私のフィアンセはとてもいやらしい。
「指でイかせるあいだ、俺の乳首をずっと舐めているんだ」
そして、いじわる。
「だんだんこっちの穴も感じるようになってきたみたいだな」
その上、優しい。
「おいで。髪を洗ってやるから」
彼と久しぶりに会って、えんえんとベッドに拘束される至福のとき。
幸福すぎて、気が遠くなる。
現実の世界にしがみつくために、私は懇願する。
「おねがい、イクときずっとキスしていて」
お願いだからと言うと、彼はちょっと照れくさそうに、困ったように笑みを湛えて私に口づけを刻む。
絶頂のあいだじゅう。
俺のフィアンセは、割と貪欲。
挿入をじらして可愛がってやると、それだけで達してしまうこともしばしばだ。その後結合して再度存分にエクスタシーを貪る。
一晩で、5回も、という夜もあった。
そして、予想以上に淫乱。
「口の中に出してもいいですよ」とフェラチオのとき目で微笑まれると、ひとたまりもない。
保たない。
その上、途轍もなく可愛らしい。
耳が弱いことを知っているので、舌先を挿入したり耳介を嘗め回してやると、いい声でよがって鳴き狂う。
「だめ、和哉さん。耳だけで、イっちゃう、っ……」
そんな可愛いことを言われたら、リクエストに応えないわけにいかない。
ふんだんに淫語と吐息と愛のささやきを吹き込む。すると夕子は俺の腕の中痙攣を繰り返し、いちど四肢に力をぐんと漲らせては、全てを身のうちから発散させる。
エクスタシーの表情には、なんともいえぬ淫蕩さが漂う。
堪らない。狂わされる。
――これは、清田和哉二曹と吉川夕子三曹の婚約期間のお話。二人は駐屯地が南北に離れているため、遠距離恋愛を余儀なくさせられていた。
結婚を前提に付き合うことになって、遠距離で何が一番困るかといって、結納や式場探し、披露宴の席次の打ち合わせなど、結婚に向けて準備だった。むろん、ひと月にいっぺんは顔を合わせて相談を重ねていたが、会うとどうしても相手の肌が恋しくなってしまい、会えないで我慢している時間も追い討ちをかけて、ホテルで身体を重ねることに没頭してしまいがちだった。もう若くないのに気恥ずかしいなと清田は思うのだが、自然の欲求なのだから仕方がない。相談事はサスペンディッドのまま互いの基地に戻り、結局電話でやっつける。その繰り返しだった。
しかし電話では埒が明かないことが多々ある。清田としては、花嫁の一存に従う心積もりがあったのだが、それを吉川が嫌った。いつだったか、深夜の電話でこう言われた。
「結婚は、ふたりのものでしょう。私だけのお式じゃない。そんな他人事みたいに話さないで」
痛いところを突かれ、清田は言葉が出なかった。それきり電話は途切れた。掛け直しても、出てはくれなかった。
二週間、吉川の携帯は不通になった。その間、清田は朝な夕なに何度も掛けた。着信拒否になっていないことが、せめてもの救いだった。
出てはくれなくても履歴は残る。そう思い、ひたすら電話した。
きっかり二週間後、ようやく吉川が通話ボタンを押してくれた。でも、無言。息遣いも聞こえない。目に見えない静寂に向かって清田は話しかけた。
ごめん。俺が悪かった。もうお前を傷つけることはしないから許して欲しい。誠心誠意、詫びた。
たっぷり数分、沈黙が続いた。沈黙が耳に痛いものだと清田はその時初めて知った。
やがて、かすかな嗚咽とともに、懐かしい吉川の声が、携帯から漏れ聞こえた。
「会いたい。和哉さん、離れているの、もうイヤ。すぐ会いたい」
それが、遠距離を承知で付き合いだした、どんな訓練にも上官のシゴキにも音を上げなかった、気丈な吉川の初めての涙だった。
清田は即答した。もう居ても立ってもいられなかった。
「分かった。会おう。有給と新幹線のチケットを取るんだ、明日一番に」
深夜で、終電もとっくに終わっている時間帯でなければ、すぐにでも電車に飛び乗って、吉川の元へ駆けつけていたに違いない。間違いなく。
北関東の山間にあるひなびた温泉街。それぞれの駐屯地から駆けつけ、とある温泉宿で落ち合った二人。部屋に案内してくれた仲居が出て行くなり、二人は抱き合った。
荷物もコートも放り出して、唇を貪りあう。
「……、」
「う、……っん」
ドアが閉まるか閉まらないかというところで、確かに廊下にまだ人の気配があった。しかしそんなものに構ってはいられなかった。
ああ……。吉川の唇から漏れる吐息はまるで美しい色が施されているようにかぐわしい。清田は無我夢中で吉川の口を吸い、ねぶり、甘噛みした。
「和哉さん。――和哉さん」
会いたかったという思いが溢れすぎて言葉にならない。
涙をいっぱいに溜めた瞳が自分を捉えており、清田は名前を呼ぶ余裕もなく吉川のカットソーの前ボタンを外しにかかる。
ぴったりと身体にフィットしたデザインのため、バストラインがくっきり浮かび上がっている。心なしか、この前抱いたときよりもふくよかになっている気がした。
堪らない。左右に袷を開くと、薄ピンクのブラが覗く。
その間に吉川も清田の股間に手を伸ばし、ファスナーをずり下ろしていた。しなやかな指がトランクスの中の宝物を探り当て、右手でリズミカルに刺激を与え出す。唇は求めあったまま。吉川はすべて手探りでそれらを行った。
(このつづきは、新春発売予定のオフ本「Paradise」にて)
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「指でイかせるあいだ、俺の乳首をずっと舐めているんだ」
そして、いじわる。
「だんだんこっちの穴も感じるようになってきたみたいだな」
その上、優しい。
「おいで。髪を洗ってやるから」
彼と久しぶりに会って、えんえんとベッドに拘束される至福のとき。
幸福すぎて、気が遠くなる。
現実の世界にしがみつくために、私は懇願する。
「おねがい、イクときずっとキスしていて」
お願いだからと言うと、彼はちょっと照れくさそうに、困ったように笑みを湛えて私に口づけを刻む。
絶頂のあいだじゅう。
俺のフィアンセは、割と貪欲。
挿入をじらして可愛がってやると、それだけで達してしまうこともしばしばだ。その後結合して再度存分にエクスタシーを貪る。
一晩で、5回も、という夜もあった。
そして、予想以上に淫乱。
「口の中に出してもいいですよ」とフェラチオのとき目で微笑まれると、ひとたまりもない。
保たない。
その上、途轍もなく可愛らしい。
耳が弱いことを知っているので、舌先を挿入したり耳介を嘗め回してやると、いい声でよがって鳴き狂う。
「だめ、和哉さん。耳だけで、イっちゃう、っ……」
そんな可愛いことを言われたら、リクエストに応えないわけにいかない。
ふんだんに淫語と吐息と愛のささやきを吹き込む。すると夕子は俺の腕の中痙攣を繰り返し、いちど四肢に力をぐんと漲らせては、全てを身のうちから発散させる。
エクスタシーの表情には、なんともいえぬ淫蕩さが漂う。
堪らない。狂わされる。
――これは、清田和哉二曹と吉川夕子三曹の婚約期間のお話。二人は駐屯地が南北に離れているため、遠距離恋愛を余儀なくさせられていた。
結婚を前提に付き合うことになって、遠距離で何が一番困るかといって、結納や式場探し、披露宴の席次の打ち合わせなど、結婚に向けて準備だった。むろん、ひと月にいっぺんは顔を合わせて相談を重ねていたが、会うとどうしても相手の肌が恋しくなってしまい、会えないで我慢している時間も追い討ちをかけて、ホテルで身体を重ねることに没頭してしまいがちだった。もう若くないのに気恥ずかしいなと清田は思うのだが、自然の欲求なのだから仕方がない。相談事はサスペンディッドのまま互いの基地に戻り、結局電話でやっつける。その繰り返しだった。
しかし電話では埒が明かないことが多々ある。清田としては、花嫁の一存に従う心積もりがあったのだが、それを吉川が嫌った。いつだったか、深夜の電話でこう言われた。
「結婚は、ふたりのものでしょう。私だけのお式じゃない。そんな他人事みたいに話さないで」
痛いところを突かれ、清田は言葉が出なかった。それきり電話は途切れた。掛け直しても、出てはくれなかった。
二週間、吉川の携帯は不通になった。その間、清田は朝な夕なに何度も掛けた。着信拒否になっていないことが、せめてもの救いだった。
出てはくれなくても履歴は残る。そう思い、ひたすら電話した。
きっかり二週間後、ようやく吉川が通話ボタンを押してくれた。でも、無言。息遣いも聞こえない。目に見えない静寂に向かって清田は話しかけた。
ごめん。俺が悪かった。もうお前を傷つけることはしないから許して欲しい。誠心誠意、詫びた。
たっぷり数分、沈黙が続いた。沈黙が耳に痛いものだと清田はその時初めて知った。
やがて、かすかな嗚咽とともに、懐かしい吉川の声が、携帯から漏れ聞こえた。
「会いたい。和哉さん、離れているの、もうイヤ。すぐ会いたい」
それが、遠距離を承知で付き合いだした、どんな訓練にも上官のシゴキにも音を上げなかった、気丈な吉川の初めての涙だった。
清田は即答した。もう居ても立ってもいられなかった。
「分かった。会おう。有給と新幹線のチケットを取るんだ、明日一番に」
深夜で、終電もとっくに終わっている時間帯でなければ、すぐにでも電車に飛び乗って、吉川の元へ駆けつけていたに違いない。間違いなく。
北関東の山間にあるひなびた温泉街。それぞれの駐屯地から駆けつけ、とある温泉宿で落ち合った二人。部屋に案内してくれた仲居が出て行くなり、二人は抱き合った。
荷物もコートも放り出して、唇を貪りあう。
「……、」
「う、……っん」
ドアが閉まるか閉まらないかというところで、確かに廊下にまだ人の気配があった。しかしそんなものに構ってはいられなかった。
ああ……。吉川の唇から漏れる吐息はまるで美しい色が施されているようにかぐわしい。清田は無我夢中で吉川の口を吸い、ねぶり、甘噛みした。
「和哉さん。――和哉さん」
会いたかったという思いが溢れすぎて言葉にならない。
涙をいっぱいに溜めた瞳が自分を捉えており、清田は名前を呼ぶ余裕もなく吉川のカットソーの前ボタンを外しにかかる。
ぴったりと身体にフィットしたデザインのため、バストラインがくっきり浮かび上がっている。心なしか、この前抱いたときよりもふくよかになっている気がした。
堪らない。左右に袷を開くと、薄ピンクのブラが覗く。
その間に吉川も清田の股間に手を伸ばし、ファスナーをずり下ろしていた。しなやかな指がトランクスの中の宝物を探り当て、右手でリズミカルに刺激を与え出す。唇は求めあったまま。吉川はすべて手探りでそれらを行った。
(このつづきは、新春発売予定のオフ本「Paradise」にて)
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鋭意作成中ですので今しばらくお待ちのほどを…
順調にいけば、バレンタインあたりには受付開始できるかと思います(順調にいきますように。。。拝)
あ~続きが気になる~!!って感じですww
今回も素敵な本が出来上がりそうですね(^w^)