まだ八月だというのに、秋のような寒い雨。
午前中・・・。
細かい霧のような雨の中、家人を病院へ送迎。
途中で、今年の2月に倒産した元勤務先のビルの前を通る。
解体が、始まったようで、駐車場には、重機などがあって、窓ガラスは、一部破られ、社名のある看板は、ハズされて、傾きかけていて、駐車場のカーポートは、屋根が壊されていた。
抵当権のある銀行が、某不動産会社に、超格安で、売り渡した物件なのだ。
売買代金は、買値の1/3以下だったと聞いている。
二束三文か・・・。
かつて・・・。
この会社は、設計士の学校と言われた。
優秀な人材も多かったけれど、所詮、学校である。
技術を習得すれば、もっと条件のよい会社に転職するためのステップのために存在するような会社だった。
・・・ワタシに至っては、技術を習得する以前に、派遣に出されて、派遣先の実務(そののち、何のスキルにもならず、役にも立たない)を、日々、こなして、随分と貢献したつもりだけれど、何の評価もされず、人材育成のためにかかる資金を、せっせと稼いでいた。
要するに処理班だった。
仕事ではなく、あくまでも作業者だった訳だ。
いいことなんか、なにひとつもなかった。
嫌なことばっかりで、夜中にこっそり、石でもぶつけてやろうか・・・と思ったくらいだ(今だったら、夜中に、石を投げて、窓ガラスを破っても、なんらお咎めもないだろう。解体途中だし・・・)
まだ8月だというのに、冷たく煙る霧雨のなか、あのビルは、毀されるのを待っている。
いいことなんか、なにひとつなかった会社。
春先から、ゴーストタウンのように、ひっそりとそこに存在した(今は、かろうじて、まだその姿はあるけれど、来月には、跡形もなくなるのだろう)。
さよなら・・・。
ありがとう・・・。
何もいいことがなかった・・・あの会社。