柿の実がたわわに生った。山里では採る人もなく放置されたままになっている柿の木がたくさんある。冬眠のためにたくさん食べて、身体に脂肪をつける必要のある熊が、この柿を目指して人里に現れる。今年の特徴は、コロナ禍で、人の姿が少ないため、市街地に近い場所でも熊が目撃されている。先日のニュースで工場で作業中の人が背後から熊に襲われた。テレビが映しだした子連れの熊は、人か近くの杉林で、木登りして子熊を遊ばせていた。人家の辺りがもう熊の生活の場になりつつある。
熊は学習能力のある動物である。かって、熊を獲ることを生業とするマタギが山で活躍した時代は、人間は熊にとって恐怖の対象であった。人間の姿を見ると一目散に逃げるのが熊の習わしであった。だが、狩猟が少なくなった昨今では、もはや熊は人を見て怖がるということはない。山中に食べものが少ない年は、農家の作物や餌を狙って出没を繰り返す。秋田ではタケノコ採りの人が熊に襲われて命を落とすという事故が続出した。もはや、人が熊を見て怖がるという逆転現象が起きている。
山登りをする人々が熊除けのスプレーを持参することが多い。我々の山仲間でも、グループでひとつ熊スプレーを持参している。使いなれないスプレーを、目の前に現れた熊に有効に使用できるか、疑問は残るが、安心のために持参している。
熊の行動にを調べた研究がある。行動の目的はひとつ、食料を探すためだ。山中にクルミやブナの実が標準的な場合は40㌔㎡。メスで30㌔㎡、オスで50㌔㎡。子連れのメスの場合は20㌔㎡と狭くなる。山の食料が不作であれば、行動範囲は広く、50、60㌔㎡である。アメリカのアメリカ熊は、平均で170㌔㎡である。これはアメリカの植生がアメリカトドマツの単純なもので、食物となる植物が広く薄く存在しているためだ。日本はそれだけに、熊にとって住みやすい環境であるいうことが分かる。食物の豊富のな年は生殖も盛んで生まれる子熊の数も多い。熊の頭数が増えれば、不作の年はより多くの熊が里に下りてくる。学者の人が語っていたが、熊が人里に近づかない方法は、餌を採り難くする。柿の実を放置しておくなどは論外である。捕獲した熊には、数日犬に吠えたたせるなどして、恐怖体験をさせて山へ放つ。熊の学習能力を利用する方法である。