「ハコヅメ」原作漫画家・泰三子(やすみこ)さんは元警察官 現職時代、似顔絵捜査、そしてドラマを語る

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デイリー新潮取材班

「ハコヅメ」原作漫画家・泰三子さんは元警察官 現職時代、似顔絵捜査、そしてドラマを語る - ライブドアニュース

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 戸田恵梨香・永野芽郁のダブル主演で好評放送中の「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(日本テレビ系列)は、2回の特別編放送を経て、まもなく第5話の放送を迎える。原作の「ハコヅメ~交番女子の逆襲~」は、2017年11月より「モーニング」(講談社)で連載が始まり、作者の泰三子さんの元警察官という経歴から生まれたリアルな警察官あるあるが盛り込まれたお仕事コメディとして、多くの読者を獲得してきた。泰さんに、警察官時代の話やドラマに対する思いを聞いた。

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【写真を見る】抜群に美しい「ハコヅメ」豪華キャスト陣

 10年間にわたる県警勤務から漫画家への転身。作者の泰さんは、警察官を目指す人に「警察はしょうもない人が、ただただ一生懸命頑張っているだけ」だと伝えたいという思いから、それまでほとんど読んだことすら無かったという漫画の世界に飛び込んだ。こと漫画を描くことに関しては全くの専門外だったわけだが、とにかく描き上げて「モーニング」編集部に持ち込んだ。そして、「ハコヅメ」の掲載が決まると安定した公務員の職を捨て、“元警察官の漫画家”としてのキャリアをスタートさせた

 

「担当編集さんには、辞職を事後報告して唖然とされました。警察官の時は、国民や県民という全体のために不足なく仕事をしなければいけないというプレッシャーがありました。一方、漫画を描いている今は『読んでくださった方、全員に満足してもらえる漫画は私には描けない。だから誰かのためというより、自分が描くべきだと思ったことを優先して描こう』と、ある程度割り切った気持ちで仕事をしています」(同)

女性警察官は狭き門

「ハコヅメ」の主人公・川合麻依は、安定を求めて公務員試験を片っ端から受けた結果、唯一合格した警察官になった。ところが、あまりにも激務なことに加え、一般市民からは邪険に扱われる、いわば嫌われ者の仕事に嫌気が差し、辞職を決意するのだった。そこに、警察学校主席で元刑事課のエース・藤聖子が現れる。そんな2人がペアを組むところから物語は始まる。

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』最新18巻は、8月23日発売

「私が現職の頃は、採用枠が少ない女性警察官は狭き門だったので、どうしてもなりたい人たちが採用試験を勝ち抜いてなるしかありませんでした。あくまで私の肌感覚ですが、警察官全体では、川合のようにこれしか受からなかったという人も、警察官を目指して努力してなった人も、どちらも一定数いたと思います。まれに『特に理由はないけど、自分は警察官になるんだろうなと、物心ついた頃から思っていた』という人がいて、不思議なことにそういう人たちは、もれなく優秀な警察官でした」(同)

 少数派の女性警察官にとっては、特に難しい仕事であることは間違いない。

「警察学校時代、機動隊の装備をつけて、さらに盾まで持ってグラウンドを走り回らされたことがあって、その時は『こんなきつい訓練があるって知っていれば、警察官になんかならなかったのに』と後悔したこともあります」(同)

 川合と藤は、ハコ=交番で日々勤務をする。一般市民にとっては馴染みがあるようでいて、謎に包まれている交番の内情が「ハコヅメ」では描かれる。

「実は、交番勤務をしていた期間はとても短くて、在職中のほとんどは防犯活動や広報に携わる生活安全部門にいました。警察官になった当初は、特にやりたい部門があったわけではなく、どこに配属されようと、人よりちょっといい仕事をしようと考えていました。それが警察官になって4、5年経ったくらいから、広報関係に力を入れたいと思うようになりました。広報の仕事は、視線をそらしたくなるような強面の男の警察官達よりは、まだ私の方が有利だと気づいたからです」(同)

似顔絵捜査のやり方

 作中でその才能を見出される川合と同じく、泰さんは似顔絵捜査を行っていた。似顔絵捜査とは、一体どういったものなのだろうか。

「漫画家としては、絵が物凄く下手な部類なんですが、それでも警察官の中では絵が上手い方だったので似顔絵を描くよう指示されたんです。似顔絵捜査のやり方は、供述調書を書くのと同じような感じで、相手に顔の特徴や印象を細かく質問して、聞いたままを絵に描き、微調整を繰り返しながら、相手の頭の中にある対象者に近づけていく……という感じです。手書きの似顔絵ではなく、パソコン上で、できあいのパーツ絵の中から一番似ているものを選んで組み合わせ、対象者の顔に近づけていくという手法もありました。ただこの方法は、すごく断定的というか、しっかりした絵が出来上がってしまうせいで、あまり目撃情報が集まらず、捜査員たちには不評でした。似顔絵捜査は、単に絵の技術よりも、顔の特徴を聞く時の捜査員としてのセンスや力量の方が重要だというのが、大方の考え方でした」(同)

 交番勤務をはじめ、県警で様々な仕事を経験したのち、漫画家への転身を決めた。

「当時、自分なりに考えた防犯や交通安全に関する施策がいくつかあったのですが、あと1、2個階級を上げてからじゃないと、手がつけられないものばかりでした。そうすると、退官までに自分がするべきだと思っている施策をやりきれない。でも、これってよく考えると、警察官の身分じゃなくてもできるな、という考えに至り、思い切って辞めてしまいました。他にやりたい仕事は山ほどあったので、もしも漫画家として上手くいかなくても、その時は別の道で頑張ろうと思ったんです」(同)

 退職して漫画家になることは、同僚にも告げなかったという。

警察の仕事内容は家族にも言わないのが普通ですし、ましてや業務内容を漫画に描くというのは、情報漏洩の観点からみてもあまり歓迎されることだとは思いませんでした。理由を説明すれば、親しい同僚は分かってくれるかもしれないとも思いましたが、変に巻き込みたくなかったんです。だから、泣きながら引き留めてくれる同期生にも、理由を言わずに辞職の挨拶だけしました。今でも自分の描いたものが現場に迷惑をかけていないかということが、ものすごく気がかりです。だから、編集部に応援のメッセージや手紙をくださる読者の方々の中に、現職の警察官やOBの方も多くいらっしゃるということが、すごく嬉しいというか、ホッとします」(同)

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』の単行本の刊行は17巻を数え、来年にはアニメ化も決定している。漫画家として、順調なキャリアを築いていくさなかにあっても、泰さんは警察官時代の同期に思いを馳せることがあるという。

「苦楽を共にした同期生のほとんどは、今も治安維持の第一線で危険と隣り合わせの中、公務にあたっています。安全な部屋で仕事をしている時、ふと遠くからパトのサイレン音が聞こえてくると、『自分だけが逃げて来てしまった』というような感覚に陥ることがあるんです」(同)

戸田恵梨香は『すげえ……』

 泰さんは、似顔絵捜査に携わっていた時期に、テレビで芸能人を見てはどんな特徴があるかを観察していたという。その時に「似顔絵にするのが難しそう」と感じたのが、ドラマで藤を演じる戸田恵梨香だった。

「若い人と美形の人は、顔の特徴を言葉で描写しづらいようで、似顔絵捜査に協力してくださる方も、具体的な顔のパーツの特徴ではなく、その人の雰囲気や印象を証言することが多かったです。その証言だけでも不思議と似た似顔絵が出来上がることもあるのですが、戸田さんは役によって顔つきや雰囲気まで変わってしまうので、似顔絵を描くのは相当難しいと思います。もし今私が、『藤を演じている戸田さん』という事前情報なしに、第三者から特徴を教えてもらいながら、手探りで戸田さんの似顔絵を描くのだとしたら、結局はいつも私が描いている漫画の藤を描くことになると思います。それだけ戸田さんは、藤というキャラクターの空気感を捉えてくださっていると思います」(同)

 人気漫画の実写化となると、原作ファンからは厳しい目が向けられることも多い中、「ハコヅメ」放送開始後には〈好きな漫画の実写化が成功して嬉しいです〉、〈キャスティングとキャラの再現性は文句無しです〉などの声が上がった。

 では、主演の2人を泰さんはどう見るのだろうか。

「『原作者視点で感じる戸田恵梨香のすごさについて』は、論文レベルで書き連ねたいので、発表できそうな学会を見つけたら、是非教えてください! ここでは溢れる気持ちを語りつくせませんが、それくらい藤を演じる戸田さんのすごさを延々語っていたいです。ドラマの藤は原作より年齢が4歳上なので、以前、脚本を拝見した時には『私がこの年齢の藤にしゃべらせるなら、別の言い方をさせるけど、せっかく原作に忠実に作ってくださっているし……』と、僅かに不安を感じたこともありました。ところが、ドラマの戸田さんを見てみると、漫画から出てきた自然な藤なんです。キャラやストーリーに対する理解力だけでなく、それを人に伝える説得力が化け物のレベルなんだろうなと思います。ただただ『すげぇ……』と、魔法を見せられているような気持ちで毎回ドラマを見ています」(同)

 川合を演じる永野芽郁については、

「永野さんについては、『天才……!』と思いながら拝見しています。私が主人公の川合を描く時は、読者に感情移入して欲しいと思うので、表情のさじ加減にいつも悩まされています。だから、一番たくさん表情を描き直すのが川合なんです。それが川合を演じる永野さんは、息をするかのように、その場面での最善で最高の表情を出してしまう。心の動きを瞳の揺らめきだけで語ってしまう永野さんの演技が特に好きなんですが、私の画力ではマネができないので、そこはすごく悔しいです」(同)

満を持してのドラマ化

 実は、「ハコヅメ」にはこれまでに何度も映像化のオファーがあったという。

「単行本の1巻が出た頃には、様々なところから企画を頂いていました。ただ、『ハコヅメ』は性犯罪のようなセンシティブな内容も多くあるので、作品が自分の手を離れてしまうことに大変不安を感じていました。怒られてしまうかもしれませんが、当時は正直、ドラマ化の話なんて全部ポシャれと思っていたくらいです」(同)

 では、今回ドラマ化に至った理由は何だろうか。

「講談社には、著作権を管理するライツという部署があるのですが、当時の担当者だったT原さんが、それはもう、本気の『ハコヅメ』ファンの方で、作品の主題から外れるようなドラマ化の企画については、全て断ってくださっていたようです。T原さんのハコヅメ愛の強さに、『T原さんはいつか講談社に怒られるんじゃ……』と心配になる時もありましたが、作者としては、『いいぞ! T原さん!』と内心嬉しくもありました。そんなT原さんが、唯一私まで話を持ってこられたのが、今回ドラマ化となった日テレの企画でした。企画書を拝見した私の最初の感想は『この規模でやるの?』という感じで、豪華な俳優陣やプライムタイムでの放映に気後れしてしまいました。ただ、講談社と日テレの担当者が、どちらも原作を本当に大切に思ってくださっていて、丁寧に話を進めていただいたお陰で、なんとか作品を託す決心がつきました。根本ノンジ先生のプロの腕によって書かれた、笑いあり、涙ありの完成度の高い脚本を、素敵な俳優陣が抜群の演技で魅せてくださっているドラマです。セットや小道具の全てに、スタッフさんの愛と努力と技術が込められていて、本当に皆さんに見ていただきたい作品です。『ハコヅメ』は幸せな作品だと思います」(同)

 初回視聴率11.3%と好発進したドラマは、回を重ねても2ケタの高視聴率を維持している。ドラマの視聴者には、原作を読んでみたいと思う方も多いだろう。

「私が描いた原作漫画の方は、警察官しかやったことのないド素人がスマホの『漫画の描き方講座』を見ながら描いた作品です。連載準備期間中、『できるだけネーム(漫画の下書き)を描き貯めましょう』という担当編集さんの言葉を、『1日1話、毎日ネームを描け』という意味だと勘違いしてしまったため、単行本1巻分のネームは、なんの推敲も精査もしないまま、10日間で描いてしまっています。それくらい勢いで描いた漫画なので、今読み返すと、荒削りでかなり読みづらいです。もちろん、私自身は精一杯描きましたし、編集さんやスタッフさん、販売部など、たくさんの方々が関わって作り上げてくださった作品ですので、そういう人達の苦労に報いるためにも、多くの方に手に取っていただきたいと思っています。原作漫画に興味を持ってくださった方は、まず、低評価のレビュー等をある程度ご覧になった上で、無料公開されているものを試し読みしていただき、それでも大丈夫そうというか、許容範囲なら、是非ご購読を検討いただけると嬉しいです」(同)

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』その1 アンボックス(ハコから逃げろ)の試し読みはこちら
https://comic-days.com/episode/10834108156629726452

 

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