鳴り物入りの新型コロナ組織「東京iCDC」は機能しない

やってる感を演出するのは、小池知事の常套手段

<5>鳴り物入りの新型コロナ組織「東京iCDC」は機能しない|小池知事「伏魔殿都政」を嗤う

 7月の東京都知事選で「アメリカのCDC(疾病対策センター)の東京版を作ります」とぶち上げた小池知事が今月1日、「東京iCDC」をスタートさせた。

 ついに選挙公約を実現…と思われたのだが、その中身を見て肩の力が抜けた。都民の多くは、米国CDCのような強力な力を持った一大組織が創設され、新型コロナに立ち向かってくれると思っていただろう。ところが、その実態が明らかになればなるほど、単に専門家会議に毛の生えた代物に過ぎないことがわかってきたのだ。

 小池知事は会見で「感染症対策を一体的に担う司令塔。新型コロナに打ち勝つための実践組織そのもの」と豪語した。具体的には、平時には国や大学と連携して政策立案、調査分析を行い、有事の際には医療提供体制の確保など危機管理や情報収集、発信を一体的に実施するというのである。

 CDCの前に“i”がついていることについて、小池知事は「東京版は感染症を対象にしている。“infectious”とは感染の意味。その略称で『東京iCDC』となる」と得意の横文字知識を披瀝した。どうやら、米国は疾病全般を対象とするが、東京は感染症専門だと言いたいらしい。だが、都民にとってはチンプンカンプンだろう。


専門家ボードは小池知事が好きな著名人の寄せ集め

 この「東京iCDC」は、どこかに施設があるわけでも、組織があるのでもない。常設の「専門家ボード」を設置するにとどまる。しかも、この専門家集団がやたらに大人数なのだ。疫学・公衆衛生チームなど4分野に総勢17人の専門家を任命。その中には、あの「8割おじさん」こと、西浦博教授(京都大学大学院)も含まれている。座長には、新型コロナの解説でお馴染みの加来満夫特任教授(東北医科薬科大学)が就任した。

 さらに外部アドバイザーを3人選任したが、そのうちの1人はノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏である。この「オールスター秋の大感謝祭」的なてんこ盛り感はいったい何なのだ。著名人を集めればいいってものではないだろう。

 第一、こんな頭でっかちの、著名人だらけの専門家ボードがうまく機能するとは到底考えられない。これだけは、都庁で働いてきたOBとして断言できる。ビッグネームを集めただけの会議体は、ほぼ間違いなく機能しない。そして小池知事に振り回されて疲弊するのは、いつも都職員なのである。

やってる感を演出するのは、小池知事の常套手段

 小池知事の著名人好きには呆れるばかりだが、結局、「専門家ボード」は外部の専門家から意見を聞くための態勢を整えたに過ぎない。また、すでに東京都には新型コロナのモニタリング会議がある。屋上屋を重ねる重複感は非常に強いと言わざるを得ないが、こうした事態は今に始まったことではない。次から次に会議体のようなものを作っていく手法は、小池知事の昔からの十八番だったのだ

 市場移転問題の時も同じようなことが繰り返されていた。当初、市場問題プロジェクトチームと専門家会議が並行して議論を進めていたが、2017年3月、築地か豊洲かの選択を迫られた小池知事は、突如、市場のあり方戦略本部なるものを立ち上げた。当時、中央卸売市場次長だった私はある日、副知事経由で知事の意向を知らされ、「何ですかこれは? 都議会を乗り切るためだけの方便なんじゃないですか!」と副知事に迫った記憶がある。とにかく小池知事は、いつもこんな感じなのだ。

 それまでの取り組みを総括もせず、目先をそらすためだけに新しい組織や会議体を立ち上げる。そして、あたかも物事が前進しているように偽装する。これこそが小池流の処世術なのである。

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