ドイツでいま「一夫多妻10人家族」が悠々自適に暮らせる不思議 さすがに変だとメディアも気付き始めた 

いつもながら 簡潔に おもしろい記事です
ドイツが 未だに 模範だと信じている 日本人に 読ませたいもの

川口 マーン 惠美
 

このコラムでもよく指摘してきたが、これまでドイツでは、難民批判はタブーで、難民政策をもう少し現実的なものに修正しようと言っただけで、差別主義者、反人道主義者などと叱責された。

難民が容疑者である事件はあまりニュースには出ず、難民のせいで治安が乱れているなどというのは、根拠のないこととされた。難民をひとまとめに悪者にしてはいけないという風潮が高じて、いわば、難民はひとまとめに善人にされていたわけだ。

ところが、今、ニュースのトーンが急速に変わってきている。といっても、別に難民を敵視するというわけではない。起こっていることを以前よりはありのままに報道し始めたのである。

「一人の主人、二人の夫人、六人の子供」

まず一つ目の例。2月に大手ニュース週刊誌『シュピーゲル』のオンラインページ、SPIEGEL.TV にアップされたビデオだ。このドキュメントのタイトルは、「一人の主人、二人の夫人、六人の子供」。

http://www.spiegel.tv/videos/1279861-ein-mann-zwei-ehefrauen-sechs-kinder

「一人の主人」というのはアハメット(32歳)。3年前、シリアから2人の夫人と5人の子供と共にギリシャまでやってきたが、そこでお金が足りなくなった。仕方なく、臨月の妻とその子供1人をギリシャに残し、もう一人の妻と子供4人だけを連れてドイツに渡った。

その後、アハメットは難民資格を得たので、ギリシャに残した妻と、その子供2人(2人目はギリシャの難民キャンプで無事に生まれた)の呼び寄せをドイツの移民・難民局に申請したところ、めでたく許可された。

現在、アハメットはハンブルク郊外で、部屋数が5部屋、浴室が2つある「小さな一軒家」に、2人の妻と6人の子供と共に住んでいる。家は自治体から借り受け、職業安定所が家賃を支払っているという。もうすぐ、7人目の子供も生まれる。

「子供は10人でも20人でも欲しい」とアハメット。もちろん妻もゆくゆくは4人が目標で、3人目か4人目の妻は「もちろん、ドイツ人でもいい。ただしイスラム教徒なら」。レポーターが、「3人目の妻は、どこで寝るのか」とつまらない質問をすると、アハメットは朗らかに笑いながら、「その時は、もっと大きい家が必要だ」と答えた。

これを見て、私はかなり仰天した。アハメットは働かずして暮らし、「メルケル! ママ・メルケル! とても、とても、とても感謝している!」と感じの良い笑顔で語っていた。その横では可愛い子供たちが飛び跳ね、キッチンではスカーフで髪を隠した2人の若妻が仲良く立ち働き、「ノー、プロブレム。私たちの夫は良い人」と微笑む。

1人目の妻は14歳で結婚したという。家の中ではテーブルと椅子を使わず、ベドウィンの伝統に従い、皆で床に座って食事をする。この日は、ブドウの葉っぱにライスを詰めたお料理だった。

ドイツでは今、貧富の格差が激しい。何らかの理由で年金がもらえない人、あるいは年金だけでは食べていけない人、貧困に陥ってしまったシングルマザーなどが、売れ残りの食べ物の配給所に列を作っている。

ターフェルと呼ばれるこの慈善事業は、1993年に一人の女性がベルリンで始めたのだが、今、ドイツ全土に広がり、配給所の数は2100にも上っている。

電気代滞納で、電気を止められてしまった所帯が30万戸。また、自治体が優先的に安い住宅を難民に振り分けるので、あまりお金がない人や学生の借りられる住宅が絶対的に不足している。

とりわけ変なのは、アハメットが2人の妻と何の問題もなく暮らしていることだ。

なぜ、2人目の妻の受け入れが可能だったのかというと、子供たちは両親の元で暮らすべきだという人権保護の協定があるからだという。ドイツが一夫一婦制であるという法律の方はどこかに飛んでしまったらしい。

旅行者ならまだしも、アハメットは正式な難民資格を得ているので、これからおそらく職を探し、様々な補助を受けながら、長くドイツに住む可能性は高い。そうなると、将来、この2人の妻の存在はどのように解決されるのか。本来ならこれはドイツでは犯罪行為だ。付け加えるなら、ドイツでは14歳の少女を妻にすることも犯罪となる。

難民の家族呼び寄せについては、CDU/CSU(キリスト教民主同盟/社会同盟)が、できるだけ規制しようとし、一方、SPD(社民党)や緑の党や左派党は緩和しようとしている。子沢山のアラブ人のこと、緩和となると、当然のことながら難民の数は爆発的に増えるだろう。

不正な難民資格が2000件も

さて、もう一つ、報道が変化している例を挙げたい。

4月20日、連邦難民・移民局の上級職員で、ブレーメン支部長であった女性が、難民資格のない人たちに、不正に難民の資格を与えていたというニュースが流れた。南ドイツ新聞やNDR、ラジオ・ブレーメンなどによれば、不正は2000件にも及ぶという。

実は、メディアでいつも「難民」と表されている人たちは、正確に言えば、まだ「難民」ではなく、「難民志願者」がほとんどだ。

難民志願者は、まず難民申請をする。そのあと、彼らが難民の条件を満たしているかどうかを、難民・移民局の出先機関が順番に審査して、資格を決める。シリア、アフガニスタン、イラク、ソマリアなどの出身者は、祖国が紛争地になっているため、かなりの確率で難民資格が得られる。上記のアハメットもその一人だ。

しかし、「安全な第3国」に定められているその他の多くのアフリカの国々、また、旧ユーゴスラビアなどからきた人々は、宗教上、あるいは、政治上の理由で迫害されたという確たる証拠がない限り、難民としては認められない。審査に落ちれば帰国しなければならない。実は、その帰国も、緑の党などの反対でうまく実施できていないが、本稿ではそれには触れない。

さて、先の2000件もの不正な難民資格だが、それにはブレーメン市(ブレーメンは特別市で、州扱い・独立した議会を持つ)以外に、ニーダーザクセン州とノートライン–ヴェストファーレン州が関与しているという。容疑者はこの職員の他に、弁護士が3名、通訳が1名、そして、難民と弁護士の間を取り持った人物1名の計6名。金銭の授受があったかどうか、あったとすれば、誰から誰に流れたかなどは、まだ捜査中だという。

興味深いのは、このニュースが今、出てきたことだ。大手のフランクフルター・アルゲマイネ紙によれば、すでに2016年の9月、「ブレーメン支局で難民の母国送還の規則が守られていない」という通報があったという。

さらに言うなら、去年、ブレーメンの難民の帰国率が極端に少ないというニュースが何度か流れていたのを、私でさえ記憶している。しかし、それらは無視された。それどころか、変則的な数字に関しても、「人道的な見地を重視か?」などと肯定的な報道さえ見られたのである。

しかし、冒頭に述べたように、その論調が、今、変わり始めている。報道が変われば、世論も動く。あるいは、世論の変化に報道が歩調を合わせているのかもしれない。

いずれにしても、メディアは常に扇動的だ。そして、ドイツの難民政策は、ますます複雑になっていく。

*5月2日のニュースによれば、難民の家族呼び寄せは、今年8月より1ヵ月1000人のリミットで、5ヵ月間のみ実施されるということが決まった。そのあとのことは未定。

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