ナナカマドの実が赤味を増した。山形では、ナナカマドが市の木になっているので、市が管理する公園にはたいていナナカマドの木が植えてある。この木は山で自生し、秋になるとその葉の紅葉が見事で、実は雪が降るころ真赤になるので、人気がある木だ。事実、赤い実の上にうっすらと雪が積もる景色は捨てがたい。
この木は燃えにくく、七度炭窯に入れても炭にならないのでこの名ついたという俗説がある。北海道にはナナカマドが多く、ヤチダモが混生している林ではみごとな紅葉の錦を織りなす。もっとも北海道で暮していた自分には、自然と触れ合う機会も少なく、せいぜい秋のヤマブドウ採りに行ったぐらいで、紅葉の美しさに心を打たれたのは山形の山に登るようになってからだ。
赤き実の一葉とどめずななかまど 水原秋桜子
この実を採取して果実酒にしたり、ジャムとしても利用される。とくに北ヨーロッパでは昔から利用されてきたらしい。
「ナナカマドの挽歌」という映画があった。零下30℃を超える真冬の大雪山山麓にある造材小屋に、飯炊き女として働く極貧の暮らしと、連続して起る不幸の物語である。主人公のヤエ子は母が自殺し、炭鉱を転々する父に育てられる。炭工夫と結婚して一児を設けるが、夫は博打にのめりこんで家を顧みなくなる。こんな不幸のなかで、自殺未遂をおかすが、父に母の自殺の理由を聞いて、荒くれの工夫たちに入り混じって強く生きる姿が描き出される。
ナナカマドの赤い実には、落葉して淋しくなっていく山を彩る秋から冬にその存在感を増して行く。9月の山行は天候不順でまだ実現しないが、来週の浅草岳、10月に入っての紅葉狩りを兼ねた計画が楽しみだ。