「投票したい政党がない」危機 

産経 論説委員長・乾正人

「投票したい政党がない」危機 

日曜の午後は、競馬の重賞レースがあるため、なるべく仕事を入れないようにしているのだが、19日は参院選を前に主要6党首が集まるというので、のこのこ芝公園にあるホテルまで出かけた。

財界、労働界、学界の有志約100人が参加して不断の改革実現を目指して発足した「令和国民会議(令和臨調)」が、キックオフ企画として招いたのだが、いろいろと感慨深かった。

何しろ防衛力増強に否定的な意見を述べたのが、6党中、日本共産党のみで、立憲民主党の泉健太代表でさえ「必要な防衛力は整備する」と言い出した。

安倍晋三政権時代の安保法制整備にあれほど反対していたのがウソのようだ。ロシアのウクライナ侵略が、いかに大きな影響を与えたかがよくわかる。

岸田文雄首相ら各党代表の発言は、真摯(しんし)でそれなりにまとまってはいたが、馬券を買うのを我慢するほどでもなかった。有権者を投票所に向かわせるだけの「熱」がどうも感じられなかったのだ。

日本をとりまく脅威の増大、急速に進む少子高齢化、一向に上がらぬ実質賃金などなど現代日本が抱える危機の深刻さは、誰しもがわかっている。だが、それらの危機から脱する具体的な処方箋をどの党も示せなかった。まぁ、そんな魔法のレシピがあったら、政府も与党も野党も苦労しないだろうが、世の中甘くない。

小泉純一郎氏の「郵政民営化」、今はなき民主党の「政権交代」という魔法の言葉に熱狂した結果、どんな結末を招いたかは有権者自身がよくわかっている。

そんな既成政党を尻目に、いま最も「熱」を感じるのが、泡沫(ほうまつ)政党視されていた参政党である。

「投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる」をキャッチフレーズに、ネット中心に運動を続けているが、新橋駅前などの街頭演説には立錐(りっすい)の余地がないほど支持者が詰めかけている。たまたま昼飯を食べに通りかかった我が先輩は、30分近く空腹を忘れて演説に聞き入ったという。

3年前の参院選は、投票率が50%を割り、投票に出かけた20歳代以下の若者は、3人に1人もいなかった。政治には関心があるが、投票したい政党はない、という人々に刺さる政策をどうして既成政党は打ち出せないのか。

空調の効いたホテルの片隅で、ついつい考え込んでしまった。

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