6/23 中村浩子 And then 第41話
内田は益田が言ったことを考えた。
益田は特に女性が嫌いということもなさそうに見えた。
でも女性に言い寄られるのは好きではない。
刑事から幸子の話を聞いた。
益田は幸子を何かセックスにまつわることで悪い思い出がある。
その時はできなかったことを浩子さんにやった。
果たして益田から幸子と何があったか聞き出すことはできるだろうか?
翌日、益田を前にしたとき、内田は何冊か薄っぺらい冊子をテーブルの前に
置いておいた。
内田はすぐ終わりますからとPCに向かっていた。
益田がテーブルに座り、テーブル上の冊子に目をやった。
それはポルノ雑誌で表紙は男根と女陰が合体した写真が出ていた。
益田は初めてこの種の雑誌を見た。
その存在は知っていた。
益田はなんてことなく、見ていいですか?と聞くと
一番上にあったのを開いた。
男が女の陰部を舐めていた。
PCの裏側で内田は様子を見ていた。
益田の顔色が赤くなって、それから恐怖・怒り・目の動きが変わった。
益田は冊子を握り締め立ち上がった。
内田はすいませんね、もうすぐ終わりますと言いながら
様子を見ていた。
でも幸子という益田をはっきり聞こえた。
益田は低くうなりだして、それからテーブルをひっくり返した。
大きな音に外にいた警察官が3人ほど飛び込んできた。
内田はどうしたんですか?
と益田を座らせながら聞いた。
益田はまだもがいていた。
内田は益田に鎮痛剤を打った。
益田の手から冊子を取り上げ、ページを見てみて理解した。
これが幸子との関係だった。
益田にはセックスというより、女性に対しての悪夢・憎悪の原因に
なったのがこれなんだ。
もし益田が女なら恐怖が同時に付きまとい、男を殺害するまでには
至らなかったかもしれない。
益田は男だ。その時に幸子にやり返せなかったことを
益田に接近する女にやり返した。
内田は刑事たちに益田のトラウマを話した。
益田は警察病院に入院させられた。
益田には看護士がついた。
益田は静かだった。
内田は益田が彼自身を見つめ、もっと考えるようにするには
どうするのがベストか考えた。
益田は女性という性を憎んでいるのだ。
益田が正常に落ち着いて結婚でもしたとき
再発することはありうる。起こりうる。
内田が考えているころ、刑事の一組が浩子の夫に会いに行った。
そして益田が精神鑑定医とやったことを話した。
浩子さん、益田のこと気に入っていたっておしゃってましたよね。
益田には・・・・刑事たちは例の冊子で益田が暴れ出したことなど
かなり詳細に話した。
雄二は驚いた。
浩子が益田にそんなことを迫るはずがありません。
浩子は益田先生を好きだったかもしれませんが、それは
乙女の淡い恋心みたいもんです。
雄二は半泣きだった。
浩子はそんなことしない。
刑事たちは慌てた。
浩子さんがそうだと言うのではなく、益田は自分を好きになる女性を
憎んだのです。
雄二はすでに妻の件で裁判をする気はなかった。
裁判をすれば益田のしたことの詳細が語られ、週刊誌にでも
載るだろう。
浩子をそんな目に合わせることなんかできない。
さらにそんな前例を浩子がしたなんて噂でもついたら・・・
帰ってください。
雄二は刑事たちに帰ってもらった。