2023年4月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2742ページ
ナイス数:771ナイス
■シャイロックの子供たち (文春文庫)
読んだことがあるはずなのに、映画版を観ても一向に思い出せず。読メ開始の遥か前に読んでいた模様。再読してなるほど。登場人物はほぼ同じであるものの、原作は連作短編のうえに、初章の主役は杉本哲太が演じた副支店長だから、映画版とまるでイメージが違う。そして決定的に異なるのは、柄本明演じる爺様が原作には不在ゆえ、倍返しがない。いちばん悪いと思われた柳葉敏郎演じる支店長も単なる小物に終わる原作のほうに驚きました。面白かったけれど詰め込みすぎに思えた映画版も、これの映像化ならそうなるか。西木と阿部サダヲは生きている!?
読了日:04月02日 著者:池井戸 潤
■うつくしが丘の不幸の家 (創元文芸文庫 LA-ま 1-1)
引っ越してきた人に向かって、事故物件でもないのに「この家の住人は不幸になる」とわざわざ言いに来る口さがないオバハン。幸せか不幸せかなんて他人が決めることではないのに、気弱になっているときにはそんな言葉を真に受けてしまいそう。町田そのこの物語に出てくる人たちは、辛い過去を持っている場合が多い。しかし「読み終えた後に、明日もちょっとだけでも頑張ろうと思ってもらえたら」という彼女の言葉どおり、優しい。現在の家から遡る形で、どの住人にとっても後ろ向きな退去ではなかったことがわかります。うん、今日も明日も頑張ろう。
読了日:04月04日 著者:町田 そのこ
■さえづちの眼 (角川ホラー文庫)
今までの平仮名4文字に比べると、本作の「さえづち」はいちばんありそうだから、タイトルの不気味さとしては控えめか。ただ、中身にはやはり終始不穏な空気が漂う。3編とも「母と子」の関係がテーマになっていて、子どもを産み、育て、想うことが歪んだ形であらわれた結果に思えます。もっとガッツリ比嘉姉妹の活躍を見たかった気もするけれど、表題作の琴子姉の格好よさは格別。ニコリともしないクールな彼女なのに、いつだったか“レリゴー”を歌っていたシーンを思い出して笑ってしまう。いずれまたそのギャップを見せてもらえるのでしょうか。
読了日:04月07日 著者:澤村伊智
■逢魔宿り (角川ホラー文庫)
澤村伊智と続けて読んだら、頭の中で話が混在。どちらも擬態語が怖いのよ。ざっざっざっとか、ぺた、とか。もうやめて(笑)。5話独立した「モキュメンタリー」かと思ったら、5話目で全部まとめてかかられたうえに、三津田信三の著作中で私が最もおののいた「入らずの森」まで出てきたよ、と思ったらそれは宇佐美まことでしたね。あれは『ついてくるもの』の中の短編「八幡藪知らず」でした。嗚呼、どうしてホラー苦手なのにこんなに読んでしまうのか。インターフォン怖いがな。で、これ、モキュメンタリーですよね!? 実話ではないことを祈る。
読了日:04月12日 著者:三津田 信三
■掟上今日子の挑戦状 (講談社文庫)
シリーズ全巻積んだまま、いつぶりかの3作目。これだけ強烈なキャラだと、たとえ幾晩眠ろうとも私は今日子さんのことを忘れたりしません(笑)。アリバイ作りのためにナンパしたのが今日子さんとは不運すぎて笑ってしまう。いったん眠ればすべてを忘れてしまう彼女が守銭奴というのも可笑しいし、いつのまにか彼女のペースに巻き込まれて頼ることになるオッサン刑事たちも憎めません。忘却探偵であるがゆえに最速で事件を解決する今日子さん、大好きです。TVドラマ版は未見なのですが、ガッキーはきっとピッタリのキャストだったのでしょうね。
読了日:04月14日 著者:西尾 維新
■少女は卒業しない (集英社文庫)
映画版が思いの外よかったので、原作も読むことに。映画版では卒業式前日から当日にかけての少女たちの様子が同時進行で描かれていましたが、原作では1人ずつ1話ずつ、連作短編形式。登場人物はほぼ同じだけれど、友達ゼロの子にもともと友達がいたり、いろいろと少しずつ違う。何より驚いたのは、原作ではキーパーソンかと思われた田所くんの存在。映画版に彼はいたかしらと記憶を辿るも思い出せず。どちらにも良さがありました。「幽霊って怖いものなのかな。化けてまで会いたい人がいるって、素敵なことじゃないのかな」という言葉が心に残る。
読了日:04月17日 著者:朝井 リョウ
■教室が、ひとりになるまで (角川文庫)
『ノワール・レヴナント』と同様に、特殊な能力を授けられた若者たち。その能力は羨ましがるには結構微妙なもので、相手が嘘をついているかどうか見破るとか、人の好き嫌いがわかるとか、そういったもの。しかも1人に対して3回までしか使えない。だけど使いようによっては人を殺せる力もあるとしたら。私もこんなクラスは嫌いです(笑)。腹の底では何を考えているかわからないのに、全員好きで仲良しなふりをする。毎日息が詰まりそう。だからって殺していいわけはない。こういう状況下にいて鬱々とした日々を過ごしている人には響くと思います。
読了日:04月20日 著者:浅倉 秋成
■クスノキの番人 (実業之日本社文庫)
私は東野圭吾に相当辛くなっていることに気づく。不憫な生い立ちの主人公は、特に拗ねたふうもないけれど逆境をはね返すつもりもないから、流されるままに生きてきました。彼に救いの手を差し伸べたのは、その存在すら知らなかった伯母。彼女から与えられた仕事はなんと「クスノキの番人」。ファンタジーの要素を含む「良い話」でそれなりに没頭して読みましたが、これまで幾度もここに書いてきたように、やっぱり昔の東野圭吾ほどには切なさがないんだなぁ。こうなると、切なさを感じられない最近のこちらに問題があるような気がしてきます(笑)。
読了日:04月30日 著者:東野 圭吾