作詞家の阿久悠さんがお亡くなりになりました。まだ70歳だったとか。
生涯に作詞したのはなんと5000曲にも及ぶ、というんですから凄いです。
日本人であるからには、阿久さんが作詞した曲を、誰しも一度は聴いたことがあるのではないでしょうか。強烈なインパクトのある言葉でリスナーの耳を引きつける技術は、他の誰にもマネのできないものだったと思います。
慎んで故人のご冥福をお祈りいたします。
さて、今日聴いているのは、ニルソンが1972年に歌って大ヒットした美しいバラード、「ウィズアウト・ユー」です。
この曲、ぼくは長いことニルソンの作だとばっかり思っていましたが、違ってました。「ビートルズの弟分バンド」と言われたバッドフィンガーのピート・ハムとトム・エヴァンスの共作だったんですね。でも逆に言えば、それだけニルソンの歌ったもののインパクトが強烈だった、ということでしょう。
この曲は、マライア・キャリーやホール&オーツを始め、たくさんのミュージシャンにカヴァーされていますが、往々にしてニルソン版を踏襲しているようです。
バッドフィンガー「ウィズアウト・ユー」
ハリー・ニルソンは、1960年代の初頭から銀行員をしながら作曲家として活動していました。勤務の合い間にスタジオに入ったり、曲を売り込んだりしていたそうですが、このあたり日本で言うと小椋佳氏を思わせる境遇ですね。
ニルソンの作品は、やがてプロデューサーとして名高いフィル・スペクターの目に留まります。そしてモンキーズやヤードバーズに曲を提供した後、1967年にシンガー・ソング・ライターとしてデビューしました。翌68年には銀行を辞め、本格的な音楽活動へ足を踏み入れることになります。
ニルソンの甘くてカラフルなポップ・センスは絶賛され、そのどこかで耳にしたような人懐っこさと優しさに満ちた作風は、ソング・ライターとして高い評価を受けます。当時ビートルズのアップル・レコードのスタッフが、ニルソンのデビュー・アルバムをビートルズの面々に聴かせたところ、とくにジョン・レノンがこれを大いに気に入り、ニルソンに国際電話をかけて「君のアルバムは素晴らしい。君は素晴らしい。ただそれを言いたかったんだ」と最大級の賛辞を贈ったそうです。
ニルソン
1968年にリリースした『空中バレー』から「ワン」がスリー・ドッグ・ナイトに取り上げられ、全米5位の大ヒットとなります。また、このアルバムに収録されていた「うわさの男」は、映画「真夜中のカウボーイ」の主題歌に起用され、全米6位の大ヒットとなりました。これによってニルソンの知名度はいっぺんに上がったわけです。
「ウィズアウト・ユー」はもともとバッドフィンガーの1970年のアルバム『ノー・ダイス(恋の嵐)』に収録されていたもので、これをニルソンは71年のアルバム『ニルソン・シュミルソン』でカヴァー、シングル・カットしたところ、72年にかけて大ヒット、ニルソン初の全米1位を記録しました。
マライア・キャリー「ウィズアウト・ユー」
非常にエモーショナルに歌い上げるニルソンの「ウィズアウト・ユー」はとてもロマンチックで、独特の優しさにあふれています。曲終盤の「アイキャントリ~~~~ヴ」の部分では、3オクターヴ半はあると言われる声域を駆使して、ダイナミックに、しかしセンチメンタルに歌っています。このサビ部分は伸びやかな高音を持つタイプの歌手にとっては腕の(喉の)見せどころで、マライア・キャリーなどもニルソンの作風を大事にしながら、サビでは驚異の高音を聴かせてくれていますね。
ニルソンは70年代には矢継ぎ早にレコードを生み出しましたが、84年以降は沈黙を続けました。また、彼はほとんどライヴを演らないことでも知られていますが、これは彼が、実際のライヴで起こるであろうミスをとても嫌い、スタジオ・ワークを完璧にこなすことを大事にしていたものと思われます。
ニルソンは、心臓病のため1994年に52歳の若さで亡くなりました。
[歌 詞]
[大 意]
忘れられないんだ今夜のことが
君がさようならを言った時のあの顔が
だけどこうなるより仕方がなかったのかもしれないね
君はいつも微笑んでいるけど
君の目には悲しみが映ってる
明日のことが頭から離れないんだ
明日また悲しみをみんな思い起こしてしまうだろう
かつてはそこにいた君を行かせてしまった
今はただ君に知らせるべきだろう
知ってほしいんだ
君なしでは生きられない 君なしでは与えることもできない
君なしでは生きられない 君なしでは与えることもできない
◆ウィズアウト・ユー/Without You
■作詞・作曲…ピート・ハム/Pete Ham & トム・エヴァンス/Tom Evans
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■歌・演奏
バッドフィンガー/Badfinger
■発 表
1970年11月9日
■プロデュース
ジェフ・エメリック/Jeff Emerick
■収録アルバム
ノー・ダイス/No Dice (1970年)
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■歌
ニルソン/Nilsson
■シングル・リリース
1971年12月
■プロデュース
リチャード・ペリー/Richard Perry
■収録アルバム
ニルソン・シュミルソン/Nilsson Schmilsson (1971年)
■チャート最高位
1972年週間チャート アメリカ(ビルボード)1位、イギリス1位
1972年年間チャート アメリカ(ビルボード)4位
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■歌
マライア・キャリー/Mariah Carey
■シングル・リリース
1994年1月24日
■プロデュース
ウォルター・アファナシエフ/Walter Afanasieff
■収録アルバム
ミュージック・ボックス/Music Box (1993年)
■チャート最高位
1994年週間チャート アメリカ(ビルボード)3位、イギリス1位
1994年年間チャート アメリカ(ビルボード)16位
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そして彼がシンガー・ソングランターだと知って、
もちろん彼が書いた曲だと思ってました。
この曲は70年代を代表する名曲ですね。
素晴らしい曲だと思います。
彼の音域もとても広いですね。
オリジナルのバッドフィンガーも、それなりの”味”があると思います。
この曲は、ニルソンの、シンガーとしての実力をも強力にアピールする1曲ですよね。あのヒゲ面からは想像もできない、とても美しい声も魅力です~
そうですね、70年代に、いや、ポップス史に残る名バラードですよね。
バッドフィンガー版もかなり良いですよね。しかしこの曲を作ったふたりともが自殺という手段でこの世を去っているのは、何と言うか、残念です。長い間不遇を味わってきたバッドフィンガー、もう一度見直して聴いてみたいと思います。
私もカラオケで歌う時は(あまり無いけど)アイ・キャント・リ~~~ヴ…と伸ばして歌ってます。あ、今度バッドフィンガーみたいに歌ってみようかな?
トホホなアルバムとされてしまってるジョン・レノン、プロデュースの「プシー・キャット」、持ってます。
うう、ぼくも本当はそう言いたい・・・(^^;)
あの「あきゃんり~~~~~ぶ」のところはホント、血管が切れそうになりますよね。
しかしニルソンの声って、透明感はあるし、高音がよく伸びるし、シンガーとしてもっと評価されていいんじゃないかと思います。
>「プシー・キャット」は未聴なんですが、トホホなアルバムなのですか~?
ジョンとニルソンって飲んだくれ友達(笑)ですよね。そういうとこで気が合ってもよい作品には結びつかないのかな~。でもこのふたりが結びつくと良い作品が生まれそうですけどね。ふたりとも音楽には厳しいしね。
だんだんと才能ある人々はいなくなっていきますね。 寂しい限りです・・・
さて、本題のニルソン。
最初の写真ですが、正式なジャケット写真なのでしょうか?
何だか、昭和初期に日本の山奥で救出された外国人みたいです・・・
私はバッドフィンガーの曲だと知ってましたよ♪
以前記事にする時に調べたから(笑)
それまでは、レオン・ラッセルの曲だと思ってました・・・
こんちゃーっす♪
むっ、Nobさんもジャケ写真に注目されましたか。
ぼくも、なぜ着物を着てるんだろう、と不思議に思ってしまいました(^^;)
やれやれ、これで「ウィズアウト・ユー」はバッドフィンガー版がオリジナル、ということをやっと学習いたしましたよ。
あ、なるほど、レオン・ラッセルですか~。なんとなくその発想、分かる気がしますよ。どちらもヒゲ面ですしね~(^^)
オリジナルがあったのは知りませんでした。
72年頃の曲なんですね。リアルでは聴いてないですけど、ラジオで耳にしてたんだと思います。
80年代後半からあまり洋楽を聴かなくなっちゃったので、マライヤのほうは、そういえば歌ってたな~って感じですね。
この曲のニルソン版がリリースされてからもう35年以上ですか~。やっぱり良い曲は古びずに残ってますよね。
あ、でも若い人(汗)は、マライアでこの曲を知った、というケースが多いみたい。歌い上げ系の曲を得意としているシンガーには似合ってますね。