みちのく童話会スタッフの野泉マヤです。
『東北こわい物語』では山形県の怖い物語「スノーモンスター」を担当しました。
樹氷のことをスノーモンスター(雪の化け物)と呼びますが、本当に怖いのはモンスターより吹雪なんですよ~。その恐怖の体験を元に、この物語を書きました。
私が住んでいる宮城県北西部は、年に一度あるかないかですが、高速道路が閉鎖されるくらいの地吹雪に見舞われることがあります。数年前には高速道路で玉突き事故があり、全国ニュースにもなりました。
高速道路が閉鎖されると、下の国道は大渋滞となります。以前、高等学校に勤務していた頃、ちょうど帰宅時にその地吹雪渋滞に遭遇したことがありました。いつもなら時速70キロくらいですいすい走れる道が、その夜は、のろのろ走っては止まる、の繰り返しでなかなか進みませんでした。
前方の丘を越える坂道には、車のテールランプが赤い数珠玉のようにつながっているのが見えました。
「こんなに多くの車が立ち往生してるんだ。いつになったら自宅へ帰れるのかな?」
普段なら30分で帰れるのに、既に車に乗ってから1時間もたっていました。
吹雪の風は強弱を繰り返します。弱めの時はテールランプのつながりも見えますが、強くなると真横から吹きつける雪以外、何も見えなくなります。うなり声をあげる激しい風に、車も揺らされます。
その時、私は恐怖に襲われました。「吹雪の中に、たった独りで取り残されてしまったのでは?」
もちろん、渋滞しているのですから、すぐ前にも後ろにも車を運転している人たちがいます。道沿いには民家もあるので、独りではありません。なのに、そんな錯覚によって恐怖を感じたのです。
吹雪の山で遭難した人が、避難小屋まであと一歩のところだったのに、なぜたどり着けなかったのか? という話を聞いたことがありました。遭難した人の気持ち、わかるような気がします。
物理的な距離は近くても、精神的な距離が遠くなり、孤立感に襲われる。
これが、吹雪の怖さです。
『東北こわい物語』を読んで、そんな吹雪を想像してみてくださいね。