30年ほども愛用してきた皮の山靴に別れるときがきた。皮の部分には問題ないのだが、底に何層にも貼ってあるゴムの接着が剥がれ、隙間が空いてしまった。30年来、初めて見る状態であったので、慌てて修理屋さんへ駈け込んだ。修理屋さんが言うには、全部剥いで見ないと分からないが、根幹の部分がやられていなければ、修理も可能とのこと。仲間の一人が言った。新しい靴を買うの?言外に、それほど長く歩けないのに、もう買わなくてもいいのでは。という意味も込められている。
結論は修理代ほどで買えるモンベルの新型である。ツオロミブーツワイド。防水性と通気性に優れた素材を使った優れものである。ソールも特殊な合成ゴムでできていて滑りにくいという特性もある。耐久性を聞いたところ、店長の話では5年はもつということであったので、自分のこれから山登りでは十分な長さのうようにも思える。しかし、長く愛用してきた皮の山靴にはいまだに愛着がある。皮は自分の足に馴染んで、形を保ってくれるので、いつまでも履き心地がいい。その上、最近仲間に入った人が靴を見て、こんな靴を履いている人はもういない、と褒めてもらったので、しっかり手入れをして履き続けようと思った矢先だったのでなおさらである。
山靴の音 芳野満彦
耳を澄ましてごらん
・・・ほら ね ね・・・
何処からか
古い記憶の
山靴の音が
聴こえてくる
ほら 僕の全身に
浸透わたるように・・・