Ellen's Lion: Twelve Stories by Crockett Johnson | |
クリエーター情報なし | |
Knopf Books for Young Readers |
星の数ほどある児童書の中でも、私にとってはバイブルのような存在
が、この"Ellen's Lion"です。作者は「はろるどとむらさきのくれよん」や
「ちいさなかしこいさかな」や「にんじんのたね」などで知られるクロケッ
ト・ジョンソン。アート・ディレクター、画家、漫画家、いろいろな顔を持
つ人で、彼の絵本は、絵本とはいえなかなか一筋縄ではいかない奥
深さを持っています。特にこの"Ellen's Lion"「エレンのライオン」は、エ
レンとぬいぐるみのライオンが哲学的な、存在のあり方の根本に迫る
ある意味禅問答的な対話を繰り広げます。よれよれの、ボタンでできた
目を持つぬいぐるみが、これまたなかなかくせ者の幼稚園児エレンを
相手にシュールな世界を展開します。あまりにユニークすぎるのが邦訳
の出なかった理由かもしれません。
ある時エレンは、ライオンが悲しそうな顔をしている、それにお母さんが
いなくて可哀そうだと、突然やたら同情し始めます。するとライオンが言
います。ぼくはぬいぐるみで、感情なんかない、同情は御無用と。「ぼく
は悲しくないし、うれしくない、おなかがすいてもいないし、いっぱいでも
ない、バカでもないし、かしこくもない、善くもないし、悪くもない、あれで
もないし、これでもない、君が考えているようなどんなものでもない」
自分の思い込みで他人(他ぬいぐるみ)を忖度するエレンに、ライオンは
自分のありようを説いて聞かせるのですが、もうその頃には、エレンの
興味は、森の中で迷子になった木の子どものお話に移っていて、、、。
自己と他者との関わり合いなんて、こんなものかも知れませんね。人は
みな自分の思い込みの中で生きているのかも。でも、12あるお話の最後
に、エレンがはしかになった時のこと、ライオンが消毒のために洗われて
3日間物干しにつるされた苦労話など、昔の思い出をしみじみ語り合う
エピソードが出てきます。共に過ごした苦難の日々を振り返り、愛情と連
帯感を確認しあって、お話はめでたく閉じられるのです。
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