トランプの「イラン核合意」からの離脱、次に起こることは何か?

宮崎正弘の国際ニュース・早読み <トランプの「イラン核合意」からの離脱、次に起こることは何か?

仏トタルが撤退すれば「イランのガス油田開発利権」はCNPCが引き継ぐ

2015年に欧米とイランが合意に達した「イラン核合意」とは、究極的なイランの非核化ではなく、反対に将来のイランの核武装に含みを持たせるザル法に近い。トランプ政権の分析によれば、不用意極まりないものとされ、2025年以降には制限も段階的に解消されてしまう内容だった。
 なぜなら濃縮ウランの備蓄を減らすことしか謳われておらず、技術が保全される。弾道ミサイルの開発は制限されておらず、さらにはイラン系のテロリスト支援を制限できない。トランプは批判したように、「イラン核合意は絵空事」だったからである。

 しかしオバマが最終的に署名し、じつは欧米メジャーは欣快として一斉にイランに戻った欧米メジャーがイランの原油ならびにガス鉱区の開発に勤しんできた。イランと欧州諸国との貿易は十倍に膨らんだ。

 トランプは再びイランへの制裁強化に踏み切った。
そうなると自業自得になって欧米にはねかえる。だから反対論が欧州諸国には根強い。なぜなら開発途次の油田の利権を失いかねないからだ。
メルケルもマクロンも、トランプに対して執拗に「イラン核合意に復帰せよ」と呼びかけるのだ。

 だがトランプは正反対に制裁を強化した。離脱声明(5月8日)直後の10日にはUAEの9個人と団体にドル調達網を遮断するための制裁を講じた。在米の資産凍結がムニューチン財務長官から発表された。これはイランの革命防衛隊の中枢部隊とされる「コッズ部隊」がUEAの金融機関などにダミー口座を設け、イラク、シリア、レバノンなどの過激テロ組織に資金を流し、武器を調達したと見られるからである。

 すでに直撃を受けたのは仏トタル社。イランで開発途中の天然ガスプラントは10億ドル、この九割にあたる9億ドルを米銀からの借り入れで行ってきたため、事業の継続が危ぶまれる。はやくも仏トタルの利権は中国のCNPC(中国石油天然気集団)が引き受けると観測されている。

中国はイランにおいてい、「一帯一路」(BRI)プロジェクトの一環としてすでに鉄道工事を始めており、さらに昨年九月に100億ドルの信用供与を行った。イランと中国の貿易額は2017年度に370億ドルの実績がある。主として、中国への原油輸出である。

 しかしイランが核武装となれば、中東の軍事バランスは劇的に変わるだろう。
 イスラエルは80発以上の核兵器を保有すると観測されるが、イランが核武装に乗り出せば、サウジアラビアは瞬時に核武装できる。
なぜなら膨大な開発資金を供与してパキスタンに核武装させたうえ、そのうちの20%程度を、いつでもパキスタンはサウジへ渡すという秘密の合意があるからだ。パキスタンは現在、80−120発の核兵器を保有すると米国情報筋は推定している。

 中東地図はイランが支援するイラク、シリア、レバノンが反イスラエル闘争を繰り広げており、またイエーメンはイランとサウジアラビアの代理戦争の様相、カタールはサウジなど周辺国から貿易を遮断され孤立、これでシリアが片付けば、つぎにレバノンに戦火が飛び火する危険性が高い。

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