田中苑の楷の木 遠くに鏡獅子の像
岡山県・閑谷学校の境内にある2本の楷の木(カイノキ)の紅葉は有名ですが、岡山県内には、もう一か所あまり知られていない楷の木の名所があります。それは井原市役所の北側にある田中苑(でんちゅうえん)の楷の木です。
イメージ的には、柳のような細長い薄い葉が垂れ下がっている感じですが、実際は葉の長さ、6㎝から9㎝の小さな葉で垂れさがっているのではなく、葉をよく見ると笹の葉のような配列(偶数羽状複葉)をしており、その枝ぶりは、全体的にとても優しげな印象を与えます。紅葉は、例年11月の初め、文化の日あたりが一番の見ごろとなります。今年は、紅葉する前に落ちてしまうものも多く、残念ながら全体的にボリューム感が今一つ感じられません。
この楷の木、紅葉しているのは、陽の当たっている表側の部分のみで、方角も南側、西側、東側だけ、北側から見ると緑のままであり、真下から見上げても緑か薄い黄緑色で、あの美しい紅葉はとても想像もできません。この内側の葉は最終的に緑色が黄色に変色した段階で、赤く色づくこともなく落ちてしまうようです。
それにしても美しいのは、その紅葉の変化です。赤い部分、黄色の部分、緑の部分とそのグラデーションは、まさに七変化、言葉に表せないほど見事です。陽のあたる表側の発色も燃えるように美しく、感動さえ覚えます。
グラデーションが美しい
ちょうど私が写真を撮っていると、遠方から来たと思われる老人が話しかけてきました。「今年は、閑谷学校の楷の木が、台風の影響かなにかでまったくだめ、井原にもあると聞いてやってきた。比較にならないほど美しい。」というようなうれしいコメントでした。今年の田中苑の楷の木、この素晴らしい紅葉を、是非、市外の方にも見てもらいたいと思うのです
この田中苑の楷の木ですが、昭和50年頃、日本のビール王と言われた馬越恭平翁の孫にあたる人が中国から3本の苗を持ち帰り寄付されたものだそうです。ということは、樹齢40年ということになります。
ちなみに、閑谷学校の偕の木は、大正4年(1915年)に同じく中国孔子墓所から種を採取し育苗されたものの内の2本です。単純に計算しても樹齢は100年になります。例年、11月初旬にライトアップされます。しかし樹齢100年は老木かというと、そうでもないらしく、一説には樹齢は700年に達し、樹高は30mにもなるそうです。とにかく日本では、非常に少ない木として珍重されています。
また、楷の木、中国では模範の木とされており、日本においての書体の「楷書」の語源とされているようです。
燃えるように美しい紅葉
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