最終盤の「3日攻防」に突入した沖縄・名護市長選(19日投票)は16日、辺野古への新基地建設ノーを訴える稲嶺ススム候補、政府・自民党本部が全面支援する末松文信候補の両陣営による総力戦となっています。
基地と引き換えの「振興策」を前面に出す自民陣営に対し、稲嶺候補は「私たちは、お金やどう喝で屈しないと今一度示したい。名護市民の誇り、沖縄県民の誇りをカネで踏みにじられるようなことは絶対にあってはならない」と訴えました。
稲嶺候補は「米軍のオスプレイが騒音をまき散らし、墜落の危険をいつも心配しながらの生活になる。米軍再編交付金と引き換えに基地を受け入れたら、次の世代の子や孫を苦しめる」と批判。「辺野古の新基地を阻止するために市民の先頭に立つことを約束する」と力をこめました。
また、基地に頼った振興策ではなく、第1次産業による自立した経済を強調。沿道にパイナップル畑が広がる地域で「農業は、名護市の地域経済を支える最も大切な分野です」と述べ、堆肥工場の改修や鳥獣被害の防止などで「農業や観光を通じて地域を活性化させる」と訴えました。
一方、末松陣営には自民党の石破茂幹事長が入り、新基地と引き換えの「名護振興基金」500億円を創設する考えを示しました。同時に、「この地域に一定の抑止力は必要」と述べ、新基地建設を推進する姿勢を示しました。
また、田村憲久厚労相も入り、街頭での訴えとともに医師会を通じての締め付けに奔走しました。
石破氏の演説を遠目に聞いていた男性(69)は、「基地を持ってきても地域の活性化にはならない。500億円持ってくるというが、あれは言いすぎだ。どうせウソだろう」と強い口調で語りました。
政府が決める自民・石破氏
自民党の石破茂幹事長は16日、沖縄県名護市内で記者団に対し、「(米軍基地の場所を決めるのは)だれの権限で決めるか、だれの責任で決めるかということは、それは政府が決めることだ」と述べ、基地の場所は住民の意思ではなく政府が決めるとの考えをあらためて示しました。
石破氏は、辺野古への新基地建設の是非を問う名護市長選が告示された12日に同様の発言を行い、「民意軽視」といった批判が相次ぎました。
名護市長選 石破氏の「名護振興基金」発言 “アメとムチ”再び
「夢を形にするために、500億円の名護振興基金をつくる」
16日、「3日攻防」に突入した沖縄・名護市長選(19日投票)で辺野古の新基地を推進する末松文信候補の支援に入った自民党の石破茂幹事長は、宣伝カーの上で高らかに宣言しました。
「200年」続く負担
ただ、石破氏は、この基金は「名護市民のご負担」(石破氏)=辺野古の新基地受け入れと引き換えであることを明言しています。「名護市民を世界一幸せにする」といいますが、200年も続く基地負担を押し付けられて、どうして幸せになれるのでしょうか。
この基金は総額1000億円の「北部振興事業費」など、県民を屈服させるための“アメとムチ”政策の焼き直しです。多くの市民・県民が「誇りと尊厳を傷つけられた」と憤っている「札束でほおをたたくやり方」そのものです。
しかも、この「500億円」の内訳を見ると、どこが「名護振興」なのか、疑問を感じざるを得ません。
看板の掛け替え
その最たるものは、那覇空港第2滑走路の増設です。名護市街地から80キロも離れた空港の滑走路建設がなぜ「名護振興」なのでしょうか。しかも、増設費用は、来年度予算案だけで330億円が計上されています。
また、県立北部病院と北部地区医師会を統合して基幹病院を建設するといいますが、これはすでに沖縄県が検討に入っています。基地と引き換えのカネで建設するようなものではありません。
何より、この基金は、基本的に国が出資する「北部振興事業」とはちがい、「国・県・市それぞれが負担する」(石破氏)ものです。つまり、3者が出資した基金を事業費にあてるというもの。国の分担割合は不明確です。
しかも、石破氏は500億円について「一括交付金400億円をベースにする」と述べています。一括交付金はすでに政府として決定しており、単なる「看板の架け替え」の疑いが濃厚です。
末松氏は、自身が掲げる「末松ビジョン」が、「確実に実施できる」と絶賛し、宣伝カーの上で「まことにありがとうございます」と平身低頭しました。しかし、末松氏はこれまで同ビジョンの財源として、基地と引き換えの米軍再編交付金などを挙げていました。つまり、再編交付金は確かな財源にならないことを告白したようなものです。
末松氏は、米軍再編交付金に頼らない稲嶺ススム市長の政策を「絵に描いた餅」だと非難しますが、どちらが「画餅」であるかは明白です。