派遣拡大やただ働き合法化 / 保育に株式会社参入/市販薬ネット販売 迫る
安倍政権の経済政策「アベノミクス」が暴走を加速―政府の規制改革会議(岡素之議長)は5日、正規雇用の流動化やただ働きの合法化、派遣労働の拡大、保育分野への株式会社参入拡大、市販薬のインターネット販売解禁などの規制緩和を盛り込んだ答申を首相に提出しました。
雇用分野では,
際限のない長時間ただ働き・容易な解雇ルールを合法化
雇用分野では、主に(1)限定正社員(職務や勤務地、労働時間が限定された無期雇用)の雇用ルールの整備(2)労働時間法制の見直し(3)労働者派遣制度の抜本的見直し―の3点をあげています。
限定正社員については、正社員より容易な解雇ルールを整備するとし、正社員が限定正社員に転換する場合にも言及(就業規則に解雇自由を盛り込み、現在正社員も限定社員にされる恐れが強い)。裁判で無効となった解雇を金銭で“解決”する制度の検討も提起しました。
労働時間の規制をはずす適用除外制度と、使用者の残業代支払い義務を免除する企画型裁量労働制の拡大・整理統合を提示。残業代の支払いを休日代替にするよう求めました。際限のない長時間ただ働きを合法化するねらいです。
派遣制度では、法の根幹である「常用代替防止」の廃止や、派遣期間見直しなどを打ち出して、派遣労働の際限ない拡大を主張しています。
保育分野では、
株式会社の参入拡大,施設や人員の基準を果てしなく引き下げる方向
保育分野では、株式会社の参入拡大を要求。5月に厚労省は株式会社の参入を促すよう都道府県に通知していますが、答申は参入状況の調査・公表を迫りました。
また、東京都の認証保育所など、基準の緩い地方単独の認可外施設への「支援を拡大すべきだ」と要求。「予算上の制約等を勘案し、合理的な最低基準が設定されるようその在り方を常に見直すべき」だとして、施設や人員の基準を果てしなく引き下げていく方向を示しています。事業所によるビル内の保育施設に必置することとされている避難用の外付け階段について「合理的な程度の避難基準の範囲や代替手段について検討し、結論を得る」と表明しました(保育所増設の「阻害要因」だとして、避難用屋外階段の設置義務は「緩和」する方向です。また子どもの育ちと命を保障する認可保育所の面積基準の緩和も狙っています)。
横浜市は、認可保育所の4分の1を株式会社に任せることで「待機児童ゼロ」を「達成」しましたが、これを全国へ広げようというのが阿部首相の方針。しかし、経費のうち7割以上を人件費が占める保育所運営は営利が目的の株式会社にはなじみません。横浜市議会では、人件費を4割にまで押し下げた認可保育所に衝撃が走っています。
医療分野では、
市販薬(一般用医薬品)のネット販売制度・再生医療が保険外診療活用
医療分野では、すべての市販薬(一般用医薬品)のインターネット販売を可能とする制度を今年9月までに整えるとしました。市販薬でさえ副作用被害が起こっており、これらを防ぐために薬剤師など専門家による対面販売が義務付けられてきた。この危険なネット販売は「安全より営利を優先するもの。」と医療関係団体や薬害被害者団体は批判をつよめています。
iPS細胞(人工多能性幹細胞)などを使って臓器や組織を再生させる再生医療については、保険診療と保険外診療を併用する「保険外併用療養費制度」を「積極的に活用する」としました。再生医療が保険外診療のままとめおかれれば、その部分を全額自費で支払うか、民間保険でカバーする余裕のある人しか使えなくなります。
規制改革会議答申の骨子
◆雇用分野
・解雇が容易な限定正社員の雇用ルール整備
・長時間ただ働きの合法化
・派遣労働の際限ない拡大
◆保育分野
・株式会社の参入拡大
・施設と人員の基準引き下げ
◆医療分野
・市販薬のネット販売全面解禁
・再生医療に「保険外併用療養費制度」を積極活用