レイはVサインをして笑っている。
ザンはカメラ目線ですらなく、不機嫌そうにしており、そんなザンを心配そうに見ている歩。
蓮はちっとも楽し そうな表情ではないが、しっかりとカメラを見据えていた。
左端で敦と葉月が並んで微笑んでいる。
敦のいつもと変わらない斜に構えた笑い方を見て、葉月は泣きながら笑う。
全然…変わってないんだから…」
ザンは無言で立ち上がり、再びボールをゴールに投げ入れては拾っている。
葉月は座ったまましばらく泣きながら写真に見入っていた。
いつかまた会えるだろうか。
きっと会えるだろう。
希望を繋ぐように、涙をぬぐって立ち上がったのだった。
葉月は一人で星村研究所跡に訪れていた。
見上げるだけで寒気がする。
どうしてこう、夜に見る人の使わなくなった廃墟は怖いのだろう。
しばらくそうして見上げていたが、意を決してホイッスルをくわえた。
思いっきり冷たい空気を吸い込み、 吹くと、
ピーーーーーーーーーーーッ
と甲高い音が響き渡る。
冬の澄んだ空気に、綺麗な音が溶けるように消えて行く。
(ザン、…いるよね?)
自分の勘を信じて心の中で呼びかけると、どさっと重い音がして、そちらを見るとザンが木の上から飛び降りたところだった。
ザンはあたりを伺いながら駆け寄って来た。
…葉月?」
びっくりした?ごめんね驚かして」
葉月は笑いながら首から下げたホイッスルを、背伸びをしてザンの首にかけた。
どうしてこんなところにいる」
それはこっちの台詞だよ。探したんだよ?」
……」
これ、返しそびれてたから…」
葉月はザンの胸に光るホイッスルに触れて笑った。
何をしに来た」
ザンを連れ戻しに来たに決まってるでしょ!」
俺は、戻るつもりはない」
ダダこねないで帰ろうよ。明日さえ終れば解放されるんだよ?」
ザンは何も言わずに目を伏せる。
せっかくここまで頑張って来たんだし、皆で終らせて、笑ってさよならしよう?」
言い聞かせるように葉月がザンの手を取ると、冷たい手がぎゅっと握り返して来た。
すがりつくように、小さな男の子が母親の手を握るように。
…」
葉月はため息まじりにザンの手を引く。
管理事務所でタクシー呼んでもらって、一緒に帰ろう?そういえば、あの時もそうすればよかったね。」
管理事務所目指して歩き出したが、ザンはてこでも動かないつもりらしい。つんのめりそうになって振り返ると、ザンが手を離した。
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