二つ森は尾花沢の西の集落母袋の奥、仙台との県境に近い双耳峰だ。放牧場の採草地の橋に登山口があり、沢筋を登って鞍部に至る。北に岩峰を見せる男山(742m)、南になだらかな女山(695m)。岩峰の男山には、岩登りのエキスパートだけが入山して、女山には家族連れで登る市民の憩いの山だ。このほど男山に藪を払い、岩峰を避ける登山道ができた。冬、雪の中を歩くのが定番のやまであったが、この情報を得て、男山の初登頂を試みた。
山の会も曲がり角にさしかかっている。高齢になって次第に登る山が少なくなっている人、積極的に挑戦する活動的な人たちの周りには新しい人たちが仲間に加わってくる。会の性格が変わりつつある。高齢の人たちが山を楽しむき機会を維持しながら、活動的な人たちも満足できる。二つを同時に満たすのは容易ではない。土曜という週末、山へ人が集中する日に山行を計画する必要が少なくなりつつある。平日で登りやすい山として選ばれたのが、尾花沢の里山である二ッ森だ。標高700mほど、女山までなら下山まで3時間足らずの登りやすい山だ。最高齢のkさんが参加したことで、メンバーは力を合わせて新しい男山の登りにとりかかる。
沢筋の道はしっかりと手入れされている。木や花の名を示す小さな標識。あたりは万緑という言葉ふさわしい、緑の渦だ。片隅にツツジの赤い花。「万緑叢中紅一点」とはまさしくこのことであろう。山の会は次第に女性の数が多くなっている。職を辞してから、活動的なのは女性だ。家で高齢の男性はどう日を過ごしているのだろうか、ちょっと興味がある。
岩峰の見える男山は、急な斜面を覆うように生えるブナの存在感に圧倒される。ブナの緑がもっとも美しい季節だ。藪からはウグイスの鳴き声が聞こえる。下草を刈って作られた登山道は急な坂が続く。所々に岩肌が露出し、この山が岩峰であることを思い出させる。急な斜面に取り付けられたロープ、坂の滑り止めに、土が足跡ほどにえぐられている。高齢の加藤さんは、このロープにつかまり、小さな笹をつかみ、這うようのして急坂を少しづつ登る。聞けば、今なお、近所にある小さな山歩きを毎朝1時間ほど歩くのだという。日常の生活習慣が、仲間との山歩きを可能にしている。雄山には、1時間ほどかけて全員が登った。本日の参加者9名、内男性3名。新しい仲間のkさんが加わった。鞍部に降りて、そこへ最高齢のkさんを残して女山に向かう。往復30分弱。心配された雨も、我々の行動を避けるように雲とともに去って行った。
万緑をかへり見るべし山毛欅峠 石田波郷