「高科三昧」には、完売した「ナニモイラナイ」「Encore」「FETISH」に収められている【ロールアウト】の二次三話と、以下の新作を収録予定です。
(前略)
高科さんは声を押し殺して言った。
「ほんとに綺麗です。俺の嫁さんが、こんなに美しい人だなんて信じられない」
「……あまり褒めると、油断しちゃうからだめ」
「油断?」
「気を抜いて大食いして太っちゃうとか。お肌のケアとかさぼっちゃうとか」
「大丈夫。たとえそうなっても俺の気持ちは変わりませんよ」
「ほんとう?」
あたしは額をくっつけて高科さんの目の奥を覗き込む。
彼は目を優しくカーブさせた。
「ほんとうです。あなたの外見も好きですが、中身はもっと好きですよ」
「でも、高科さん、初めて泊まったホテルで言ったわ。あたしの、そのう外見ももろ好みだって。ど真ん中だって」
自分で口にするとテれる。絵里は目線を泳がせた。
「そうですよ」
「だから、あたし、結構これでも頑張ってきたんですよ。ジムとかエステとか」
ずっと内緒にしてたけど、今このタイミングでなら打ち明けられる。あたしの言葉に高科さんは眉を片方持ち上げた。
「そうなんですか? すごいな」
「あ、でも結婚前の女はみんな割とするので。ほら、結婚式、一番美しいあなたでいるためにってうたい文句の企画がよくあるでしょう」
「でも努力したのに代わりはない。……絵里、もしかして」
そこで、息を詰める。
「今日具合が悪くなったのって、そのせいじゃないですよね。まさか無理がたたって、とか」
「違う。それは違います」
あたしは顔の前で手を小さく振った。誤解されちゃかなわない。
「全く別。それに無理するほど頑張ってないし。……体重もさほど落ちてませんし」
とほほ。最後のほうは小声。
ほっとしたように高科さんは微笑った。
「よかった。絵里はやせる必要なんかないですよ。今がちょうどいい」
そう言って唇を寄せる。
あたしの首筋に鼻先を押し当てた。ひやりと体温が低い。
「あ……」
氷でなぞられたように、あたしの思考が停止する。高科さんは小刻みにキスを送り出し、
「今の絵里がちょうどいい。いい抱き心地ですよ。出るところは出ていて、締まるところは締まって」
「高科さん……」
「あなたの身体、大好きです。っていうと問題発言ですか」
おどけて言う。
あたしは首を振った。
「そんなことはないです」
あたしの身体のどこが好き? 恥ずかしいけど思い切って聞いてみた。
「全部好きですよ。……ふっくらした胸も、細いウエストも、意外と大きいお尻も。脚がちょっと太いってコンプレックスに思ってるところも、全部好きです」
「ひど。最後は余計です」
かっとしてあたしは高科さんの肩をはたいた。
「ごめん。冗談です」
声を立てて笑う。
ん、もう。ばれてた。
コンプレックスに思ってたこと。見透かされてた。ふくれるあたしに、彼は啄ばむように口づけ。
「怒らないで下さい。でも怒ったあなたの顔も大好きですよ」
「……もお、高科さんてば、大安売りしすぎ」
結婚前にまさか全部出し尽くそうとしてません? あたしが喜ぶ言葉を。そう食ってかかると、
「そんなことはないです。俺は言葉が上手くない。あなたとそれが原因で揉めたことも結構ある。だからね、誓ったんです。口が上手くないんなら、言葉をおしまず口にしようって」
回数を惜しんじゃだめだって、あなたが教えてくれたんですよ。
あたしは目を見開いた。
「そう、なの」
高科さんは頷いた。
「俺が、少なくとも前より変わってるとしたら、それはあなたが変えてくれたんですよ。絵里」
「……」
嬉しくて、胸がいっぱいだった。
なぜかそのとき、あたしは、ほんとうにこの人のお嫁さんになるんだという実感が襲ってきて、くらくらした。
こんなに誠実にあたしに向き合ってくれた男の人はいない。
こんなに真摯で駆け引きひとつなく、まっすぐな心を向けてくれた人なんて、いなかった。
「……どうして泣くんです」
怪訝そうな顔で聞くから、あたしは目頭を押さえて笑った。
「ん。あなたが泣かせるんです。……嬉しくて」
ねえ、あたし、あなたのお嫁さんになりたい。早く。
一日も早く結婚したい。
そう言ってあたしは高科さんの首の後ろに両腕を回した。
高科さんは一瞬面食らった様子だったけど、すぐにあたしの背を抱きしめた。
はじめは躊躇いがちに、やがて堰を切ったように激しい力で抱擁される。
「絵里。もう我慢できない。抱いていいですか」
そしてあたしをソファのバックレストに押し倒す。
ふわりと盛り上がる裾に覆いかぶさるように高科さんがのしかかってきた。
「ウエディングドレスを着た絵里を抱けるのも、今日だけでしょう。初めてドレス姿見たときから、ずっとしたかったです」
あたしは動揺した。
「で、でも、ドレス、しわになっちゃう」
せっかく仕上がったばかりなのに、と膝を割って身体を沈めてこようとする高科さんの肩を押し返した。
「大丈夫。その辺は上手くやりますから。俺に任せて」
「任せて、って、うそ」
どうせなら脱がせて抱いて。思い切って言うと、高科さんは目を眇めた。
「なんてエッチなことを言うんです」
擦れ声で言う。
「だ、だって……」
たまらず目を逸らした。き、気まずい。
「ドレスを身に着けたあなたを抱きたいんです。花婿の最上の夢です。きっと今しか叶わない。どうか願いを受け入れてください」
「……でもきっと汚れちゃう。あたし、いっぱい感じて濡れるから」
最後の抵抗とばかりそう言うと、高科さんは余裕の笑みを浮かべた。
「あなたが汚したドレスを、結婚式に身にまとうと思うだけで勃ちそうだ。……いっぱい濡れて」
絵里、愛してます。
そして高科さんは総レースのドレスの裾を丁寧に捌いた。
(この続きはただいま製作中オフ本「高科三昧」で公開予定)
興味のある方は、下から一押しくださると嬉しいです。
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夜の部屋にて先取り連載公開。8月末発売まで期間限定でこの話を公開します。既に高科話をお持ちの方、最終話だけでも読みたいという方はブロマガ手続きを踏んでどうぞお読みください。
(前略)
高科さんは声を押し殺して言った。
「ほんとに綺麗です。俺の嫁さんが、こんなに美しい人だなんて信じられない」
「……あまり褒めると、油断しちゃうからだめ」
「油断?」
「気を抜いて大食いして太っちゃうとか。お肌のケアとかさぼっちゃうとか」
「大丈夫。たとえそうなっても俺の気持ちは変わりませんよ」
「ほんとう?」
あたしは額をくっつけて高科さんの目の奥を覗き込む。
彼は目を優しくカーブさせた。
「ほんとうです。あなたの外見も好きですが、中身はもっと好きですよ」
「でも、高科さん、初めて泊まったホテルで言ったわ。あたしの、そのう外見ももろ好みだって。ど真ん中だって」
自分で口にするとテれる。絵里は目線を泳がせた。
「そうですよ」
「だから、あたし、結構これでも頑張ってきたんですよ。ジムとかエステとか」
ずっと内緒にしてたけど、今このタイミングでなら打ち明けられる。あたしの言葉に高科さんは眉を片方持ち上げた。
「そうなんですか? すごいな」
「あ、でも結婚前の女はみんな割とするので。ほら、結婚式、一番美しいあなたでいるためにってうたい文句の企画がよくあるでしょう」
「でも努力したのに代わりはない。……絵里、もしかして」
そこで、息を詰める。
「今日具合が悪くなったのって、そのせいじゃないですよね。まさか無理がたたって、とか」
「違う。それは違います」
あたしは顔の前で手を小さく振った。誤解されちゃかなわない。
「全く別。それに無理するほど頑張ってないし。……体重もさほど落ちてませんし」
とほほ。最後のほうは小声。
ほっとしたように高科さんは微笑った。
「よかった。絵里はやせる必要なんかないですよ。今がちょうどいい」
そう言って唇を寄せる。
あたしの首筋に鼻先を押し当てた。ひやりと体温が低い。
「あ……」
氷でなぞられたように、あたしの思考が停止する。高科さんは小刻みにキスを送り出し、
「今の絵里がちょうどいい。いい抱き心地ですよ。出るところは出ていて、締まるところは締まって」
「高科さん……」
「あなたの身体、大好きです。っていうと問題発言ですか」
おどけて言う。
あたしは首を振った。
「そんなことはないです」
あたしの身体のどこが好き? 恥ずかしいけど思い切って聞いてみた。
「全部好きですよ。……ふっくらした胸も、細いウエストも、意外と大きいお尻も。脚がちょっと太いってコンプレックスに思ってるところも、全部好きです」
「ひど。最後は余計です」
かっとしてあたしは高科さんの肩をはたいた。
「ごめん。冗談です」
声を立てて笑う。
ん、もう。ばれてた。
コンプレックスに思ってたこと。見透かされてた。ふくれるあたしに、彼は啄ばむように口づけ。
「怒らないで下さい。でも怒ったあなたの顔も大好きですよ」
「……もお、高科さんてば、大安売りしすぎ」
結婚前にまさか全部出し尽くそうとしてません? あたしが喜ぶ言葉を。そう食ってかかると、
「そんなことはないです。俺は言葉が上手くない。あなたとそれが原因で揉めたことも結構ある。だからね、誓ったんです。口が上手くないんなら、言葉をおしまず口にしようって」
回数を惜しんじゃだめだって、あなたが教えてくれたんですよ。
あたしは目を見開いた。
「そう、なの」
高科さんは頷いた。
「俺が、少なくとも前より変わってるとしたら、それはあなたが変えてくれたんですよ。絵里」
「……」
嬉しくて、胸がいっぱいだった。
なぜかそのとき、あたしは、ほんとうにこの人のお嫁さんになるんだという実感が襲ってきて、くらくらした。
こんなに誠実にあたしに向き合ってくれた男の人はいない。
こんなに真摯で駆け引きひとつなく、まっすぐな心を向けてくれた人なんて、いなかった。
「……どうして泣くんです」
怪訝そうな顔で聞くから、あたしは目頭を押さえて笑った。
「ん。あなたが泣かせるんです。……嬉しくて」
ねえ、あたし、あなたのお嫁さんになりたい。早く。
一日も早く結婚したい。
そう言ってあたしは高科さんの首の後ろに両腕を回した。
高科さんは一瞬面食らった様子だったけど、すぐにあたしの背を抱きしめた。
はじめは躊躇いがちに、やがて堰を切ったように激しい力で抱擁される。
「絵里。もう我慢できない。抱いていいですか」
そしてあたしをソファのバックレストに押し倒す。
ふわりと盛り上がる裾に覆いかぶさるように高科さんがのしかかってきた。
「ウエディングドレスを着た絵里を抱けるのも、今日だけでしょう。初めてドレス姿見たときから、ずっとしたかったです」
あたしは動揺した。
「で、でも、ドレス、しわになっちゃう」
せっかく仕上がったばかりなのに、と膝を割って身体を沈めてこようとする高科さんの肩を押し返した。
「大丈夫。その辺は上手くやりますから。俺に任せて」
「任せて、って、うそ」
どうせなら脱がせて抱いて。思い切って言うと、高科さんは目を眇めた。
「なんてエッチなことを言うんです」
擦れ声で言う。
「だ、だって……」
たまらず目を逸らした。き、気まずい。
「ドレスを身に着けたあなたを抱きたいんです。花婿の最上の夢です。きっと今しか叶わない。どうか願いを受け入れてください」
「……でもきっと汚れちゃう。あたし、いっぱい感じて濡れるから」
最後の抵抗とばかりそう言うと、高科さんは余裕の笑みを浮かべた。
「あなたが汚したドレスを、結婚式に身にまとうと思うだけで勃ちそうだ。……いっぱい濡れて」
絵里、愛してます。
そして高科さんは総レースのドレスの裾を丁寧に捌いた。
(この続きはただいま製作中オフ本「高科三昧」で公開予定)
興味のある方は、下から一押しくださると嬉しいです。
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夜の部屋にて先取り連載公開。8月末発売まで期間限定でこの話を公開します。既に高科話をお持ちの方、最終話だけでも読みたいという方はブロマガ手続きを踏んでどうぞお読みください。
ロールアウトの2人大好きなので、実は前の三作も順番に読み返したくて何度も引っ張り出してますww
発売楽しみに待ってます(^w^)
高科スキーがいましたねv うれし~です。
有川先生の二次を書くとき、何作まで書こうとか目算を立てるわけでないので、あちこちの冊子に散らばっててすみません。。。
一冊に読みやすくまとめたいと思ってますので、その際はよろしくお願いします。
待ってます!
二次創作、あちこち書いたものの整理をばと…
お盆明けに出来上がるのかな? ブロマガで先行公開してますので、手続きをなさってる方は最後までどうぞです。
さすがに恥ずかしいな。。。と思ったのですが、
内容をどうせ見られるなら、同じか、と思い、
これに決定しました(爆)←死語表現
堪能いただけて書いた甲斐があるというものです。有難うございました。
また、他にも書いて頂けませんか?
楽しみに待ってます!