【奇妙?単純? 韓流の方程式】#42

「五輪どころではない」スポーツ大国の韓国にも影を落とすコロナ感染者の急増

 韓国ではよく3種類の人種が存在するといわれている。男、女、そして“アジュンマ”。アジュンマとは“オバサン”のことだ。とてもパワフルで押しが強いことから「極盛」と表現されることもある。

 過去に新大久保の韓国料理店や、ソウルの南大門市場でアジュンマ同士の大ゲンカに遭遇したことがある。どちらも気性がすさまじく、互いの髪をつかみ合うほどの暴れっぷり。万が一、アジュンマとケンカになっても自分に勝ち目はないだろう。

 年齢が若くても既婚女性であればアジュンマと呼ばれることがあるが、年配のアジュンマたちの貫禄には到底及ばない。男性たちもアジュンマにはタジタジなのだ。

 韓国でアジュンマといえば、すぐに思いつくのが独特のヘアスタイル。短い髪を細いロットできつめに巻いており、“アジュンマパーマ”と呼ばれる。早い話がパンチパーマだ。韓国映画「怪しい彼女」ではアジュンマたちのパーマ姿を目にしたヒロインが「まるでブロッコリーだ」と表現している。

 それでもアジュンマパーマを好んでかけるのは楽チンだからだ。手間がかからないから、家事や育児に忙しいアジュンマに最適。ソウルでは徐々に減っているそうだが、一定数の需要はあるようで、これにケチをつける人はいない。

 一方、東京オリンピックの女子アーチェリーで史上初の3冠に輝いた韓国代表のアン・サン選手はショートカットを理由に批判された。

 ネットユーザーたちはアン選手をフェミニストに認定。過去に男性嫌悪と思わせるような言葉を使ったとして、「金メダルを剥奪すべき」と一方的に炎上させた。これには多くの韓国人女性が憤る。「短髪で女性らしくしないのは“男性から可愛く見える努力をしていない=男性嫌悪である”というのはバカげた解釈。とても恥ずかしい発言だ」と友人のひとりも怒りを隠さない。

 背景には、韓国で深まっている男女間の対立がある。フェミニズムが盛り上がる半面、表面化してきたミソジニー(女性嫌悪)という感情。女性の地位が向上する中、男性にだけ兵役の義務が課せられることにも不満が高まる。また、右傾化する若い男性の過激な言動も目立ち、「息をするように差別発言をする男が増えた」と懸念する韓国人女性も。

 アン選手はショートカットの理由を「楽だからです」と答えている。利便性重視はアジュンマたちとなんら変わりなく、文句を言われる筋合いはないのだ。(児玉愛子/韓国コラムニスト)