美麻・白馬村では「ウルリ」と呼ばれるアブで、かわいい名前であると思っていた。
ところが刺される・咬まれる?と数日も痛痒い。
稲尾川沿いの谷が狭まったあたりや大町に下る県道の沢より、あらゆるところにこの時期はいる。走って逃げても敵ははるかに早い。
北陸から東北の山間地で旧盆の頃にみられる小型のアブで、
正式にはウシバエ科のハエ、学名イヨシロオビアブというらしい。
大きさはギンバエぐらい。目が青緑色で、杉林で発生し、川沿いに多くいる。
幼虫は林の渓流にそった蘚苔類の多い土壌や朽木中に生息し、
斑紋をもっている。8月上旬が多発生期で、山間地の渓流域、
とくに標高300~500mの川原が広いところに多発生し、
川原から離れるに従い少なくなる。
二酸化炭素を発する温かくて動くものに集まると言われているので、
『散歩』では息をせずに走り去るのが手のようだ。
自動車の排気ガスや熱は車やバスの排気ガスにも集まる。
吸血の特徴は、日没前の薄暗くなってくる頃から、
完全に暗くなる20時頃までの2時間が吸血飛来のピークになる。
朝でもいるが、一日の吸血飛来数の70%ほどがこの時間帯に集中とか。
新潟の糸魚川・小谷ではウルル
富山・石川・福井の北陸三県ではオロロ
岩手ではツナギ
山形ではコシジロと呼ばれる。
「塩の道・千国街道」では昔から、人や馬牛を悩ましたらしい。
「大網峠横川沢ヨリ白池までの内ニ、夏五月ヨリ七月マテ蠅群リ出テ、昼ハ人馬往来成リ難シ、此蠅ヲ所ニテウルルト云フ、形チ小ク色青シ、人馬に取リツキ、サシナヤマスコト甚シ、又耳鼻ヘモ入ルナリ」
『信府統記』(1724年・享保9年)
(塩の道・千国街道は、新潟県糸魚川から長野県松本まで約130kmの旧道)