アジアのなかに、ある島国がありました。この国は、みんなの代表者が会議に出てなんでも話し合いをして決めることにしていました。会議に出る人たちは、それぞれグループを作っていて、グループごとに代表者がいました。そのグループの中で一番大きなグループの代表者が総理大臣になり、会議で決まったことを実行する役をしていました。一方でこの国には国民のお世話係がいて、役割分担されて、国民のために働いていました。この人たちは、総理大臣の補佐もして、会議で決まったことを実際に実現するために働いていました。
お世話がかりの人は、お世話がかりとして長く働いていました。総理大臣や、会議に出る人たちは、みんなの投票で決まるので、時々入れ替わります。だからお世話がかりの人の方が、お仕事のことをよく知っていてプライドもありました。
この国には、昔から、愛信粉糖という食べ物がありました。体によく、元気になれる魔法の食べ物で製法が特殊で作り方も複雑でした。愛信粉糖が大好きな国民は愛信粉糖をたくさん食べたいなあと思っても、愛信粉糖屋さんがない地域があり、食べたい時に食べることができない人がいました。愛信粉糖屋さんになるには、愛信粉糖の学校に通って、国が実施する厳しい愛信粉糖屋さんの試験にパスしないとお店を出すことができません。それに勝手に学校を作ることもできませんでした。この国の愛信粉糖屋さんたちは、愛信粉糖やさんが増えすぎると、儲けが少なくなるのと、優秀な教授を集めてきちんと製法を教える学校を作らないととみんなが喜んでくれる愛信粉糖が作れなくなることも心配していました。だから愛信粉糖屋さんをあまり作って欲しくなくて、お世話がかりの人に、愛信粉糖の学校はもう作らないでくださいとお願いしていました。
いつまでたっても、自分の住んでいるところに愛信粉糖屋さんができない人は、困って、うちの地域に愛信粉糖の学校を作る場所を提供しますから、どなたか学校を作ってくれませんか?と募ったら、別のところに、うどんやパンの学校を作って成功している人が名乗り出てくれました。地域の人と一緒に、国のお世話係の人にお願いに行きましたが、お世話がかりの人は、全く耳を傾けませんでした。愛信粉糖の学校を作って欲しい地域の人は、総理大臣が入れ替わるたびにお願いを続けて十年がたちました。前に愛信粉糖の学校ができたのは五十年前です。
ある時、総理大臣が変わりました。新しい総理大臣は、新しい学校や事業を始めることを邪魔しないで応援しようという係を設けました。そこで、愛信粉糖やさんがなくて学校を作ってもらいたい地域の人が、お願いに行きました。他にも同じように困っている地域の人がお願いに行きました。お世話がかりの人が邪魔をして、愛信粉糖やを増えて欲しいと願っているのに増えないのは良くないと考えて、邪魔しないで応援する係の人は、会議で相談して、長く作って欲しいと要望を続けてきた地域に先に愛信粉糖の学校を作ろうと決めました。愛信粉糖がいつでも食べられるとお店がない地域の人は大喜びしました。
ところがそれを聞いた、国の愛信粉糖やさんのグループは驚いて、総理大臣をにやめてもらいたいと思っているグループに頼んで学校を作るのをやめてもらうように運動をしました。うどんやパンの学校を他の地域で運営している人が総理大臣と仲良しであることが調べてわかりました。
総理大臣が、仲良しのうどんやパンの学校の人が愛信粉糖の学校も作れるように、裏でお願いをしたのじゃないか。邪魔しないで応援する係の人に命令して無理やり学校を作らせとるんじゃないかとと、反対していたお世話がかりの人は文句を言いだしました。
ある時、島の掲示板に、総理大臣はうどんやパンの学校を作った人と仲良しで、愛信粉糖の学校を増やさなくても良いのに無理やり増やそうとしているという紙が貼られてしまいました。
国民は大騒ぎで、会議を開いて、総理大臣にちゃんと事情を説明してもらってくださいと要望して、会議が行われました。
総理大臣と邪魔しないで応援する係の人は、五十年も愛信粉糖の学校が新しくできず、学校がなくて愛信粉糖が食べられない人がかわいそうなので、作ってあげようとしたと釈明し友達だからといってえこひいきはしていないと言いました。
総理大臣を辞めさせたい人は、お友達だけに学校を作るのを認めるのはえこひいきで、総理大臣はみんなに対して公平にすべきだと言い返しました。学校の建設計画は、途中のままになりました。
この島国に、船でやってきたお坊さんはそれを見て思いました。愛信粉糖をずっと食べたくても食べられずに我慢して、やっと学校ができて食べられることが決まって喜んでいた地域の人がかわいそうだ。えこひいきも良くないし、学校を作る邪魔をするのも良くない。この島に住んでいる人、みんなが幸せになることを考えてあげたらいいのにと、思いました。
そして、この島にあるお寺のお釈迦様にお参りして、この国の繁栄をお願いして島を後にしました。
終わり