翁草の花が終わり、種は払子のような形になった。翁草の名は、この種子の形に由来しているのであろう。斉藤茂吉は花はもとより、この形をこよなく愛した。茂吉が生まれた金瓶の野山に多く自生したためでもある。茂吉は翁草を見るたびに、少年のころ遊んだ故郷に思いを馳せるのであった。
おきなぐさここに残りてにほへるをひとり掘りつつ涙ぐむなり 茂吉
終戦後、茂吉は故郷の金瓶を訪れ、翁草の咲くのを見たり、掘り起こして疎開先の大石田へ持っていった。光禅寺の庭で払子を振るように風に震える翁草を見ると、斉藤茂吉が愛して止まない理由が分る気がする。春の花たちはその花を終わらせ、代わってシロツツジや芍薬の華やかな初夏の花へと移っていく。
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