夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

2023年11月に読んだ本まとめ

2023年12月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2023年11月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2062ページ
ナイス数:810ナイス

■みかんとひよどり (角川文庫)
グルメ×ミステリー小説が溢れるなか、どのジャンルの料理を取り込むかはある種のニッチ産業のように思います。そうだ、ジビエ料理は今までにない。料理学校では優等生だったのに、いざシェフを任されると次々と店を潰してしまう主人公・潮田。ジビエを偏愛する女性オーナーの目にとまったものの、やはり閑古鳥。猟に入った山で遭難しかけたときに助けてくれたのが無愛想な猟師・大高。なんとも美味しそうな数々の料理。だけど予想していたよりもずっとミステリー。鹿の出没にうんざりするわが家の周辺ですが、本作を読むと少し見方が変わる。 
読了日:11月02日 著者:近藤 史恵

■銀座「四宝堂」文房具店 (小学館文庫 う 15-2)
なにせ一年半前まではガラケーすら持ったことがなく、弟の闘病をきっかけにようやくスマホを買った私は、いまだに電話よりも手紙を書くほうが気分的に楽です。特に文房具に思い入れがあるわけではないけれど、字は万年筆で書きたいし、ノートも絵葉書も常備アイテム。文房具店が舞台という小説は結構ありますが、本作は文房具店のオーナーが客に出すお菓子や、オーナー行きつけの喫茶店、あるいは客が勤める店の一品が登場する合わせ技が駆使されていて飽きません。特に好きだったのは最終章のメモパッド。わが家のメモパッドも勿論ずっとロディア。
読了日:11月06日 著者:上田 健次

■契り橋 あきない世傳 金と銀 特別巻(上) (ハルキ文庫 た 19-31)
スピンオフも2本立てですか。なんといってもいちばん知りたかったのは、あのとき消息を絶った惣次がどこで何をしていたのか。それが明かされる第1話を読むと、やっぱりこの人は悪人なのか善人なのか判断しかねます(笑)。善人なのに、あまりに出来る女房をもらったせいでひねくれちゃったのかしらん。罪作りな幸。佐助どんのご縁が嬉しく、お竹さんの老眼に失礼ながら笑う。しなびた大根が人の肌に似ているとは知らず、それで縫う練習とは驚いた。ずっと気になっていた賢輔がついに伝えましたね。スピンオフの最後に来る話かと思ったら、ここよ。
読了日:11月08日 著者:髙田 郁

■売春島~「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ~
海沿いの町の売春宿ということから映画『ブロー・ザ・マン・ダウン 女たちの協定』を思い出しつつ読む。しかしこの渡鹿野島は、1軒だけ売春宿があるなんてものではなく、島全体が売春に関わり、それで潤った島。借金の形に連れて来られた女性もいるけれど、進んで金を稼ぎに来た女性もいる。暗くて痛々しいイメージしかなかったのに、一度行ってみたいとすら思わされます。性風俗にまつわるノンフィクションを読むときは、私には好奇心しかないわけですが、その好奇心を十分に満たしてくれる1冊。だけどこんな感想を持っていいのかどうかは疑問。
読了日:11月14日 著者:高木 瑞穂

■しかもフタが無い (ちくま文庫 よ-32-1)
ヨシタケさんが絵本作家としてデビューしたのは2003年。そのデビュー作を筑摩書房が文庫化しちゃいましたというもの。ひとつひとつに脈絡があるのかないのか、なんとなくこちらは戸惑う。添えられた字も今と変わらないように見えつつも、上手下手とは関係なくちょっぴり読みにくかったりして、うん、確かに若かりし頃の作品だろうと思わされます。今よりもほんの少し悪意を感じる一節もある(笑)。だけど若くてもやっぱりヨシタケさんはヨシタケさん。いくつかはその言葉に感じ入り、いくつかはふきだしてしまう。そして切ない。そこが好き。
読了日:11月15日 著者:ヨシタケシンスケ

■刑事さん、さようなら (中公文庫)
『ぼくと、ぼくらの夏』にハマって大人買いしたけれど、積んだままにしているうちに著者が亡くなってしまった。そんな歳でもなかったのに。10年前に刊行された本作を読みはじめたら、そうそう、私はこの丁寧さが好きだったと改めて思う。若干の知的障害があるとおぼしき彼のワイズクラックな話し方には『枯葉色グッドバイ』を思い出したりも。小説家としてなかなか芽の出なかった著者が自宅で亡くなっているところを発見されたと聞くと、悲しい人生を想像してしまうけど、幸せかどうかは人が決めることじゃない。本作のヨシオを見てよりそう思う。
読了日:11月20日 著者:樋口 有介

■動機 (文春文庫)
余談ですが、父の蔵書を整理し始めました。たいした数ではなかろうと思っていたのに、数千冊は下らない。大型チェーンと老舗の古書店へ査定に出したものの、ネットでも読める今、小説は特に売れないそうで。これはそんな中の1冊で、父が21年前に読んだ印が。スマホもなかった頃に書かれたミステリーは、いま読むと時代遅れの感がありつつもなんだか安心できます。しかし今の時代の小説とは異なる暗さがあって妙に悲しくなる。そうか、本作はあの『64(ロクヨン)』と同じD県警の話か。『64』ですら刊行は10年前。感慨深いものがあります。
読了日:11月24日 著者:横山 秀夫

■こちら空港警察 第3話 【単話】こちら空港警察 (野性時代連載)
映画を観に劇場通いする日が続いていたらほとんど本を読めず、冊数稼ぎのためにこのシリーズに着手したのに、第2話まで読んだきりになっていました。読むのが速くない私でも15分あれば1話読了できるだけあって、たいした話じゃありません(笑)。でも第3話まで来ると、成田空港グランドスタッフの咲良がビビる仁志村署長にも興味が湧いてくる。第2話までに仁志村の外見についての描写ってありましたっけ。冴えないオッサンをイメージしていたらイケメンらしい。彼に目をつけられるとどんな人物も完全犯罪不可能と思われます。続きに急行する。
読了日:11月30日 著者:中山 七里

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2023年10月に読んだ本まとめ

2023年11月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2023年10月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1954ページ
ナイス数:495ナイス

■ルポ西成~七十八日間ドヤ街生活~
今春から毎月1回必ず動物園前に出かける機会があり、あの辺りに関心が向いています。とはいうものの、それは今に始まったことではなく、これまでもさまざまな映画を観ています。特に印象に残っているのは、本作同様に取材のために西成に移り住んだ映画監督による『解放区』でした。ノンフィクションのようなフィクションで、でもモキュメンタリーとは少し違う不思議な作品でしたが、これが西成なのだと放心した記憶があります。本作を読むとそのときのことを思い出す。今は外国人観光客でにぎわう新世界だけど、新世界国際劇場には絶対入れません。
読了日:10月01日 著者:國友 公司

■ほねがらみ (幻冬舎文庫 ろ 1-1)
先日『近畿地方のある場所について』を読んだばかりです。ホラーは苦手なのにどうしてこんな本ばかり手に取ってしまうのか(笑)。私は『近畿地方の~』のほうが怖かったですが、こちらのほうが断然好み。そもそも「はじめに」で挙げられた作家みんな好き。特に三津田信三に惹かれているとのことだから、私にとってハズレになるはずもなく。その昔、映画『シャイニング』を観て以来、確信していることがあります。視覚的に最も怖いのは同じ文字あるいは文章の羅列。そして澤村伊智の著作のタイトルにもあるような、異様な響きを持つ意味不明の言葉。
読了日:10月05日 著者:芦花公園

■ロックンロール・トーキョー (小学館文庫 き 14-2)
いつ読んでもそんなに文章が上手いと思えない。でもさっさか読めちゃうし、なんか楽しいのよねぇ、しかも不覚にも泣いてしまうこともあるし。そう思っていました。わかりやすさを狙っていたのだということ、バランスを大事にしているのだということを知り、ますます半太ファンになってしまった。実際の映画や俳優を思い浮かべながら、彼の人生そのまんまの物語を読むのは最高。『リトル・ミス・サンシャイン』など、タイトルが挙がる映画も私のツボ。ようやく自分で監督することが叶った『ロックンロール・ストリップ』、めっちゃ好きだよ半太さん。
読了日:10月10日 著者:木下 半太

■三日間の幸福 (メディアワークス文庫)
金に困って自分の寿命を売ることにした主人公。そもそも寿命はそんなに長くないことがわかって、それでも30年売れば何億円かせめて何千万円にはなるかと思っていたのに、30万円って。そりゃ凹む。余命が1年を切るころに自暴自棄になる人が多いという話に、私のが癌で余命宣告されたときのことを思い、自暴自棄どころか達観していたよと改めて思う。「阪神勝ったねとか、大谷打ったねとか、そんなことを喜びながら過ごして行けたらいい」と言っていたこと。あと3日、元気じゃないと幸せに過ごすことは難しいけれど、そんなふうに過ごせたら。
読了日:10月15日 著者:三秋 縋

■紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
凄惨な現場に転がる指3本。そして肝心の死体はない。どういうことだよと想像力をかき立てられるなか、毎度赤堀先生に振り回される岩楯刑事の姿が気の毒ながら面白い。今回の相棒ワニさんにはいつも赤堀先生への敬意が感じられるから好き。しかしイケメンではなさそうなのは残念(笑)。新たに設けられた捜査分析支援センターの面々も個性豊か。ムカデに咬まれたことはあるけれど、やけど虫は知りません。絶対にお目にかかりたくない。赤堀先生の過去が少し見えてきて、次巻への期待が高まります。ただの虫好きじゃないんだとしみじみ思ったこの巻。
読了日:10月20日 著者:川瀬 七緒

■迷塚 警視庁異能処理班ミカヅチ (講談社タイガ)
よろず建物因縁帳藤堂比奈子けっぺーちゃんと、次々シリーズにハマってはロスに陥るというパターンを繰り返してきました。隙間をしのいだフロイトもまぁまぁだったけど、イマイチだと思った微生物研究室は1冊で飛び、同様に最初はイマイチに思えた憑依作家は今はそれなり。そして現時点で大本命となり得るのは鳴瀬清花かこのミカヅチシリーズ。掴みの女性描写は夏に震えて読みたかったほどでしたが、以降は事件そのものよりも各者の背景が綴られて、三婆ズの出会いにも驚かされました。よろず建物の小林教授の登場が嬉しすぎる。もっと絡んで。
読了日:10月28日 著者:内藤 了

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2023年9月に読んだ本まとめ

2023年10月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2023年9月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2547ページ
ナイス数:795ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly/2023/9

■六人の嘘つきな大学生 (角川文庫)
『ノワール・レヴナント』が結構好きでした。それよりもこっちのほうが面白いとの噂。本当でした。こんなにも時代は変わっているのに、確かに就活だけは何十年も変わらない。私はスマホもエントリーシートもない時代に就活した世代ですが、面接やグループディスカッションなどはそのままなのですね。たったひとつの採用枠をめぐる争い。その最終選考で、自分を含む6人の中から採用に最もふさわしい人を自分たちで決めるとは。イヤミスの終わり方もあり得ると想像していたら、なんとも温かい気持ちになる「それから」。波多野くんの冥福を祈ります。
読了日:09月03日 著者:浅倉 秋成
https://bookmeter.com/books/21091110

■こちら空港警察 第1話 【単話】こちら空港警察 (野性時代連載)
最近ひと月の読書数が激減していて、なぜなのだと自問したら、ほぼ毎晩劇場に足を運んで映画を観ているからだと気づく。今月こそもうちょい読みたいと思ったときに、DMでしつこく薦められているこれなら冊数を荒稼ぎできるんじゃないかとひらめき、本は紙で読む派だけど手を出してみました。七里ファンとしてはそりゃ物足りない。でも、そんなに読むスピードが速くない私でも20分とかからずに読了できて、1冊にカウントできるお得感(笑)。そのうえなんとなく自分も空港に居合わせているような気分になれるのです。とりあえず既出の全話購入。
読了日:09月06日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/20488232

■こちら空港警察 第2話 【単話】こちら空港警察 (野性時代連載)
そんなわけで、毎晩劇場通いして映画を観て帰っても、これなら日付が変わるまでに2話ぐらい読めちゃいます。「冴子」ってどこかで聞いた名前だなと思ったら、『逃亡刑事』のアマゾネス刑事ですね。あれを読んだときにはただただガタイがよさそうで、ガル・ガドットのイメージしかありませんでしたが、これを読んだらもう少し和風な感じがしてきました(笑)。アマゾネスが冷酷非情な人と思っているふしのある警察署長の仁志村。彼の見立てに狂いはないみたい。今後どんな事件を片付けて行くのか、グランドスタッフの咲良目線で楽しめそうです。
読了日:09月06日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/20594173

■ハーメルンの誘拐魔 刑事犬養隼人 (角川文庫)
『こちら空港警察』に手を出した勢いで、長らく積んだままだった本作も読む。七里センセは著作が多すぎて、なかなか制覇できそうにありません。このシリーズは映画化されたのをきっかけにまず第4作を読んだから、綾野剛北川景子の顔しか浮かんでこない。第1作からようやく第3作に辿り着いた今も、そのおかげでより速く読めます。社会問題をいち早くご自身の小説で取り上げる腕はさすがとうなるばかり。子宮頸がんワクチンの副反応は、ちょうど本作の発行年に取りまとめられたようですね。このような思いをしている人は実際にいるかもしれない。
読了日:09月07日 著者:中山 七里
https://bookmeter.com/books/12453604

■潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
ハマり中のシリーズ。存在を数年前まで知らなかったおかげで既刊巻を大人買いしたから、まだ続けて読めるのが嬉しい。本巻の単行本が出版されたのは2016年。当時アカカミアリは硫黄島や沖縄島などでしか見られず、本巻発行の数年後に各地の港でも発見された様子。先取りしているのも凄い。今までの岩楯刑事の相棒に比べると今回の兵藤刑事にはあまり愛着が湧きません。でも赤堀先生に振り回されているうちにきっと変わる。「私を信じなさいって。悪いようにはしないから」「今まで、悪いようにしかしてこなかっただろうが」にふきました(笑)。
読了日:09月13日 著者:川瀬 七緒
https://bookmeter.com/books/13451358

■近畿地方のある場所について
感想を書くに当たり、記述を確かめたくても怖くて頁を戻れない(泣)。数々の怪異は黒丸の伏せ字にされたどこかで起こったこと。おいでおいでと呼ぶ人、意味のわからない言葉を叫ぶ人々、自殺が多発するマンション。ほら、こうして書いていると思い出してぞわぞわする。とにかく終始暗くて不気味。オカルトなんだからそれも当然か。しかも残りのページが少なくなってくると、本が「きゅるる」と軋む音がするのよ(涙)。中扉は黒地に白抜きの文字、巻末の取材資料なるものも同様で袋とじ。怖くて開けられません。読み返したくないモキュメンタリー。
読了日:09月15日 著者:背筋
https://bookmeter.com/books/21248687

■私の唇は嘘をつく (二見文庫 ク 12-2)
冒頭、ジャーナリストのキャットの様子を見て、不動産業者のふりをするメグはとんでもない詐欺師なのだろうと想像する。ところがいまいちキャットに肩入れできないまま進むうち、メグもある人物に騙された過去があり、目的があって詐欺を繰り返していることがわかります。同著者の『プエルトリコ行き477便』のほうが好みではあるものの、これも心が震える読み応え。最近は国内小説ばかり読むようになったけれど、こんなのを読むともっと海外小説を読みたくなる。落ち込むだけなら誰でもできる。「正義」と「復讐」は違うということ。これは正義。
読了日:09月22日 著者:ジュリー・クラーク
https://bookmeter.com/books/20526344

■スイート・マイホーム (講談社文庫)
斎藤工が齊藤工名義で撮った映画を観たとき、まったく予想できなかった超バッドエンドに戦慄し、これの原作は決して読みたくないと思いました。しかしやっぱり気になるじゃないですか。平屋であること、天井裏と往復するルート、妻が夫の浮気にもともと気づいていたことなど、映画版と原作では異なる点がいくつかありますが、斎藤工は巧い。本田が恐ろしいのはもちろんですが、妻が狂っていくさまが何よりも怖い。どちらもオチそのものが映し出されなくてよかったけれど、ついついユキの眼を想像してしまいます。読後感は最悪。でも面白いのが困る。
読了日:09月27日 著者:神津 凛子
https://bookmeter.com/books/17969141

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最近ハマっている本、“法医昆虫学捜査官”シリーズ。

2023年09月14日 | 映画(番外編:映画と読み物)
劇場に5日間行かなかったら、ネタが尽きました。
毎日劇場に行けば書くことありすぎで、速攻で打ち切りになってしまう作品も多いから、
このブログで紹介する頃には上映している劇場がもうないなんてこともありますし、
ちょっと劇場通いをさぼったらネタがなくなるし、困ったものです。
 
でも今回はさぼっていたわけではないのです。
生きている間には拝めないかと思っていた阪神タイガースのアレが現実的になってきたから、
映画を観ている場合じゃない。と言いつつ、試合を観るのが怖かったりもします(笑)。
 
そして、先週は92歳の母がコロナに罹患。
幸いにして発熱していることを除けば元気ではありますが、
高齢で昨年手術した大腸がんが肝転移していることもあって慎重を期し、入院。
今年スマホデビューしたおかげで入院中もLINEを駆使、連絡も簡単です。
とはいうものの、用事は増える一方で、合間には父が入所中の施設からも電話がかかってきたり。
お気楽に劇場通いするのはなかなか厳しい状況です。
 
そんなわけで、ゆっくり読書に没頭する時間もなかなか作れずにいるなか、
今ハマっているのが川瀬七緒の“法医昆虫学捜査官”シリーズ。
子供服のデザイナーでもある川瀬さん。私が初めて読んだのは『女学生奇譚』でした。
京極夏彦を思わせる時代設定が気に入り、1冊でお気に入りの作家に。
 
その次に読んだ川瀬さんの著作がこの“法医昆虫学捜査官”シリーズ。第1作の感想はこちら
単行本が出版されたのが2012年、文庫化が2014年ですから、
私が読みはじめたのは最初の出版から10年経ってからのこと。
もっと早く知りたかったと思う反面、中山七里内藤了の大好きなシリーズとは時を違えて知ることができてよかったような。
読みたいシリーズが同じ時期に集中すると、ほかの作家に手を出せなくなっちゃうから。
 
虫をこよなく愛する法医昆虫学者・赤堀涼子。
昆虫の専門家として事件の捜査に彼女も加わることになります。
童顔の彼女はただでさえ30代後半には見えないのに、嬉しそうに虫取り網を持って現場に登場。
ここには書きたくない虫を被害者の遺体などから見つけることで、死亡推定時刻や殺害場所を見事に割り出してゆきます。
各巻、虫のみならず、海の生物、山の動物などの習性なども赤堀が説明してくれます。
 
たかが虫だろと彼女を見下していた警察官たちが、やがて彼女を認めざるを得なくなる。
最初から彼女に一目置いていた刑事の岩楯は、事件が起こるたびに彼女のお守り役を仰せつかり、
さんざん振り回されながらも共に解決に導いていく様子がとても面白い。
 
そして毎巻、岩楯とコンビを組む事件地元の若手刑事が変わります。
最初から赤堀の仕事ぶりに魅入られて懐く者、どうしても彼女の能力が信じられない者とさまざま。
しかし後者もやがて赤堀に敬意を払うようになります。
 
毎巻変わらず登場するのが、害虫駆除会社代表の大吉くん。
ずんぐりむっくり、ウズベキスタン人とのハーフで、見た目はとても怪しい。
赤堀と旧知の仲である彼が各地で活躍する姿からも目が離せません。
 
第7作が最新作なのですが、出版されたのは2019年(文庫化は2021年)。次巻があるのかどうか不明です。
今のところ私は第5作まで読了。同じ作家は続けて読まないようにしているのに、早く読みたくて仕方がない。

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2023年8月に読んだ本まとめ

2023年09月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
8月も7月と同じく6冊しか読めませんでした。なんでや~。
なんでや~って、仕事帰りに毎日のように映画に行って月30本以上観て、
野球を観に行って、ごはん食べに行って、実家で母と過ごして、
父の皮膚がんの手術に付き添ったら、本読む時間は作れないっちゅうの(笑)。
でも、今月こそもっと読みたい。

2023年8月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:2232ページ
ナイス数:779ナイス

■ヒポクラテスの悔恨(祥伝社文庫な21-4) (祥伝社文庫 な 21-4)
連作短編のような長編。絶対に自然死にしか見えない殺人を暴いてみろという光崎教授への挑戦状が届いたものだから、古手川刑事と真琴先生がピンと来た遺体はなんとか解剖に持って行かねばなりませぬ。最終章までは挑戦状の主の仕業ではなかったけれど、いずれも見せかけの自然死。1章終わるたびに唸ります。「相手の無知に配慮できる」小山内さんとか、脇役も光っている。死人に口無しと言うけれど、死体ときちんと向き合えばいろいろわかるものでしょうか。また全部持って行かれたと憮然とする古手川刑事。次はオイシイとこ取れるように頑張れ。
読了日:08月05日 著者:中山七里

■ときどき旅に出るカフェ (双葉文庫)
新規オープンした店の7割が2年以内に潰れるのが飲食業の現状らしい。そんな中で主人公が通うようになったカフェは、かつての同僚が店主。どんな話にもちょっとした謎を潜ませるのが得意な著者だから、本作も何が起きているのか興味津々。これを読めば、酷暑に減退気味の食欲も湧いてくる。ちなみに本作で「そんな人は聞いたことがない」と言われているけれど、私は月餅大好きです。但し、卵黄入りではなくて、木の実とドライフルーツぎっしりのやつ。そうですか、新刊だと思って読んでいたのに、すでに第2弾が出ているのですね。こりゃ楽しみだ。
読了日:08月06日 著者:近藤 史恵

■メビウスの守護者 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
前作の「ゲスト」はシャコでしたが、今回はタヌキ。しかしやっぱりメインはウジで、それが豪雨のごとく空から降ってくるところなんて絶対に想像したくない。ないのに想像しちゃってる(笑)。岩楯刑事が怯えながらも耐性のついてきているところが可笑しい。そして彼の相棒は必ず赤堀先生の信奉者に。犯人はそれなりに怪しげな人だったけど、殺人の理由はこれまでで最も猟奇的だったかもしれません。香水と聞くと、映画『パフューム ある人殺しの物語』『パリの調香師 しあわせの香りを探して』を思い出します。華麗な世界と狂気の世界は紙一重。
読了日:08月14日 著者:川瀬 七緒

■対岸の家事 (講談社文庫)
訳あって、私は最初から子どもを持つ気がなかった者です。だけど結婚すればしょっちゅう「お子さんは?」と聞かれる。「ほしくないんです」とは言えないから「いいえ」と答えると、同情の目で見られ、可哀想だとすら言われる。結局、既婚でも未婚でも、子どもがいてもいなくても、本作のように誰かから見下される。でも、もしかすると見下すことで生きていられるのかもしれないと思うほど、毎日は大変。みんなできることはちがう。だったら見上げ見下すよりも、お互いを認めて、味方はひとりでも多く。日々の心持ちを教えてもらったように思います。
読了日:08月16日 著者:朱野 帰子

■侵蝕 壊される家族の記録 (角川ホラー文庫)
ずっと、どうして私はこんなにも嫌な話を読んでいるんだろうと思いながら読んでいました。これをただのフィクションとは笑えないような事件が世の中には実存します。マインドコントロールの恐ろしさ。とはいうものの、映画で私がいちばん苦手なのが「老けメイク」。某テレビ番組を観ていても老けメイクにひっかかる人に「なんでやねん、わかるやろ!」とツッコミを入れたくなるため、この犯人にはドン引き。声にも年齢は表れる。違和感バリバリじゃなかったか。犯人のことはさておき、マインドコントロールの行程にはちょっとメンタルやられそう。
読了日:08月21日 著者:櫛木 理宇

■サブマリン (講談社文庫)
前作の『チルドレン』が大好きだったことは覚えていますが、陣内のことを「部下を振り回すハタ迷惑な上司だけど、最後は泣かされる」程度にしか覚えていませんでした。本作もそんな感じで話は進み、ラスト20頁で胸を打たれる。人を撥ねた若者に救いなんてあるものだろうかと思っていたのに、「何でもかんでも機械的に厳しく罰していくわけにはいかない」という陣内の言葉には感極まりました。命の穴埋めはできない。だったらどうすればいいのか。被害者のこと、加害者のこと、いっぱい、いっぱい考えさせられます。こんな家裁調査官がいてもいい。
読了日:08月29日 著者:伊坂 幸太郎

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