どこまでだって歩いていけるさ

2012年1月22日 それまでの日記を引き連れてOCN Cafeから移住。
新しい扉の向こうには何があるのだろうか。

「石谷家住宅」と世界遺産

2015年07月05日 | 日記
両親を失ってから始まった最初の夏の旅の目的のひとつは なんとしても見たかったライトの帝国ホテルの一部が移築された「明治村」に行くことだった

この旅が序章となり私の「見たい心」に火が付き いよいよ本格的になっていった

次の年は岡山から山陰へと抜けて鳥取 そこから京都へというまさに電車の旅

その時に最初に降り立ったのが「智頭」だった

岡山県と接する中国山脈の山々が連なるこの町を見た時に「ひとり旅」のなんとも言えぬ充実感がこみあげてきたのを 今も思い出す

杉板を使った家々と見渡す限りの緑の山々 ほとんど人に会うこともなく 水量の少ない川にかかる橋を渡り 広い広い空の下をひとり歩くだけで興奮した

そして私は「石谷家住宅」の前に立った


あれを見たい ここを見なくては というリストの中では 私はそう期待をしていたというものでもなかった

そう知識の無い日本家屋でもあったし ただ旧街道の宿場町としてかつては栄えた町並みを 鳥取までの道中 せっかく途中下車できるのだから見ておこう そんな程度の気持ちしかなかった

だが 入口を一歩入って あの吹き抜けの土間の天井を見上げ その梁に目をやった途端 私はぶっ飛んだ

至るとところに感動の細工があり モダンであり 詳細は省くが とんでもなく素晴らしいものを見たのは確かだった

見終わってその門を出た時 関係者と思われる土地の人たちの話す言葉の中に「重要文化財」を聞き取った時には 検討中なのだろうかと思っていた

2008年の夏のことである

そしてその翌年 指定を受けた

その前に行っておいて良かったと思い そうなっても不思議の無いものであり いつまでもあの自然とともに美しく残って欲しいと願った


富岡製糸工場も私のリストの中に入っていたが なまじ近いばかりに機会のないまま世界遺産に登録されてしまった

見学者は爆発的に伸びたときいている

人ごみが苦手な私は 気持ちが半減している


「明治日本の産業遺産」の世界遺産登録への審査が始まっている

私はこれまで重文と言われるものは見ておきたいと思ってきたし また 実際に見れば確かに・・・と思うものが多かったのは事実だが そんな指定が無くとも同じくらい いや 時にはそれ以上と思えるものだって沢山あるのを知っている

負担や足枷からそうした申請をしたくないという所有者もいるだろうし 維持費や所有権の問題 町おこしとしてなんとかと願う人もいるだろう

経済的事情が絡むのも確か

そうした中で今回の審査に対し韓国の反対も強いと言うが そもそも私はこうした肩書を苦手とするので 別に世界遺産じゃなくたっていいじゃないかと考える

ラジオで聞いたところ 安倍さんの幼少時代からの友人である女性がアメリカで産業都市に関する研究をしているそうで その彼女がもうかなり前に安倍さんにこの話を持ちかけていたとか


世界遺産ってなんだ って思ってしまう

そういう権威付けが無いと守れないようなものであるならば それはそもそもがそういう運命 

その時代に生きている人間の価値観が反映されるだけのこと

誰かがスポットを当て それに価値を見出し より多くの人が存在を知り そこから派生するあらゆる方面に対してひとが幸せになるような研究なり知識が生まれ 感動を呼び 結果 われわれの遺産として守っていこうと自然発生的に育っていくことが一番大事なのではないか

だから 格付けなんてなくても 郷土の風土や歴史 あらゆる文化だって大事な人類の遺産のはずだし それを発信していくだけでいいんじゃないの

誰かにとっての遺産が 別の誰かにとってはつまらないゴミにしか思えなかったり もっと金儲けに使おうよと思えたり 憎しみの対象でしかないことだってありえるんだし


どんな格付けを戴いた遺産であれ 天災だけでなく 戦争やテロや内紛といった人災が起これば そんなものはひとたまりも無く消えることもある

世界的な規模で そして長い人類の歴史の中で 政権の交代や宗教による弾圧 民族間や国家間の争いにより貴重な文化の破壊などは数多くあったことだ


「石谷家住宅」は素晴らしかった

現存し 比較的最近まで実際に住居として使用されており 今は蔵も含めて有効に活用されている

土間には 今日とれた新鮮な野菜がかごに置かれてあり 自由に持っていけるようになっていた

土地の歴史とともに生き この地の自然の中にあるからこそ 美しかった

重文になろうとなかろうと 私には関係の無いこと

それまで知らなかった「智頭」という町の名前は それ以降私の中に大きく刻み込まれた

私にとって 数多くある世界遺産のひとつ

それ以上でも以下でもない 
コメント (12)
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