しかしこのシリーズのおかげで猫漫画比率がちょっと少なくなってさみしー、ですがこっちもおわりかけでさみしー。
なかなかわがままさんは難しいです。
「悪いけど、…リンについていってもいいか?」
見張りからしばらくして、トルマがいった。
「ほとんどのモンスターはラルドがやっちまったとはいえ、まだ全部いないときまったわけじゃない。…それに、女一人でいかせるのは酷だ」
「ああ、わかった。俺一人でやるよ。」
何故考えがまわらなかったのだろう。
よく考えれば、死骸だってあるはずだ。リンだって心細いに違いない。
「悪かったな。」
トルマは笑った。
「いや、ありがとう、ラヒチ。」
ラルドの状況はかわらず、回復魔法をかけられても収まった気配はない。
「もういいんだ…もういいから、」
「何言ってるの、あきらめないで!」
ホミンが一喝する。その額にはうっすらと汗がにじんでいる。
「駄目よ、死んだりしたら…」
「縁起でもないこと、いわない!」
さらにホミンはフルールも一喝した。
トルマとリンもそのうち帰ってきたが、薬草も効果がなかった。
「俺は…魔王の血をあびたから、…ここにいるんだ。浴びてなければ、ただの草だった…」
とぎれとぎれの言葉に、皆目が一瞬きょとんとなる。
「皆の記憶をいじったのも、…俺だ。俺が一緒にいたかったから、そうした」
「おい…だからって、死んでいいってもんじゃないだろうが…」
「死んだって、もとはただの草だよ、心配するもんじゃない」
弱々しく、ラルドは笑った。
「お前な…くさくさっていうけど、草は浄化作用もあるし、食べられるしえらいんだぞ。もっと自信をもて」
「ははは…」
「草だったら、薬草きかないわね…植物栄養剤?」
「こら、リン」
場はなごんだが、ラルドのからだの色がどんどんとかわっていく。
赤みがかった、くすんだ色に―――
「見て、外の緑が―――」
リンの言う通り、外の緑もあっという間に立ち枯れた。
俺たちは、しばし呆然としていた。
「ラルドが、今まで森を、山をもたせていたんだな…」
「これから、どうする?」
「この場所に―――もう一度、緑を…ってのは駄目か?」
「駄目じゃないさ。したいようにすればいい。ラルドが、この辺に集落作る連中いるっていってただろ?まぜてもらえばいいさ」
俺はかすかにわらった。
「今更だな」
「向こうだって、労働力はいくらでも欲しいんだから協力すれば協力してくれるわ」
優しくフルールが言った。
「もちつもたれつ、よね」
「なーんか腐れ縁みたいになっちまってるけど、みんなついていくんだぜ。よろしく、リーダー」
「こちらこそ、だ」
そして―――三十年後。
エルス=セントリック=ランガンという名の少年は森で一人の青年と出会った。
青年は緑の髪に緑の瞳。
森はかつて魔王との戦闘の場であった。
「お兄ちゃん、ここで何してるの?」
「ここで、皆を見守ってるんだよ」
「名前は?」
彼はラルドと名乗った。
「ここらの植物の精はみんなラルドって言うんだよ」
「なんで?」
「おじいちゃんにきいてごらん」
ラルドはにっこりとわらった。エルスも笑う顔を練習した。
「植物の精?んじゃ、草ちぎってっちゃだめ?おばーちゃんにお花もっていきたいんだけど」
言いにくそうに言うと、そういうのなら全然オッケーだよ、とかえされた。
「皆の心を楽しませるためにあるんだから、いいよ」
「ありがとう、ラルド!」
エルスはにっぱー、と笑って花を物色し始めた。
忘れていた平和がそこにあった。
―――ありがとう、か。
ラルドは言われた言葉をかみしめる。
自分が、ずっと思っていた言葉だった。
ありがとう、ラヒチ。
どうか、皆幸せに。
(終)
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