「トランピズム」とは何か

 

AC通信　No.831 (2021/03/02)AC 論説No.831　「トランピズム」とは何か

2月28日のCPAC大会でトランプ元大統領が行った講演は、従来の選挙運動の講演や大統領時代の各地の講演と同じように数千名の参加者を集めた大盛況だった。トランプの到着が１時間余りも遅れたが、講演ホールは満員で場外にも参加者が溢れ、彼の車が通る道路で「Trunp2024」の旗を振るっている民衆が何キロも続いていた。選挙に負けた大統領がこのような歓迎を受けたのである。講演の最中に聴衆が総立ちになって「USA、USA」を連呼する場面が何度もあった。

トランプの人気は全く衰えていない。トランプのバイタリティ、体力も記憶力も全然衰えていない。９０分の講演で一度もメモを見ることもなく、十数名の議員の名前や地名をスラスラと言えたのである。アルツハイマーが進んでいるバイデンに比べたら天地の違いだ。

翌日の左翼メディアは相次いでトランプのCPAC講演を批判したり、実情を捻じ曲げた報道をした。MSNBCのテレビキャスターは「トランプはCPAC の講演で聴衆を煽動した」と述べた。この批判は国会乱入事件でペロシ下院議長がトランプが「群衆を煽動した」で弾劾した事を連想させるためであった。LAタイムスは翌日の新聞でトランプが「去年の選挙について裏付けに乏しい嘘や信頼に足る証拠のない不正があったことを主張した」と書いたが、実際に私が聞いた講演ではそんなことはなかった。

トランプは去年の選挙不正について、「選挙に問題のあった州では勝手に選挙法を変更した。ある州では投票日のたった２日前に選挙法を変更した。多くの不正選挙の告訴を地方法院や上級法院が審査を受け付けず却下した。最高裁、あろうことか最高裁までが憲法違反の告訴を却下した」と述べたのである。問題州が勝手に選挙法を変更したことや、法廷が告訴を却下したのはすべて事実である。メデイアが「嘘や信頼に足る証拠がない」と捻じ曲げて報道した方が悪い。Deep Stateはトランプが今でも絶大な影響力を持っていることを恐れているのだ。バイデンには絶対にトランプのような人気がない。

CPAC大会で参加者の意見を調査したデータが発表されたが、参加者の97％がトランプ大統領の４年間の路線に賛成したのである。普通なら現職の大統領に40％から80％ぐらい賛成するだけだが、CPACの参加者の殆ど全員がトランプのMAGA(Make America Great Again)に賛成したのである。彼らはバイデンがトランプのアメリカ・ファーストをアメリカ・ラストに変えてしまったと憤慨しているのだ。

講演会でもう一つ驚いたのは聴衆がトランプに「I Love You」の大合唱を始めたことである。アメリカの歴代大統領で最も人気があったのはレーガンだが、レーガンでさえ講演会で「アイラブユー」の大合唱を受けたことはない。トランプはDeep Stateの反トランプ陰謀で嘘つき、暴言、失言などと攻撃され、国民の半分以上、特に女性や黒人がトランプに反対したと言われていたが、今回の大合唱は彼が国民に愛されていることを実証したのである。もちろんCPACは保守、右翼の集まりに違いはないが、それでも国民の半分以上がトランプを評価していたのである。

もう一つの発表では参加者の55％が2024年のプライマリー選挙の時はトランプに投票すると答えた。2024年プライマリーに立候補すると思われる人は十人ほどいるがトアンプに勝てる人はいない。4年後のことだから状況がどのように変化するかはわからない。トランプは2024年選挙に明確な出馬表明をせず、Who Knowsと述べただけだった。

講演で彼が明確に発表したのは新党を結成するという噂を否定したことだった。新党を結成するのは共和党が分裂するだけだと述べた。そして共和党の将来の路線は、「第一に正しい選挙、第二に正しい憲法、第三が移民政策、そして第四が経済」と述べたことである。そして正しい選挙とは投票者の確認と署名の確認をすること、正しい憲法とは法を遵守する法廷（最高裁のこと）であこととも述べた。

最後になるがCPAC大会で参加者が言い出した「トランピズム」はトランプが言い出したのではない。「レーガノミクス」という経済路線の呼称はあったが「トランピズム」は初めてで、参加者または国民がトランプが過去４年間の路線を全面的に支持している、つまりトランプの「アメリカファースト」の継続である。CPAC大会の結論は共和党が「America First」を継続していくことである。