広がる「審査請求」運動
― 全生連など 1万人規模の参加めざす
8月から強行された生活保護基準の引き下げ撤回を求め、行政への不服申し立てを行う「審査請求」運動が全国で広がっています。全国生活と健康を守る会連合会(全生連)など貧困問題にとりくむ団体や法律家などが利用者に呼びかけているもの。研究者・弁護士らによる「全国争訟ネット」も発足し、1万人規模を目ざし、9月半ばに集中的に請求手続きをする方針です。
引き下げ後、初の保護費支給日に実施された各地の街頭宣伝が大きな反響を呼んだことにつづき、6、7日に全国で実施された「生活保護ホットライン」には900件を超える相談が寄せられました。電話を受けた新潟県生活と健康を守る会連合会の渡辺和子会長は「厳しい生活実態に改めて驚かされ胸が痛んだ。『行政にものをいってもいいのか』などためらう声に丁寧に答え、申請を決意した人もいる」と話します。
秋田生活と健康を守る会は6月末から会員にアンケート調査。半数が引き下げを知りませんでしたが、話を聞き9割が審査請求すると答えました。
3回も切り下げるとは通知に書いてなかった
大阪府の枚方(ひらかた)・交野(かたの)生健会が行ったアンケートには引き下げで「生きていく希望をなくす」(70代女性)などの記述が多くありました。京都市の伏見生健会の学習会では「3回も切り下げるとは通知に書いてなかった」と怒りが噴出。「黙ってられへん」と参加者全員が参加を決めました。
民主団体、労働組合などとの共同も広がり、全生連のチラシ(約20万部)を公営住宅で全戸配布(新潟、徳島など)する動きも。
全生連の安形(あがた)義弘会長は、「全都道府県で審査請求を出そうと呼びかけ、14日現在で参加者は千人を超えています。引き下げを撤回させることが国民全体の暮らしを守ることにもつながります。人間らしい暮らしとは何かを問う話し合いの場を広げていきたい」と話します。
審査請求 生活保護費の減額を知った日の翌日から60日以内に、都道府県知事に対して、減額を取り消すよう不服申し立てができます。書面のやりとりや口頭での意見陳述をへて、申し立ての翌日から50日以内に知事による裁決が出ます。裁決に不服があれば厚生労働相に再審査請求ができます。