鼎子堂(Teishi-Do)

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『人妻魂(嵐山光三郎・著)』―②(良妻編)

2007-10-26 19:35:45 | Weblog
朝、通勤の途中で雨になりました。霧のような雨になったり、シャワーのような雨になったり、降り方もいろいろ変化のある雨です。

昨日に引き続いて、嵐山光三郎さんの『人妻魂』。
本日は、良妻編。

元の職業は、芸者さんですが、泉鏡花の奥さんとなった泉すずさん。
元芸者ってことで、さぞかし、周囲から反対されたんでしょうねぇ・・・。
著者の嵐山さんは、冒頭で、こんなふうに書き出しています。
『仮に、あなたの息子さんが「僕、芸者と結婚します」と言ったらどうしますか。「ばかやろ。十年早い」としかりとばすか、「わかった。そのかわり、おまえんとこで毎晩、三味線弾いて酒のませろ」と開き直るか、のどちらかでしょう。』
・・・こんなふうに書き出していて、つい笑ってしまいます。全編こんなかんじでとにかく、笑っちゃいます。嵐山さんの筆致も読みどころのひとつです。
しかも泉鏡花は、並外れたケッペキーニョ(潔癖症)だったみたいだし・・・。
こんな旦那と暮らせるかい・・・!!!って普通、別れちゃうよね。
階段掃除するにも、上段・中段・下段で、雑巾換えろ・・・なんて言われちゃさ・・・。
鏡花のような変な人は、きっとすずさんがいなかったら、文豪には、なれなかったんでしょうねえ。
お食事もすずさんの作ったもの以外、口にしなかったらしいし・・・。


自殺願望の強かった芥川龍之介の奥さん、芥川文さんもかなりな良妻。
芥川の不倫よりも、自殺を心配されていたということで、芥川が自殺したとき、文さんは、28歳。
芥川の遺体に向って、「お父さん。よかったですね。」と言ったそうです。
夫の自殺願望を理解していた妻だから言えるセリフだと思うのです。
嵐山さんは、芥川が文さんに宛てたラブレターを紹介しています。
『「今、これを書きながら小さいな声で、「文ちゃん」と云ってみました。学校の教官室で大ぜい外の先生がいるのですが、小さい声だからわかりません。それから又小さい声で「文子」と云ってみました。文ちゃんを貰ったらそう呼ぼうと思っているのです。・・・・・」うまいですねぇ。芥川龍之介にこんな恋文を貰えば、みんなまいっちゃう。文学の芥川賞を貰うより、芥川本人を貰っちゃうんですから・・・』


全編、ふふふっ・・・。嵐山さんもうまいよ。


☆☆☆

明日のブログは、お休みです。