まるで押し売り…裁判所が決めた「監督人」に高額請求される家族急増

法律屋連中の失業対策 夢々 餌食にならないよう ご用心

問題はあったにせよ それなりに機能していた 戦前の家族制度を壊し 個人主義を強制したことに 起因

家族のことは家族が一番知っているはず そんなことは はなから無視します それで いいんですかね・・・

長谷川 学

まるで押し売り…裁判所が決めた「監督人」に高額請求される家族急増
成年後見人制度の知られざる闇

認知症の父母を抱えながら、後見人や保佐人としてうまくやってきた家族。そこに突然、裁判所から「監督人をつける」と理不尽な決定が下され、年間数十万円の報酬の支払いを求められる……。隠れた社会問題に迫る。

何の問題もない家族に裁判所が突然…

2025年、日本は「国民の3人に1人が65歳以上」という超高齢社会に突入する。

65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症に罹患すると見られ、2012年に462万人だった認知症高齢者の数は、2025年には1・5倍の700万人になる見通しだ。

政府は、判断能力が不十分な認知症高齢者を支えるため、2000年に「成年後見制度」をスタートさせた。だが、制度発足から17年が経ったいま、その運用面で問題が多発していることは、あまり知られていない。

筆者は、認知症や介護の問題を取材する中で、成年後見制度の運用が、水面下で大きな社会問題になりつつあると考えてきた。するとやはり、トラブルに見舞われた人々の悲鳴にも似た声が、次々と上がり始めたのだ。

たとえば、7月9日の朝日新聞朝刊の「オピニオン」欄に掲載された、64歳の主婦からの『母の財産管理 監督に14万円とは』という投書だ。これによると、投稿主の女性は4年前から認知症の母親の保佐人(認知症の症状が重い順に「後見人」、「保佐人」、「補助人」が裁判所の認定のもと、つけられる)をしていて、これまで何のトラブルも起こしたことがなかった。

ところが昨年7月、母親の資産や健康状態に変化がないにもかかわらず、家庭裁判所が「司法書士をあなたの監督人に選任した」と通知をしてきたという。女性が「監督人はいらない」と断ったにもかかわらず、家裁は結局、職権で監督人をつけてしまった

すると、監督人となった司法書士は、電話で数回と面会で一度のやりとりをしただけにもかかわらず、今年6月、報酬として14万円の支払いを要求してきたのだ。しかも、この14万円については家裁の承認も得ているという。

投稿した女性自身は、当然ながら、これまで無報酬で母親の保佐人を務めてきた。ところが母親のためになることをほとんど何もしていないにもかかわらず、司法書士は、母親の年金の2カ月分以上に当たる報酬の支払いを求めたのだ。ちなみに、監督人の報酬は母親の資産から払われる仕組みだ。

投稿者の女性は<問題ない家に訪問販売が来て、「いらない」と答えたのに簡単な目視点検で「14万円です」と言われたような感じです。監督人がついた理由の説明もなく、今までの努力が否定された思いです>と、家裁と司法書士の理不尽な対応に強い憤りを示している。

国と法律家を相手に市民は泣き寝入り

一体なぜこのような不可思議なことがまかり通っているのか。

成年後見制度の本来の目的は、認知症高齢者の財産を守り、高齢者の活動を手助けすることにある。ところが、家裁と司法書士が取った行動は、認知症高齢者の財産を理不尽に目減りさせるだけで、合理性がどこにもない。合理性がないからこそ、家裁は監督人をつけた理由を主婦に説明できないのだろう。

実はいま、水面下で、これと似たようなトラブルが多発している。その実態が表に出にくいのは、多くの市民が、家裁=国家と司法書士・弁護士ら法律家を相手にして、泣き寝入りしている現実があるからだ。

筆者は、投稿者の女性と同じようなトラブルに巻き込まれた人を、これまでに何人も取材している。

そもそも、家裁の元締めである最高裁家庭局は、親族が後見人や保佐人、補助人になると、認知症の人の預貯金を使い込む恐れがある、と見ている

そこで、認知症の人に一定の基準額以上の預貯金がある場合は、使い込み防止のために、二つの対策を取っている。

一つは、今回の投書のケースのような保佐人と補助人に対する対策で、使い込みができないように弁護士や司法書士といった第三者の監督人を監視役として、事実上強制的につけるもの。

もう一つが、親族後見人に対する対策である「後見制度支援信託」(後見信託)で、日常生活に使う金額以外は信託銀行に信託させ、家裁の承認なしに親族後見人が預貯金を使えないようにする仕組みだ。

そして、もし親族後見人が信託に同意しない場合は、事実上のペナルティとして、家裁が後見人に対して監督人をつける。こちらも強制的なものだ。

「信託に入るか、監督人か」と迫る家裁

昨年、家裁の職権で監督人を強制的につけられた関東在住の男性(50代)の体験を見てみよう。

男性の両親は2人とも認知症で、男性が父親、弟が母親の後見人になっている。新聞に投書した女性と同様、従来は家裁から「後見人として適切に対応している」という、お墨付きをもらってきた。

「ところが突然、家裁に呼ばれて『後見信託に入れ』と言われました。『私たち兄弟の後見活動に問題があるのですか』と聞くと『よくやっている』という。『それならこれまで通りでいいじゃないですか』と言っても、聞く耳を持たないんです。

『(後見信託に)入らないなら強制的に監督人をつけるが、それでいいんですか。監督人がつくと、両親が死ぬまで、監督人に報酬を支払わねばならない。後見信託の方がコストが安く済むから入った方がいいですよ』という。はっきり言って脅しですよ。(後見信託も監督人も)両方とも断ったが、強制的に監督人の弁護士をつけられた

監督人の弁護士が、男性と弟に会ったのは一度切り。それも数分で用事は終わった。それ以外で、1年間に監督人がやったことと言えば、男性と弟が作成した財産目録に目を通し、通帳を見ただけ。実働時間は1時間程度と見られる。

それにもかかわらず家裁は、両親の預貯金から毎月6万円(1人あたり3万円)、年間72万円の報酬を弁護士が請求することを認めている

こんなことが、両親が亡くなるまで毎年続けられるというのだから、とんでもない仕組みと言うほかない。この兄弟は、報酬支払いには合理的理由がないとして支払いを拒否するつもりだ。

なぜ、このようなトラブルが全国で多発することになったのか。その背景には、最高裁を頂点とする司法と、弁護士・司法書士などの業界が推し進め、国民が知らないうちに「当然」とされるようになった、成年後見人制度の不可解な運用の実態がある。次回以降、その闇に切り込んでいこう。

裁判所が選ぶのに…「後見人」の高額請求に「強制力」はなかった!
成年後見人制度の知られざる闇 第2回

認知症の父母に裁判所がつけた後見人は、見も知らぬ弁護士や行政書士。彼らは自分が後見している父母にろくに会いもせず、裁判所のお墨付きがあるからと、高齢者の口座から毎年報酬を引き落としていく。その額、年間数十万円……。だが、その引き落としには、法的強制力はなかった!?

「母のために何もしていないのに…」

「家庭裁判所が母の成年後見人に選任した弁護士は、後見人に就任してから3ヵ月もたって、初めて老人ホームに入っている母と会いました。娘の私が、何度も『母と会ってください』と電話で頼んで、ようやくやってきたのです。

ところが施設に来はしたものの、母と会ったのはたったの1分だけ。母の部屋をちらっと覗いた程度で、『忙しいから』と帰ってしまった。

その他で弁護士がやっていることと言えば、母の通帳を管理しているだけです。そして、母のためになることは何もしていないのに、毎年多額の報酬を母の銀行口座から引き出しているんです」

2年前、見も知らぬ弁護士を、認知症の母親の後見人につけられた女性の話だ。

そもそも女性は、自分が認知症の母親の後見人になるつもりで、家裁に成年後見制度の利用を申し立てた。だが家裁は、女性がまったく知らない弁護士を、母親の後見人に選任した。

成年後見の在り方を記した民法858条には、後見人の責務として、認知症高齢者の意思を尊重し、心身の状態や生活の状況に配慮しなければならないと定めている。これは「身上監護義務」と呼ばれ、成年後見制度の根幹をなしている。

ところが現実には、この弁護士のような専門職が後見人につくと、世話をする相手の認知症高齢者とほとんど会わず、生活の質の向上にも何の関心も示さないことが珍しくない。彼らがやることといえば、通帳管理と、年1回の家裁への後見状況の報告書作りだけだ。後者の作業にしても、実働には1時間もかからない

これでは冒頭の女性のように「母のために何もしていないのに、なぜ多額の報酬を」などと家族が不満を持つのも当然だ。だが全国の家裁は、こうした家族の不満を承知のうえで、年を追うごとに弁護士や司法書士といった「専門職」の後見人を増やしている

裁判所の責任逃れ? 主流になった専門職後見人

実際、成年後見制度がスタートした2000年には、後見人の9割は家族などの「親族後見人」が占めていた。ところが現在は「専門職後見人」が全体の7割を占めている。

なぜ、そんなことになったのか。背景には、親族後見人による不祥事が多発したことがある。制度発足当初、家裁は親族を後見人に選任していた。だが、親族による横領事件が頻発し、選任した家裁の監督責任が問われた。

すると、「羹に懲りてなますを吹く」の喩え通り、成年後見制度の仕組みを作った最高裁家庭局とその管轄下にある全国の家庭裁判所は一斉に、親族後見人ではなく第三者の専門職を後見人につける方向に舵を切ったのだ。

だが、専門職後見人がつくようになって不祥事がなくなったかといえば、実はそうではない。公平性を期待された専門職も、横領事件を頻繁に引き起こしている。

たとえば、2015年10月には認知症男性の後見人をつとめていた弁護士が、男性の口座から1830万円を横領し、名古屋地検特捜部に逮捕されている。この年、弁護士らによる横領は、過去最悪の37件に達した。

それでも最高裁と家裁が専門職を後見制度の柱にする方向を変えないのは、同じ不祥事でも専門職後見人が起こしたものならば、本来は家裁が負うべき監督責任を、弁護士会や司法書士会といった職能団体に丸投げし、回避できるからではないかという指摘もある。

基本報酬だけで年数十万円に

では、原則無償のボランティアである親族後見人に対し、弁護士や司法書士らの専門職後見人の報酬はいくらぐらいなのか。

2013年、東京家裁立川支部のウェブページに、報酬の目安が掲載された(元PDFはこちら)。

報酬の目安クリックすると全文に拡大されます
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これによると報酬は基本報酬と付加報酬(ボーナス)で構成される。

基本報酬は、毎月支払われるもので、金額は認知症の人の流動資産の額に比例し、1000万円以下だと月額2万円(年24万円)、1000万円~5000万円が月額3万~4万円(年36万~48万円)、5000万円以上が月額5万~6万円(年60万~72万円)だ。

ボーナス額については、具体的な額が書かれていない。だが一般的には、認知症の人の自宅を売却した際には100万円程度、遺産分割協議の報酬では、たとえば4000万円の遺産分割で80万円程度などとされ、第1回で取り上げた「後見制度支援信託」(後見信託)の設定報酬もボーナス扱いとなり、15万~30万円とされている。

たいした労力をかけずに、これほどの報酬を得られるのだから、専門職にとって成年後見制度は「おいしいビジネスと言えるだろう。

専門職後見人らが報酬を得る際に行う作業も、次のような簡単なものだ。

後見人は、年に1回、家庭裁判所に業務報告を行う。この報告は「被後見人の所在」「健康状態」「財産状況」をチェック式で報告する程度で、30分もあれば書けてしまう。この業務報告にあわせて、後見人は「報酬をください」という申し立てをする。

申し立てを受けた家裁は、1週間程度で「報酬の審判」を下す。家裁が発行する審判書は1枚の紙きれで、直近1年間の報酬額を「『○○万円』とする」とだけ記載されており、根拠などの説明はない

支払いに「強制力」はなかった!

だが、ここで驚くべき事実がある。多くの人は「裁判所が下した審判書なのだから、認知症の高齢者や家族は、後見人がその金額を財産から取っていくのを黙って見ているしかないのだろう」と思うだろう。

ところが、家裁が下した「審判所」は、何も後見人が被後見人の財産から取ることに法的強制力を持たせるものではない(強制執行の根拠にならない)のだ。

つまり、この報酬金額の審判は、被後見人の財産から無理やり報酬を取っていってよいというお墨付きにはならない。

実際、東京弁護士会発行の月刊誌『LIBRA』2014年7月号の「成年後見実務の運用と諸問題」という特集企画の中で、東京家裁の小西洋判事らは「報酬付与の審判は後見人に報酬請求若しくは報酬を受け取る地位を付与・形成する審判と解され、特定の義務者(被後見人)に金銭の支払を命じるものではな」いとしている。

LIBRA『LIBRA』2014年7月号より。色枠で囲んだのが当該部分(枠は編集部)
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司法統計をもとにこうした報酬を推計すると、実に2000億円を超えるというから恐ろしい。

元東京大学医学系研究科特任助教で、成年後見制度に詳しい一般社団法人「後見の杜」代表の宮内康二氏は、こう指摘する。

「後見報酬の審判が確定債権にならないことは、専門家の間では常識です。同様に後見監督人(注・連載第1回で取り上げた「監督人」)に払う義務もありません。

しかし、その事実を国民に知らせない業界体質がある。ようやく最近になって、この事実に気付いた被後見人や遺族たちが、いま返金を求める裁判を起こす準備をしています」

ほとんど何もしていない後見人に対して「あの報酬は不服だから、返してくれ」と言えるものならば言いたい、という遺族や被後見人たちは少なくないだろう。

認知症高齢者やその家族が立ち上がろうとしている状況下で、政府はどう対応しているのか。実は、専門職後見人への傾斜をさらに強める姿勢を見せているのだ。

昨年5月、安倍政権は「成年後見制度利用促進法」を施行した。これにともなって、成年後見制度に関する政策の審議などを行うために内閣府に設置された「促進委員会」には、弁護士や司法書士、社会福祉士の職能団体の幹部がそろってメンバーに入っている。

上がり始めた市民の声と、逆行する司法・行政の姿勢。法廷闘争の行方はまだわからないが、まずは私たち自身が、いま水面下で「おかしな事態」が起こっているという事実を知ることが大切だろう。


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