「清く明るく美しく」という会社の標語を裏切ってしまった道子は、窓から飛び降りて死のうとするが、健三は彼女を止める。道子は健三にともなわれて警察に自首し順子は解放される。
 健三と順子は警察署の階段で言葉を交わす。自分を愛してくれていて嬉しいと言う順子に、自分は道子と生きていかなければならないと答え、「一生一度の恋の終りだな」と言う健三。警察署を毅然と去って行く順子の背中を見てから健三は階段を再び上っていくのだった。

 若尾文子と岡田茉莉子の二人の女優の存在感が印象的な映画でした。