平成25年度の東北地区吟詠大会が、仙台市の市民会館で6月2日に行われた。日本詩吟学院の優秀吟者吟詠大会へ東北の代表を選ぶ大会である。漢詩・和歌・合吟の三部門で競われ、独吟漢詩が6名、和歌が6名、10人合吟は2チームの代表が決定した。私が参加した合吟の部の山形岳風会は選外になったが、山形岳風会の女子チーム、寒河江吟友会の女子チームが代表に選ばれた。
和歌の部で良寛の和歌「このごろ出雲崎にて」の課題を選んだ吟者は19名いたが、そのうち入賞者が3名、努力賞が3名で、和歌の部代表の半数を占めた。良寛の和歌が吟詠の世界でも愛されていることの証左であるだろう。良寛は専門の歌人でもなく、漢詩人でもなかった。だが、良寛の人間性がすべてその歌に読み込まれているから、その歌を読む者の心を捉えずにはおかないのであろう。
たらちねの母がかたみと朝夕に佐渡の島べをうち見つるかも 良寛
良寛の母秀子は、佐渡相川の山本家から、越後出雲崎の名主橘屋の養女となり、新木家の泰雄を養子に向かえ跡継ぎと良寛を産んだ。天明3年43歳で亡くなった母を偲ぶ歌だが、歌はそのまますんなりと読む者の心に入ってくる。
良寛にはこんな歌もある。
草の庵に足さしのべて小山田の山田のかはず聞くがたのしさ 良寛
単純平明であるが、声調には大らかな力がみなぎっている。この歌を何度も口づさんでいると、懐かしい故郷の風景が浮かんでくる。田植が終わった田で、蛙が合唱を始めた。この声を聞きながら良寛の心に触れて見るのも楽しいことである。
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