今日は、最近思う事を...
私は8歳からクラシックバレエをはじめ、18歳でプロのバレエダンサーになりましたが、それから早30年近くが経とうとしています。
好きだけで突き進んできた道。
自分がバレエが上手かどうかは置いておいて、まさに「好きこそ物の上手なれ」でここまで来たと思っています。
私たち世代が若い頃は、自分がバレエダンサーに “なれるか?” は最大の問題ではなく、“なりたいかどうか” が最重要だったと思う。少なくともわたしの周りの同世代はそうだった。何が何でもバレエに関わるんだ、という気持ちはとても強かったし、それ以外の道など考えられなかった。
ところが現在は “なりたい”よりも “なれるか?” が先に来る時代になってきたと感じます。多くの若者が冷静に未来のことを考えている。 “もしもバレエ団に入れなかったら、プロのダンサーになれなかったとしたら、どう稼ぐ?” ということを考えているのです。それはもちろん大切なことだけれど。
生活を考えれば日本よりも海外の方が職業として成り立つ可能性が高いので、早くから留学を考える人も多い。逆にしっかり教養を身につけてバレエ以外の道も伏線として考え大学に進学する人も増えてきました。
それにしても今の若者はなぜこんなに冷静なのか?
海外へ出るチャンスのあるコンクールが増えてきたこと、日本のバレエ教育の内容が先人の方々の功績でかなり整ってきたことで若いうちからテクニックが身につくようになったこと、絶対数が増えたことで上手な人やスタイルが良い人が目立って見えること、、
そしてそれらのことを、SNSやYouTubeを通してリアルに知ることができるようになり、自分の力量を早くから認識し始めてしまう、ということが大きいのではないでしょうか。
現代は残酷だ。
私の若い頃は、同世代のバレエを見る機会などほとんどなかった時代。同じ教室に同世代の子がいなければ自分がどれだけのレベルのバレエを踊っているのか知る機会はない。だから留学したとしても、そこではじめて自分の実力を知って落胆し、その道を諦めるひとも少なくなかった。一方で、そこに足を踏み入れてしまったからにはあとには引けず、ひたすら努力し、結果素晴らしいダンサーになるひとも多数いらっしゃったと思う。
いまは若いうちから高水準で踊れる人の絶対数が増えたことも相まって、プロのダンサーへの道は狭き門となり、“好きだから” “やりたいから”という単純明解な気持ちが持続し辛くなったということなのか。。
でも!
“好きだから” はもっとも大切なことだと私は思います。もちろん、好きだけでは100%思い通りの未来が来るわけではないし、その時の環境や条件が揃わなかったら続けるのは簡単ではないかもしれない。私はたまたまうまくプロになれたのかもしれない。けれども、未来は誰にもわからないもの。だったら後悔しない選択をしたい。
若いひとは可能性のかたまり。自分だけで自分の可能性を決めつけて欲しくないし、周りのいうことに流されてもほしくない。
私はプロになるとはまだ思っていなかった15歳のころからすでに思っていました。
「好きなことがあるって、素晴らしい」と。「自分にはこんなに早くからこんなに好きで没頭できることがあるって、きっととっても稀で幸運なことなんだろう」と。
それがどのようなかたちで身を結ぶかはわからないけれど、とても価値があって尊いことだと信じてほしい。
いまもし、“好きなこと” から離れてしまっているとしたら、、そしてもしそれをやれる状況になったら、、 また必ずやってほしい。
そう思います。
先日、同門(堀本卓矢バレエスクール)の女子二人が私のクラスに来てくれました。二人はばりばり働きながらバレエを楽しんでいます。