鼎子堂(Teishi-Do)

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真珠夜話④母の真珠

2021-03-24 22:22:22 | 宝石

良く晴れて、4月下旬並みの陽気。

春一色です。

 

正統な真珠のネックレスと言えば、やはり真円の巻きの厚い和珠(アコヤ貝)ということになるかと思います。

母の形見となってしまったこの真珠。

母は、一時期、狂ったように?真珠ばかり買い求めていたのだけれど、いつしか、その熱も冷め、晩年には、

『宝石では、暖まらないから・・・。』

と言い出し、一切見向きもしなくなりました。

それでも、公務員を定年退職した少しあと、最後の真珠を買いました。

やはり、コレ迄のものは、珠が小さく貧相だったし、母最初の真珠は、もう真珠層が、剥がれ落ちた連で、やはり安価なものだったようです。

冠婚葬祭には、やはり良いものをひとつ持っていないと・・・と思ったのでしょうか。

値段を聞いて、びっくりしたことを覚えています・・・もちろん、この真珠のネックレスの他に、10mm越えの和珠とダイヤモンドのついたリングのセットジュエリーだったのですが、リングは、葬儀の日に、父親の違う姉(私は、過去に一度チラっと会っただけという)に、形見分けとして、手渡しました。

彼女も母の娘だし、母親から、たぶん、私の知らない宝飾品を譲り受けていたであろうかと思うのですが・・・詳細は知りません。

両方で、100万円くらいだったと聞いていますが、本当にその価値があったのかどうかは・・・?

ただ、親戚筋からの購入だから、悪いものではないだろう・・・みたいな。

母にとって、最後の宝石となりました。

この真珠のネックレスは、45cmあって、私には、ちょっと長すぎる感じなので、少し短くしてもらおうかと考えています。

糸替えもしなくてはならない時期であろうし。

 

葬儀の朝。

3月のまだ寒い朝、喪服に着替え、このネックレスをつけたとき、首筋に、ヒンヤリと冷たい真珠の感触。

今日は、お骨になってしまう母を送る悲しい日なのに、空は、真っ青に晴れ上がり。

この真珠を見るたびに、葬儀の朝を思い出してしまいます。

 

 


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