minga日記

minga、東京ミュージックシーンで活動する女サックス吹きの日記

さよなら、ジャッキー・マクリーン

2006年04月02日 | 音楽&CD
 大学1年の終わりに、初めてジャズを習いに土岐英史氏の教室に行った。当時土岐さんは山下達郎のグループなど、スタジオミュージシャンとしても超売れっ子。彼のジャズライブを新宿の<タロー>に聴きに行きレコードにサインを求めたあとで「どうすれば、土岐さんのようにジャズが吹けるようになりますか?」「俺、教えているよ。明日教室があるから来れば?」「はい、行きます!」

 翌日、調布の学校を訪ねて行くと、麻雀屋を改装したような小さな建物。<どんなレッスンだろう?>わくわく、どきどきしながら教室に入っていくと、テナー吹きのおじさん、現役音大生(今、活躍中の藤陵君)など様々なサックス吹きが大集合していた。そう、合同レッスンなのだ。そこで待つ不安げなソプラノを持つ少女(って私の事)、憧れの土岐さんはなかなか教室に現れない。受付に行くと土岐さんがコーヒー飲んでる!「あ、本当に来ちゃいました。宜しくお願いします。」ににこにこしながら「うん。君はプロになる気はあるの?」ええ~~~?いきなりそんな事言われたって・・・でもいいえ、ただ、土岐さんのファンだったんで、なんて言ったら手を抜かれてしまうかも知れない、ここはひとつ・・・「はい、もちろんあります。」きっぱりと答えてしまった私。

 土岐さんのクラスは本当に上手い生徒ばかりで圧倒されっ放しだったが、土岐さん自身はテープ流して時々居眠りをしている。それでも、土岐さんに聴いてもらおうと、コピーしてきた曲を次々に披露していく生徒たち。肝心なところでは目をあけて感想を一言...さっきまで寝てたのに、す、すごい。まるで聖徳太子のようだわ、と感心していると私の番が。「さっちゃんも手始めにブルースの演奏をコピーしてごらん。」ブルースって何かもよくわからないまま、土岐さんご推薦「Cool Struttin'」の中のマクリーンのアルトソロをコピーをする事になった。

 初めてのコピーがジャッキ-・マクリーンだった事もあり、彼の太いアルトの音が大好きになった。その頃は今のような便利な機械はなく、オープンリールの古い機械が家にたまたま残っていたので、それに録音して半分のスピードに落とし早いフレーズなどを必死に聴き取ったりしたのだ(いつの時代?)。土岐クラスの生徒の大半はマクリーンのCool Struttin'はコピーしていたんではないだろうか。未だに私も生徒にこれはお薦めよ、とマクリーンのコピーをさせる事がある程だ。

 マクリーン独特の音とフレーズはいつでもどこでもすぐにわかる。一つコピーするとたいてい同じようなフレーズが他の曲にもちりばめられている。しかし晩年はフリーでオーネットのように演奏したり、彼の中でいろいろな実験音楽をやっていたように思う。死ぬまで進歩しようと追求する姿はやはり音楽家として見習うべきもの。オーネットより若い、72才。ミュージシャンとしては早過ぎる死だった。合掌。