12月31日は、いつもよりちょっと豪華な料理といいワインを用意するぐらい。
夕食の後で、リビングにみんな集まってカードゲームなどをしてすごす。
24時のカウントダウンを4人で見届けて、ハッピーニューイヤーを言い合ってめいめいの私室に引き取る。
あとは、夜更かしするもよし、趣味に没頭するもよし、次の日の朝は寝坊しても無礼講だというのが<ミネルバ>のデフォルトだ。
クリスマスパーティーを割と派手にやるので、年末はこのぐらいでいい。準備するアルフィンに負担を掛けまいとするジョウの提案で、ここ数年はこの形の年越しだった。
「そろそろ寝むか」
タロスとリッキーが気を利かせて、リビングを後にして数十分。
時計は24時30分を指している。
「んー。もうちょっと呑む」
アルフィンがほろ酔いでワインのボトルを傾けようとする。それを制止して、ジョウは「はい、もうおしまい」と彼女のグラスを撤収した。
「あん」
「そのぐらいにしとけ。明日に響くぞ」
「んー」
これでも、大分目こぼしした方。外の店で呑むと、しどけなく乱れる様を他の客に見せることになるから、ジョウは滅多にアルフィンに飲酒させない。深酒などもってのほかだ。ただ、今夜くらいは大目に見ようと、一年の労をねぎらおうと許容していた。自分の目の届く範囲でならいいだろうというのもあった。
アルフィンは今夜は水色のモヘアのニットセーター。オーバーサイズのものをオフショルダーにしてだぶっと着崩している。膝上の丈に、黒のスパッツを合わせ、足は素足で赤いペディキュアが綺麗に施されていた。
ひじょうに俺好みのファッションだ。横目で伺いながら、
「後は俺が片しておくから、ちゃんと部屋に行って寝ろよ」
ジョウは言った。
床用のお掃除ロボットをセットし、自分ではゴミ袋を開いてローテーブルの上の食べこぼしや紙皿やごみなどを手際よく片付けていく。
「わ、ジョウありがとう! 大好き」
アルフィンが破顔した。面倒だなと思っていたのだ。後始末。
みんなでわいわいやるのは楽しいけれど、お掃除がねえとため息を漏らしているのをジョウは知っていた。
「大好きって、……そこかよ」
とほほ。ジョウは肩をすくめる。
後片付けをしてくれるから大好きか。嬉しくなくもないが複雑な心境だ。
アルフィンは、あっと口を押さえて、慌てて中腰になった。
「ち、ちがう。そうじゃないのーーそういうとこ「も」好きよ」
がさ……。ジョウの、ゴミ袋を握る手に力がこもる。
「ふーんソウデスカ」
わざと背を向けて平坦な声で返す。「どうせ俺はクラッシャーよりお掃除屋のほうに才能を発揮するみたいですからね」
アルフィンはますますあせってジョウの背中にまとわりついた。
「拗ねないで。そんな意味で言ってるわけないでしょ。
ジョウの、こういう優しいところが好き。いつも気を遣ってくれるところ。あたしがお酒をオーバーペースで飲まないように、途中途中でお水を飲ませてくれるところも好き。自分も呑んでるくせに、気に掛けてくれるところ、大好き」
「……」
「ま、まだ機嫌直してくれないの?――」
ここまで言ったのに。アルフィンはジョウのカットソーの裾をきゅっと握った。
ジョウはテーブルを片付ける手を動かしながら、アルフィンを見ずに
「もうちょっと続けてくれたら直る」
と言った。
アルフィンは、んもう、と地団駄踏みたくなった。
面倒くさい。完璧、こじらした。
でも、気を取り直して、
「ジョウの、働いてるところ、かっこよくて大好き。仕事にプライドをもってるところ、どんなトラブルに見舞われても途中で投げ出さないところも好きよ。オンのあなたも、オフのあなたも大好き。とても頼りになる。頼もしい」
「……」
「ル、ルックスも、とても好き。筋肉質な身体もーー腹筋が割れていてセクシーなところも、あたしを軽々と抱き上げちゃう腕のたくましさも、腰のがっしりした感じも、とても……。かっこいいなあってうっとりしちゃう。身長も大きいし、脚も長いし、スタイルがとてもよくて、何を着ても似合うわ。
顔も……ハンサムで、とても私好み。今風の優男ではないけど、ワイルドな感じがとても男らしい。大好き」
中身も外見も大好きよ。
アルフィンは必死に言い立てた。何で深夜、こんなに好きな男の長所を本人に向かって力説しているのだろうとふと疑問に思ったけれど、アルコールのせいでうまく頭が回らない。
今はジョウの曲がったへそを元の位置に戻すことが、彼女にとって最優先ミッションだった。
黙って背中を向けていたジョウだったが、ふとそこで、アルフィンは気づいた。
「……ジョウ」
耳が。両方の耳が、真っ赤……。
なによ。知らんぷりして聞いてるかどうかもわからなかったけれど、実はめちゃくちゃ照れてるのね。
可愛い。
ふふ、と微笑がこみ上げる。
アルフィンはぴとっとジョウの背中にくっついた。バックハグ。
「あ、こら」
テーブルの上をせっせと拭いていたため、ジョウの両手はふさがっている。
それをいいことに、アルフィンはよりいっそう彼との距離を詰めた。
「ジョウ、大好き。新年おめでとう、今年もよろしくね」
うふふと機嫌良く頬ずりをする。
さっき日付が変わるときも言ったけど、何度でも言いたい。
ハッピーニューイヤー。ジョウ。
散らかったテーブルを片してくれる私の王子様。酒は飲んでも飲まれるなと標語めいたことを口にする心配屋のダーリン。
大好き。
アルフィンはそのままくうくう寝落ちしてしまう。
ジョウにひっついたまま。
「あー……」
ジョウはぴかぴかに拭き上げたテーブルから目を離し、背後を振り向いた。
アルフィンが自分を抱きしめたまますうすう寝息を立てている。
「やれやれ」
ほう、と肩で息をつく。
大好きのオンパレードを新年早々アルフィンの口から聞くことが出来た。
これは幸先のよいスタートを切れたということかもしれない。
「まったく。言い逃げかよ」
自分ばっかり気持ちよさそうにべらべら並べ立てやがって……ちぇ。肩越しに見たアルフィンは完落ちして起きる気配もない。
くそ。寝顔まで可愛いな。
愚痴ったジョウの耳たぶがまた赤くなる。
まあ、これからもずっと一緒だ。また機会はあるだろう。
チャンスがあれば、話すことにしよう。俺がアルフィンを大好きな理由を。
今夜、君が伝えてくれたように。
「新年おめでとうアルフィン。末永くよろしくな」
ジョウはアルフィンに囁いて、そのまま背中に彼女を乗せて立ち上がった。
おぶって彼女の船室まで運ぶ。
ベッドに横たえられ、夢心地の中、アルフィンは頬に温かいキスを受けたような気がしたーー。
A HAPPY NEW YEAR JOE&ALFIN!
END
今年の二次書き納めはやはりこのCPで。
私の二次創作の原点です。今年もありがとう。
夕食の後で、リビングにみんな集まってカードゲームなどをしてすごす。
24時のカウントダウンを4人で見届けて、ハッピーニューイヤーを言い合ってめいめいの私室に引き取る。
あとは、夜更かしするもよし、趣味に没頭するもよし、次の日の朝は寝坊しても無礼講だというのが<ミネルバ>のデフォルトだ。
クリスマスパーティーを割と派手にやるので、年末はこのぐらいでいい。準備するアルフィンに負担を掛けまいとするジョウの提案で、ここ数年はこの形の年越しだった。
「そろそろ寝むか」
タロスとリッキーが気を利かせて、リビングを後にして数十分。
時計は24時30分を指している。
「んー。もうちょっと呑む」
アルフィンがほろ酔いでワインのボトルを傾けようとする。それを制止して、ジョウは「はい、もうおしまい」と彼女のグラスを撤収した。
「あん」
「そのぐらいにしとけ。明日に響くぞ」
「んー」
これでも、大分目こぼしした方。外の店で呑むと、しどけなく乱れる様を他の客に見せることになるから、ジョウは滅多にアルフィンに飲酒させない。深酒などもってのほかだ。ただ、今夜くらいは大目に見ようと、一年の労をねぎらおうと許容していた。自分の目の届く範囲でならいいだろうというのもあった。
アルフィンは今夜は水色のモヘアのニットセーター。オーバーサイズのものをオフショルダーにしてだぶっと着崩している。膝上の丈に、黒のスパッツを合わせ、足は素足で赤いペディキュアが綺麗に施されていた。
ひじょうに俺好みのファッションだ。横目で伺いながら、
「後は俺が片しておくから、ちゃんと部屋に行って寝ろよ」
ジョウは言った。
床用のお掃除ロボットをセットし、自分ではゴミ袋を開いてローテーブルの上の食べこぼしや紙皿やごみなどを手際よく片付けていく。
「わ、ジョウありがとう! 大好き」
アルフィンが破顔した。面倒だなと思っていたのだ。後始末。
みんなでわいわいやるのは楽しいけれど、お掃除がねえとため息を漏らしているのをジョウは知っていた。
「大好きって、……そこかよ」
とほほ。ジョウは肩をすくめる。
後片付けをしてくれるから大好きか。嬉しくなくもないが複雑な心境だ。
アルフィンは、あっと口を押さえて、慌てて中腰になった。
「ち、ちがう。そうじゃないのーーそういうとこ「も」好きよ」
がさ……。ジョウの、ゴミ袋を握る手に力がこもる。
「ふーんソウデスカ」
わざと背を向けて平坦な声で返す。「どうせ俺はクラッシャーよりお掃除屋のほうに才能を発揮するみたいですからね」
アルフィンはますますあせってジョウの背中にまとわりついた。
「拗ねないで。そんな意味で言ってるわけないでしょ。
ジョウの、こういう優しいところが好き。いつも気を遣ってくれるところ。あたしがお酒をオーバーペースで飲まないように、途中途中でお水を飲ませてくれるところも好き。自分も呑んでるくせに、気に掛けてくれるところ、大好き」
「……」
「ま、まだ機嫌直してくれないの?――」
ここまで言ったのに。アルフィンはジョウのカットソーの裾をきゅっと握った。
ジョウはテーブルを片付ける手を動かしながら、アルフィンを見ずに
「もうちょっと続けてくれたら直る」
と言った。
アルフィンは、んもう、と地団駄踏みたくなった。
面倒くさい。完璧、こじらした。
でも、気を取り直して、
「ジョウの、働いてるところ、かっこよくて大好き。仕事にプライドをもってるところ、どんなトラブルに見舞われても途中で投げ出さないところも好きよ。オンのあなたも、オフのあなたも大好き。とても頼りになる。頼もしい」
「……」
「ル、ルックスも、とても好き。筋肉質な身体もーー腹筋が割れていてセクシーなところも、あたしを軽々と抱き上げちゃう腕のたくましさも、腰のがっしりした感じも、とても……。かっこいいなあってうっとりしちゃう。身長も大きいし、脚も長いし、スタイルがとてもよくて、何を着ても似合うわ。
顔も……ハンサムで、とても私好み。今風の優男ではないけど、ワイルドな感じがとても男らしい。大好き」
中身も外見も大好きよ。
アルフィンは必死に言い立てた。何で深夜、こんなに好きな男の長所を本人に向かって力説しているのだろうとふと疑問に思ったけれど、アルコールのせいでうまく頭が回らない。
今はジョウの曲がったへそを元の位置に戻すことが、彼女にとって最優先ミッションだった。
黙って背中を向けていたジョウだったが、ふとそこで、アルフィンは気づいた。
「……ジョウ」
耳が。両方の耳が、真っ赤……。
なによ。知らんぷりして聞いてるかどうかもわからなかったけれど、実はめちゃくちゃ照れてるのね。
可愛い。
ふふ、と微笑がこみ上げる。
アルフィンはぴとっとジョウの背中にくっついた。バックハグ。
「あ、こら」
テーブルの上をせっせと拭いていたため、ジョウの両手はふさがっている。
それをいいことに、アルフィンはよりいっそう彼との距離を詰めた。
「ジョウ、大好き。新年おめでとう、今年もよろしくね」
うふふと機嫌良く頬ずりをする。
さっき日付が変わるときも言ったけど、何度でも言いたい。
ハッピーニューイヤー。ジョウ。
散らかったテーブルを片してくれる私の王子様。酒は飲んでも飲まれるなと標語めいたことを口にする心配屋のダーリン。
大好き。
アルフィンはそのままくうくう寝落ちしてしまう。
ジョウにひっついたまま。
「あー……」
ジョウはぴかぴかに拭き上げたテーブルから目を離し、背後を振り向いた。
アルフィンが自分を抱きしめたまますうすう寝息を立てている。
「やれやれ」
ほう、と肩で息をつく。
大好きのオンパレードを新年早々アルフィンの口から聞くことが出来た。
これは幸先のよいスタートを切れたということかもしれない。
「まったく。言い逃げかよ」
自分ばっかり気持ちよさそうにべらべら並べ立てやがって……ちぇ。肩越しに見たアルフィンは完落ちして起きる気配もない。
くそ。寝顔まで可愛いな。
愚痴ったジョウの耳たぶがまた赤くなる。
まあ、これからもずっと一緒だ。また機会はあるだろう。
チャンスがあれば、話すことにしよう。俺がアルフィンを大好きな理由を。
今夜、君が伝えてくれたように。
「新年おめでとうアルフィン。末永くよろしくな」
ジョウはアルフィンに囁いて、そのまま背中に彼女を乗せて立ち上がった。
おぶって彼女の船室まで運ぶ。
ベッドに横たえられ、夢心地の中、アルフィンは頬に温かいキスを受けたような気がしたーー。
A HAPPY NEW YEAR JOE&ALFIN!
END
今年の二次書き納めはやはりこのCPで。
私の二次創作の原点です。今年もありがとう。