書評 陳破空『常識ではあり得ない中国の裏側』(ビジネス社)
・・・ハッカー攻撃に米国さえも、いかに脆弱であるとかを逆に物語っている。ということはハッカー対策をやっとこさ、60人程度の組織を作ったばかりの日本はおはなしにならない
中国共産党のネット対策は熾烈、かつ本格的である。政府を批判するネットは即座に削除する。ものの一秒もかからない。 共産党をつねに正しいとコメントする「やらせ組」は一つのメッセージを書き込むと『8元もらえる』仕組みを完成させた。これを「五毛幇」と言う(本書では「五毛党」になっている。1元=16円の半分が五毛)。
これらのネットゲリラは「愛国の旗を振りかざし、自分たちは政治的に正しいと思いこんでいる。彼らはプロのネット集団である。(中略)中国共産党は総力を挙げて五毛党(ネットゲリラのこと)の拡大を図ろうとしている。2015年、共青団中央は1050万人の『青年ネット文明志願者』を公募した」。
ボランティアとして、政府批判の書き込みを削除し、政府を礼讃するコメントを書き込む輩である。
そのうえ、中国の謀略は対外的にもネット上で進んでいる。
近年では台湾の独立運動や香港の雨傘革命をなした民主派のHPやネット議論に大々的に参入し、ネット議論を掻き乱し、混乱させた。
ハッカー技術で、ネットに架けられたセキュリティガードの固い壁を突破し、自由陣営のネットに割りこんで世論をねじ曲げ誤導しようというわけだった。
ところが陳破空氏はいう。
彼らが突破した台湾独立運動のネット論壇は、じつは中国共産党が設置したものだったのだ。つまり国内のガス抜きも、自らがしかけたファイアーウォールで吸収し、ガス抜きをするわけである。
だから中国はややこしい。腹黒いのである。
けっきょく「中国共産党がやっているのはネット削除と軍事演習だけ」という実態を知ると、爆笑のあと、やがて哀しき中国独裁政権の破天荒な矛盾がみごとに浮き彫りとなった。