皆様は、すっきり快適な目覚めで毎日をスタートしていらっしゃいますか?
ある調査によると日本人の5人に一人が不眠の悩みをもっているそうです。
さて睡眠の役割は何でしょうか。
我々哺乳類は、魚類、両生類、爬虫類といった変温動物から進化して恒温動物となりました。身体の内部環境を一定に保つことができる恒温動物は、環境に対する適応力が大幅にアップし活動範囲が増えました。 しかし一方では、体温を保つために多くのエネルギー(食物)を獲得しなければなりません。また、内外からの情報を処理し、よりよく対応するために大脳を発達させる必要がありました。この高度に発達した大脳をもつ高等生物の頂点にいるのが人間です。
大脳は膨大なエネルギーを必要とし、活性酸素のような有害な老廃物も産生し、機能変調をきたしやすいという脆弱性を併せ持ちます。この大脳をうまく働かせるためには、休息を上手に管理する技術が必要となります。これが睡眠であり、身体が休む時間帯に大脳をうまく休息・回復させ、必要な時に高い機能状態の覚醒を保証する機能です。 すなわち、睡眠とは、身体が休む時に脳の活動をしっかり低下させ休養させるシステムなのです。
このシステムは、体内の温度を積極的に下げることで成り立ちます。体内の温度が下がると、生命を支えている体内の化学反応が不活化し(代謝が落ち)、休息状態となります。人間は、手先や足先から熱を逃がし、体内(脳内)の温度を下げ、強制的に脳を休ませているのです。
睡眠には、主に大脳を休める睡眠で睡眠の80%を占めるノンレム睡眠と、主に身体を休める睡眠で、残り20%を占めるレム睡眠があります。ノンレム睡眠とレム睡眠は90~120分の周期で繰り返し、入眠時はノンレム睡眠が多く、覚醒前にはレム睡眠が多くなります。
ノンレム睡眠は、眠りの深さにより三段階に分類されます。深い睡眠時には、自律神経系が安定的に働き、呼吸、循環は穏やかに保たれ、寝汗によりさらに脳の温度を下げ、脳はしっかり休息します。
レム睡眠は、脳は少し活動していますが、四肢筋肉は脱力しているため、いわゆる金縛りが起こる睡眠で、その多くで夢を見ています。
元々レム睡眠があり、大脳の発達に伴いノンレム睡眠が発達したと考えられ、脳は休むが身体は動くノンレム睡眠と身体が休むが脳が活動するレム睡眠を繰り返すことで、無防備な時間帯を少なくする役割があったと考えられています。
さてここから、少し専門的になります。睡眠・覚醒の基本メカニズムは、覚醒系神経(ノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン、アセチルコリン、オレキシン作動性など)と睡眠系神経(GABA、ガラニン作動性など)のバランスを生物時計(体内時計)が制御することにより生じると考えられています。
日中の活動に応じて睡眠欲求が高まりますが、覚醒系シグナルを高めることにより覚醒水準を維持します。覚醒シグナルの強度は時間依存性であり、生物時計により駆動されています。入眠の2~3時間前に覚醒水準は最も高くなり(入眠禁止ゾーン)、その後急速に眠気が強まります。これは、この時間帯に、松果体からメラトニンの分泌増大、深部体温の低下、糖質コルチコイドの分泌抑制など睡眠を促進する生理機能が高まることに由来します。入眠すると睡眠欲求は急速に減少し、十分な睡眠がとると消失し、覚醒します。これが、睡眠・覚醒に関する24時間の日内変動リズムです。
眠りを誘発する経路として、日中の活動で脳疲労物質(プロスタグランディンD2)が蓄積し、これを眉間の奥にある受容体が感知し、アデノシン神経系を介して視床下部のGABA神経系の活性化させることが知られています。GABA神経系は、ヒスタミン覚醒系神経を抑制し、入眠を促します。
コーヒー・お茶(カフェイン)は、アデノシンを抑制することで睡魔を妨害します。アルコールやベンゾジアゼピン系睡眠薬は、GABA神経系を活性化することで眠気を誘発します。また風邪薬や花粉症薬に含まれる抗ヒスタミン成分を摂取すると覚醒系神経を抑えて眠くなります。
参考文献:中公新書『睡眠のはなし』 著者 内山 真
じほう『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』 編集 三島和夫
ある調査によると日本人の5人に一人が不眠の悩みをもっているそうです。
さて睡眠の役割は何でしょうか。
我々哺乳類は、魚類、両生類、爬虫類といった変温動物から進化して恒温動物となりました。身体の内部環境を一定に保つことができる恒温動物は、環境に対する適応力が大幅にアップし活動範囲が増えました。 しかし一方では、体温を保つために多くのエネルギー(食物)を獲得しなければなりません。また、内外からの情報を処理し、よりよく対応するために大脳を発達させる必要がありました。この高度に発達した大脳をもつ高等生物の頂点にいるのが人間です。
大脳は膨大なエネルギーを必要とし、活性酸素のような有害な老廃物も産生し、機能変調をきたしやすいという脆弱性を併せ持ちます。この大脳をうまく働かせるためには、休息を上手に管理する技術が必要となります。これが睡眠であり、身体が休む時間帯に大脳をうまく休息・回復させ、必要な時に高い機能状態の覚醒を保証する機能です。 すなわち、睡眠とは、身体が休む時に脳の活動をしっかり低下させ休養させるシステムなのです。
このシステムは、体内の温度を積極的に下げることで成り立ちます。体内の温度が下がると、生命を支えている体内の化学反応が不活化し(代謝が落ち)、休息状態となります。人間は、手先や足先から熱を逃がし、体内(脳内)の温度を下げ、強制的に脳を休ませているのです。
睡眠には、主に大脳を休める睡眠で睡眠の80%を占めるノンレム睡眠と、主に身体を休める睡眠で、残り20%を占めるレム睡眠があります。ノンレム睡眠とレム睡眠は90~120分の周期で繰り返し、入眠時はノンレム睡眠が多く、覚醒前にはレム睡眠が多くなります。
ノンレム睡眠は、眠りの深さにより三段階に分類されます。深い睡眠時には、自律神経系が安定的に働き、呼吸、循環は穏やかに保たれ、寝汗によりさらに脳の温度を下げ、脳はしっかり休息します。
レム睡眠は、脳は少し活動していますが、四肢筋肉は脱力しているため、いわゆる金縛りが起こる睡眠で、その多くで夢を見ています。
元々レム睡眠があり、大脳の発達に伴いノンレム睡眠が発達したと考えられ、脳は休むが身体は動くノンレム睡眠と身体が休むが脳が活動するレム睡眠を繰り返すことで、無防備な時間帯を少なくする役割があったと考えられています。
さてここから、少し専門的になります。睡眠・覚醒の基本メカニズムは、覚醒系神経(ノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン、アセチルコリン、オレキシン作動性など)と睡眠系神経(GABA、ガラニン作動性など)のバランスを生物時計(体内時計)が制御することにより生じると考えられています。
日中の活動に応じて睡眠欲求が高まりますが、覚醒系シグナルを高めることにより覚醒水準を維持します。覚醒シグナルの強度は時間依存性であり、生物時計により駆動されています。入眠の2~3時間前に覚醒水準は最も高くなり(入眠禁止ゾーン)、その後急速に眠気が強まります。これは、この時間帯に、松果体からメラトニンの分泌増大、深部体温の低下、糖質コルチコイドの分泌抑制など睡眠を促進する生理機能が高まることに由来します。入眠すると睡眠欲求は急速に減少し、十分な睡眠がとると消失し、覚醒します。これが、睡眠・覚醒に関する24時間の日内変動リズムです。
眠りを誘発する経路として、日中の活動で脳疲労物質(プロスタグランディンD2)が蓄積し、これを眉間の奥にある受容体が感知し、アデノシン神経系を介して視床下部のGABA神経系の活性化させることが知られています。GABA神経系は、ヒスタミン覚醒系神経を抑制し、入眠を促します。
コーヒー・お茶(カフェイン)は、アデノシンを抑制することで睡魔を妨害します。アルコールやベンゾジアゼピン系睡眠薬は、GABA神経系を活性化することで眠気を誘発します。また風邪薬や花粉症薬に含まれる抗ヒスタミン成分を摂取すると覚醒系神経を抑えて眠くなります。
参考文献:中公新書『睡眠のはなし』 著者 内山 真
じほう『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』 編集 三島和夫
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