夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

2023年4月に読んだ本まとめ

2023年05月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2023年4月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2742ページ
ナイス数:771ナイス

■シャイロックの子供たち (文春文庫)
読んだことがあるはずなのに、映画版を観ても一向に思い出せず。読メ開始の遥か前に読んでいた模様。再読してなるほど。登場人物はほぼ同じであるものの、原作は連作短編のうえに、初章の主役は杉本哲太が演じた副支店長だから、映画版とまるでイメージが違う。そして決定的に異なるのは、柄本明演じる爺様が原作には不在ゆえ、倍返しがない。いちばん悪いと思われた柳葉敏郎演じる支店長も単なる小物に終わる原作のほうに驚きました。面白かったけれど詰め込みすぎに思えた映画版も、これの映像化ならそうなるか。西木と阿部サダヲは生きている!?
読了日:04月02日 著者:池井戸 潤

■うつくしが丘の不幸の家 (創元文芸文庫 LA-ま 1-1)
引っ越してきた人に向かって、事故物件でもないのに「この家の住人は不幸になる」とわざわざ言いに来る口さがないオバハン。幸せか不幸せかなんて他人が決めることではないのに、気弱になっているときにはそんな言葉を真に受けてしまいそう。町田そのこの物語に出てくる人たちは、辛い過去を持っている場合が多い。しかし「読み終えた後に、明日もちょっとだけでも頑張ろうと思ってもらえたら」という彼女の言葉どおり、優しい。現在の家から遡る形で、どの住人にとっても後ろ向きな退去ではなかったことがわかります。うん、今日も明日も頑張ろう。
読了日:04月04日 著者:町田 そのこ

■さえづちの眼 (角川ホラー文庫)
今までの平仮名4文字に比べると、本作の「さえづち」はいちばんありそうだから、タイトルの不気味さとしては控えめか。ただ、中身にはやはり終始不穏な空気が漂う。3編とも「母と子」の関係がテーマになっていて、子どもを産み、育て、想うことが歪んだ形であらわれた結果に思えます。もっとガッツリ比嘉姉妹の活躍を見たかった気もするけれど、表題作の琴子姉の格好よさは格別。ニコリともしないクールな彼女なのに、いつだったか“レリゴー”を歌っていたシーンを思い出して笑ってしまう。いずれまたそのギャップを見せてもらえるのでしょうか。
読了日:04月07日 著者:澤村伊智

■逢魔宿り (角川ホラー文庫)
澤村伊智と続けて読んだら、頭の中で話が混在。どちらも擬態語が怖いのよ。ざっざっざっとか、ぺた、とか。もうやめて(笑)。5話独立した「モキュメンタリー」かと思ったら、5話目で全部まとめてかかられたうえに、三津田信三の著作中で私が最もおののいた「入らずの森」まで出てきたよ、と思ったらそれは宇佐美まことでしたね。あれは『ついてくるもの』の中の短編「八幡藪知らず」でした。嗚呼、どうしてホラー苦手なのにこんなに読んでしまうのか。インターフォン怖いがな。で、これ、モキュメンタリーですよね!? 実話ではないことを祈る。
読了日:04月12日 著者:三津田 信三

■掟上今日子の挑戦状 (講談社文庫)
シリーズ全巻積んだまま、いつぶりかの3作目。これだけ強烈なキャラだと、たとえ幾晩眠ろうとも私は今日子さんのことを忘れたりしません(笑)。アリバイ作りのためにナンパしたのが今日子さんとは不運すぎて笑ってしまう。いったん眠ればすべてを忘れてしまう彼女が守銭奴というのも可笑しいし、いつのまにか彼女のペースに巻き込まれて頼ることになるオッサン刑事たちも憎めません。忘却探偵であるがゆえに最速で事件を解決する今日子さん、大好きです。TVドラマ版は未見なのですが、ガッキーはきっとピッタリのキャストだったのでしょうね。
読了日:04月14日 著者:西尾 維新

■少女は卒業しない (集英社文庫)
映画版が思いの外よかったので、原作も読むことに。映画版では卒業式前日から当日にかけての少女たちの様子が同時進行で描かれていましたが、原作では1人ずつ1話ずつ、連作短編形式。登場人物はほぼ同じだけれど、友達ゼロの子にもともと友達がいたり、いろいろと少しずつ違う。何より驚いたのは、原作ではキーパーソンかと思われた田所くんの存在。映画版に彼はいたかしらと記憶を辿るも思い出せず。どちらにも良さがありました。「幽霊って怖いものなのかな。化けてまで会いたい人がいるって、素敵なことじゃないのかな」という言葉が心に残る。
読了日:04月17日 著者:朝井 リョウ

■教室が、ひとりになるまで (角川文庫)
『ノワール・レヴナント』と同様に、特殊な能力を授けられた若者たち。その能力は羨ましがるには結構微妙なもので、相手が嘘をついているかどうか見破るとか、人の好き嫌いがわかるとか、そういったもの。しかも1人に対して3回までしか使えない。だけど使いようによっては人を殺せる力もあるとしたら。私もこんなクラスは嫌いです(笑)。腹の底では何を考えているかわからないのに、全員好きで仲良しなふりをする。毎日息が詰まりそう。だからって殺していいわけはない。こういう状況下にいて鬱々とした日々を過ごしている人には響くと思います。
読了日:04月20日 著者:浅倉 秋成

■クスノキの番人 (実業之日本社文庫)
私は東野圭吾に相当辛くなっていることに気づく。不憫な生い立ちの主人公は、特に拗ねたふうもないけれど逆境をはね返すつもりもないから、流されるままに生きてきました。彼に救いの手を差し伸べたのは、その存在すら知らなかった伯母。彼女から与えられた仕事はなんと「クスノキの番人」。ファンタジーの要素を含む「良い話」でそれなりに没頭して読みましたが、これまで幾度もここに書いてきたように、やっぱり昔の東野圭吾ほどには切なさがないんだなぁ。こうなると、切なさを感じられない最近のこちらに問題があるような気がしてきます(笑)。
読了日:04月30日 著者:東野 圭吾

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2023年3月に読んだ本まとめ

2023年04月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2023年3月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3349ページ
ナイス数:604ナイス

■ノワール・レヴナント (角川文庫)
今年は絶対ひと月に10冊読むぞと決めていたのに、本作に手を出したせいで既にアウト。薄い本なら優に3冊分はある760頁超。2月にして早くも目標を達成できなかったのは残念だけど、3冊分以上の楽しさがありました。見えないものが見える、聞こえないものが聞こえる、読めないものが読める、何でも壊せるという能力を持つ高校生4人が引き合わされて陰謀に挑む。どの場面にもドキドキさせられ、それぞれの面白いキャラにも惹かれます。あのクズ野郎を壊してやってほしかったけれど、そうしなかったのもたぶん良いところ。こんな青春、好きだ。
読了日:03月01日 著者:浅倉 秋成

■大河への道(河出文庫)
映画版は公開時に劇場で鑑賞済みです。1冊のボリュームとしてはすぐ読了できる程度に薄め。だけどいくら薄めといえども、これを丸ごと1時間半かけてしゃべる落語家がいるとは信じがたい。オリジナルである立川志の輔の落語をめちゃめちゃ聴きたくなります。映画版と大きく異なる点は、脚本家がベテランではなくてわりと若いということ。映画版の橋爪功には笑わされました。それから、映画版は原作以上に問題が勃発。しかし200頁付近の、上様の前に地図が広がるシーンは、映画版未見の人にはぜひご覧いただきたい。ジワッと来て涙目になります。
読了日:03月04日 著者:立川志の輔

■旅のオチが見つからない インド&南アジア混沌ドロ沼!一人旅 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)
昨年から「追いRRR」中でとりあえず10回劇場に足を運んだ私としては、インドがメインのこの旅の話を見逃すわけにはいきません。残念ながら『RRR』の舞台となっている辺りは出てこないけれど、めっちゃ面白かった第1弾に続き、食べ物の描写は特に秀逸。『RRR』の中でアクタルが食事していたシーンなども思い出されて嬉しくなります。売り切れた料理の代わりの対応には怒る気も失せるどころか爆笑。それが当たり前のインドって、いいなぁ。インドへの興味は強くなったけど、だからって私に著者のような旅ができるかと言われたら絶対ムリ!
読了日:03月07日 著者:低橋

■復讐の協奏曲 (講談社文庫)
御子柴弁護士事務所のスーパー事務員の正体が明らかになります。凄いリーダビリティ。あっというまの370頁。生まれついてのサイコパスはこの世にいると思うし、そういう人たちの矯正だとか更生だとかはできないと思っています。だけどこのシリーズを読んでいるときだけは、できるかもしれないと思う。自らが起こした殺人事件について反省の弁を語ることは一切なく、許しを請うこともない。ただ淡々とすべきことをするだけ。そんな彼の姿に胸が詰まりそうになったことが何度か。倫子ちゃんは確実に将来の中山七里作品の主人公になり得る。来い!
読了日:03月08日 著者:中山 七里

■闇に堕ちる君をすくう僕の嘘 (双葉文庫 さ 47-02)
ここ数カ月間に読んだ本のタイトルに「嘘」と付くものが目立ちます。『嘘つきは殺人鬼のはじまり』とか『誠実な嘘』とか。嘘の話はどれもたいてい嫌な感じに終わる。それらに比べると本作は救いがあったけれど、終盤まで先がまったく見えず、主人公の太輝と巫香の関係を見守ることになりました。巫香の身に何が起きたのかを知ったときにはあまりに唐突な気がして、ここでこの嘘はどうなんだろうとちょい疑問。予想しなかった展開に、『3年B組金八先生』の中学生カップルを思い出したりなんかもして(全然違うけど)。売れそうなタイトルですよね。
読了日:03月13日 著者:斎藤 千輪

■カケラ (集英社文庫)
私にとって湊かなえ辻村深月は「好きではないけれど必ず読んでしまう作家」の二大巨頭です。しかしこのところ、後者は好きになりつつあって、それというのも「切なさ」を感じられるようになったから。切ない作家が好きなんです。前者はやっぱり切なくない。なのに面白くて止まらない。自殺した少女について、美人カリスマ美容外科医が聞き取りをおこなう。関係者らのモノローグ形式で構成されています。「いじりというのは、いじられた側に得がないとそう呼んではいけない、得がなければそれはいじめ」という、「いじり」の定義が印象に残ります。
読了日:03月20日 著者:湊 かなえ

■シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
大人買いしたシリーズ。第1弾の後すぐに読みたかったところをこらえて7カ月。何もこんなに辛抱しなくてもよかったのに(笑)。プロローグは三津田信三×内藤了のようで期待が膨らむ。赤堀女史が登場すると一気に明るくなるけれど、期待に違わず。昆虫はわりと苦手な私ですが、なぜか昔からトンボを捕るのだけは得意で、今でも素手で捕まえられます。しかしトンボに性モザイクなんてあることも知らなかったし、昆虫業界がどういうことになっているのかもわかって、あらゆる点で興味を引かれました。刑事と女史のロマンスはないままでお願いします。
読了日:03月27日 著者:川瀬 七緒

■禍事 警視庁異能処理班ミカヅチ (講談社タイガ)
前巻までの怪異に比べるとおとなしめというのか、起きる怪異そのものよりも、幽霊上司・折原の過去だったり主人公・怜の生い立ちだったりが紹介される巻になっています。とはいうものの、冒頭で怜が出くわす怪異は勘弁してほしいぐらい凄絶ですけれど。折原警視正の家族と怜が会うシーン、その話を警視正が聴くシーンには涙がこぼれそう。怜がこのチームに居場所を見つけたことが改めて嬉しくなります。ミカヅチ班とその周辺の誰もが魅力的。私はオカルトは信じ(たく)ない派ですが、それでも面白半分に足を踏み入れてはいけない場所はきっとある。
読了日:03月28日 著者:内藤 了

■羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界 (集英社新書)
失礼ながら著者のことを存じ上げず、映画『エゴイスト』を観た後で彼のことを知りました。羽生結弦くんの単なるミーハーファンである私は、もっとおちゃらけた羽生くん談義を想像していましたが、どっこいとても真面目に彼のことを考察していらっしゃいます。フィギュアを「いっぱい回った」とか「高く飛んだ」とかそんな視点でしか観ていなかったので、こうして羽生くんのみならず、ほかの選手についても細かく説明してもらえるのは面白くありがたい。丁寧な語り口調も嬉しくなります。著者がすでにお亡くなりになっていることが残念でなりません。
読了日:03月30日 著者:高山 真

■手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ) (小学館文庫)
今日で3月も終わりで、10冊読了を達成するために何か薄い本と思ったら、もうこれを読むしかないじゃないですか。近頃こんな読み方ばかりしていてごめんなさい、穂村さん。彼に憑依した少女の短歌って、いったい何なんですか。そういう妄想の設定なのかしらと思いましたが、読了後の今もこれがホンモノとは思いづらくて、やはり妄想なのか、というよりも妄想であってほしいと思わなくもない(笑)。あとがきにある或るお方の言葉、「正直、あれには引きました」。申し訳ありません、私も同感でございます。才能のかけらもない私には詠めないけど。
読了日:03月31日 著者:穂村 弘

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2023年2月に読んだ本まとめ

2023年03月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2023年2月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1005ページ
ナイス数:541ナイス

■ありがとう、さようなら (角川文庫)
実際のところ、中学生が何十人もいるクラスで全員よい子だなんてことはまぁないと思うんです。だって中学生ですよ(笑)。これはあくまで私の場合ですが、小学校、中学校、高校、大学ときた学校生活を振り返ると、中学校が特段にややこしかった。語弊のある言い方かもしれないけれど、小学校はただ無邪気、高校大学は同じ程度のアタマが集い、中学校は最も混交で。だから、こんな素晴らしい生徒たちばかりというのは嘘でしょと思わなくもない。でも瀬尾先生のクラスは本当にそうだったに違いないと思えます。N君はどうしていますか。会ってみたい。
読了日:02月02日 著者:瀬尾 まいこ

■奇跡のバックホーム (幻冬舎文庫)
阪神ファンを公言しているにもかかわらずもしもこの話を知らない人がいるとしたら、その人は似非阪神ファンだと思います(笑)。大いに期待されながら入団たった4年目で脳腫瘍に侵され、大手術ののち闘病生活を送る。体は動かせるようになったものの、視力が回復せずに引退を決意。その日に至るまでを本人が綴っています。引退試合での彼のバックホームはまさに奇跡。昨年6月に亡くなった弟にちょうど1年前にその動画を見せたら、「号泣だわ。涙なしには見られへんね」と言っていました。そんなことも含めていろいろと思わせられる大事な本です。
読了日:02月05日 著者:横田 慎太郎

■二木先生 (ポプラ文庫 な 17-1)
生徒の間で特に人気者ではないけれど嫌われてもいない、「普通」のポジションを確保している先生。彼が実はロリコンで、副業としてエロ雑誌を描く漫画家だと知ったら。しかもそれを知ったのは友達ゼロのコミュ障の生徒。小児性愛者と聞いただけで怖気が走るけれど、生来の自分の嗜好を認識して抑えている人も存在するということ。殺したいと思うのと本当に殺すのが違うように、幼女を性的対象として見ることと実際に行動に移すのとは違う。誰にも言えず、ただ「普通」を装って生きて行くと決めた、そんな人も世の中に大勢いるのだろうと思ったりも。
読了日:02月06日 著者:夏木 志朋

■不動のセンター 元警察官・鈴代瀬凪 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
なんたら捜査官だれそれ、とかいうタイトルのシリーズって誰が最初に始めたものなのでしょう。それなりに興味を引かれて食いついてしまう。本作はあの『スマホを落としただけなのに』同様に“このミス”の隠し玉受賞作。『スマホ~』の原題が『パスワード』だったように、本作の原題も『不動の謀者』とのこと。タイトルは大事。で、肝心の中身はというと、警察学校を首席で卒業した女子が警察官を辞めてアイドルになったと思ったら実は潜入捜査していたという。面白い設定だけど、私はまだ登場人物に惹かれるところまでは行かず。今後に期待します。
読了日:02月10日 著者:柊 悠羅

■あるかしら書店
積読の山からヨシタケさんを引っ張り出すのは、ちょっと今月の冊数を稼ぎたいときです。すみません。今さらの感のある大人気本を本当に今頃読む。『その本は』を読む前だったならば、もっとニヤニヤしながら読んでいたかもしれません。あれを読んでしまった後ではこちらのほうが若干小粒のような気がして。それでもニヤニヤは止まらない。この書店の店主と、いかなる覚え違いにも対応してくれる福井県立図書館の方々がいらっしゃれば、私たちはきっとずっと本を楽しめる。それにしてもカリスマ書店員はもう少しぐらい睡眠時間が多くてもよくないか。
読了日:02月14日 著者:ヨシタケ シンスケ

■ひどい民話を語る会
MC京極さん、盛ってますよね!?というぐらいヒドい。ヒドすぎて笑ってしまう数々の民話。芸人がウ○コやオナラをネタにするたびに卑怯だと思っていました。だってそっちの方向に持って行けば、芸人の力量に関係なくウケるから。だけどこれだけ昔から皆が好きならば、下ネタに走るのは致し方のないことに思えてきます。「吸い込ん屁」なんて声をあげて笑っちゃって、なんたる不覚(笑)。あまりにウ○コを食べる話が出てくるから、『劇場版テレクラキャノンボール2013』を観てオエ〜っと言いながら死ぬほど笑ったときのことを思い出しました。
読了日:02月17日 著者:京極 夏彦,多田 克己,村上 健司,黒 史郎

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2023年1月に読んだ本まとめ

2023年02月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2023年1月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3541ページ
ナイス数:824ナイス

■クジラアタマの王様 (新潮文庫)
読み初めは伊坂幸太郎と決めて、いそいそ頁を開く。前半はニヤニヤしながらグイグイ先へと進んでいたのに、格付けチェックやらドリーム東西ネタ合戦やらをつけたらそちらに神経が行って集中できず。但し、最後はやっぱりいつものとおり、あの人ともこの人とも繋がってジワ〜ンと沁みる。伊坂さんまでこんなにコロナに寄せるのかと思ったけれど、それより前の作品だったのですね。今日の私たちのために、夢の向こうで踏ん張ってくれている人がいるのかもしれない。巻き込まれるかもしれなくても行く。何かあってから考えればいい。その考え方が好き。
読了日:01月03日 著者:伊坂 幸太郎

■騒がしい楽園 (朝日文庫)
年末に同著者の旧作を読んだばかりですが、新年も中山七里を読まずば明けた気がしない。車通勤の私は、通勤ラッシュ時の女性専用車両がそんなことになっているとは知らず驚愕。敵は多かろう舞子先生、誰にも媚びない姿勢が私は好き。しかし次は霊長類と聞いて、まさか子どもは殺さないだろうと思っていたのに、七里センセ、鬼(泣)。その描写はなかったのが救い。騒音と待機児童という社会問題を扱っているのは著者らしくて面白いものの、期待値が高いせいか犯人もその動機もショボく感じてしまいます。連続刊行作品中に大当たりがありますように。
読了日:01月05日 著者:中山 七里

■このゴミは収集できません (角川文庫)
私が結婚するとき、母から言われた唯一のことは、「ゴミの出し方には『人』が出るから気をつけや」でした。昨年末、ネットニュースで、缶が見事に潰されている画像の提供者がお笑い芸人でゴミ清掃人であり、本も書いていることを知りました。母の話を思い出しながら読んだら、めちゃめちゃ面白い。ゴミを見ればその暮らしぶりも人となりもわかるのは本当なんですね。悲しいかな貧乏人は貧乏人の姿がゴミの中に表れる。文才のない私が言うのもなんですが、この人、文才ありますよねぇ。三島由紀夫が割腹するような覚悟で私も断酒するか。しないけど。
読了日:01月09日 著者:滝沢 秀一

■廃墟の白墨 (光文社文庫)
まったくもって暗い。遠田潤子が紡ぐ物語はいつも凄絶で暗い。なのに吸い寄せられるように読み始めてしまうのです。病床の父親宛てに届いた手紙を無視できず、指定された場所に出向く息子。そこにはかつて父親と同じビルに住んでいた男たちが集まっていて、その全員が最上階に住む艶めかしい大家と寝ていたという。大家の惚れ込む男をクズだと言うけれど、ほかの男たちだってクズ。大家の幼かった娘の心配をしたところで罪滅ぼしにはならない。誰も好きになれないのに読むのをやめられません。償おうにも償う相手がこの世にもういないとは。苦しい。
読了日:01月12日 著者:遠田潤子

■一匹羊 (光文社文庫)
山本幸久の何を最初に読んだのだったか。『ある日、アヒルバス』だったか『男は敵、女はもっと敵』のどちらかだったように思います。どハマりして大人買いしたけれど、読み切れず積んだままになっていたもの多数。久しぶりに読んでみたら、ハマったときほどの面白さは感じない。だけどやっぱり落ち着ける。突飛なことは何もない、私を含めてその辺に居そうな人たちの、日々の些細な不満。そしてそれをほんの少しだけ向こうに吹き飛ばしてくれるささやかな幸せ。読み終わった後に頭の中に流れるのは、第一章のせいで本文とはあまり合わない石野真子。
読了日:01月13日 著者:山本 幸久

■ミスコン女王が殺された (創元推理文庫)
このシリーズに関しては、必ず1作目から順に読むことをお勧めします。ってまだ私もやっと2作目を読んだところですけれど。楽しい。すごく楽しい。CIAの凄腕エージェントでありながら、訳あって田舎町で身を潜めなければならなくなったフォーチュン。まったく興味のないメイクやファッションを覚えるはめになっても、いざというときにはエージェントの血を隠せません。町のどんな男も伸してしまえそうな彼女にとって唯一手強い保安官カーターとの行く末も楽しみ。全然違うのに、なぜか“よろず建物因縁帳”の春菜と仙龍を思い出してすみません。
読了日:01月19日 著者:ジャナ・デリオン

■噓つきは殺人鬼の始まり SNS採用調査員の事件ファイル (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
面白いけど嫌な話を書く、そんなイメージのある作家です。本作も何がどうなるのか先が読めず、真相がわかったときには中山七里のドンデン返し並に驚きました。就活生のSNSの裏アカを特定して企業に報告する探偵。彼のせいで内定を取り消された大学生。このふたりがコンビを組むようになるのがたまたまのことではなかったなんて。血も涙もないと思われた借金取りのオッサンのまさかの活躍に胸を熱くしていたのに、こんなラストはアンマリだ~(泣)。ところで「行けたら行く」はやはり断りの文句なんですかね。言葉通りの意味で使う人、好きかも。
読了日:01月24日 著者:佐藤 青南

■神様ゲーム (講談社文庫)
この表紙ならもう少し身構えて読み始めたと思うのですが、今は二重表紙になっていて、子どもがクレヨンで描いた絵。小学生たちが探偵まがいのことをして犯人を引っ捕らえる話を想像していたらとんでもない。猫は切り刻まれるわ、複数の子どもが死ぬわ、内ひとりは『サスペリア』かと思うような串刺し状態、トラウマ級の殺され方。誰の悪もすべてお見通しの「神様」=鈴木くんが天誅を下す。鈴木くんっていったい何者なんでしょか。片想い相手の女の子が主人公少年の父親とデキているかもしれないなんておぞましすぎる。小学生だっちゅうの。ビビる。
読了日:01月26日 著者:麻耶 雄嵩

■旅のオチが見つからない おひとりさまのズタボロ世界一周! (MF comic essay)
「メキシコは怖いところだから気をつけて」と言われてメキシコに向かったスペイン語堪能な知人が、現地の空港で「大阪は怖いところだから用心しろ」というメキシコ人同士の会話を聞いたと言っていたのを思い出しながら読みました。私にはこんな旅は絶対にできないし、したくもないけれど、めちゃめちゃ楽しい。ふきだしてしまった箇所がいくつもあります。紹介されているお料理も美味しそうで惹かれる。博物館に勤務している私は、特にモンゴルの衣装に「あるよあるよ、この衣装」とウキウキしました。牛糞で焼いたマシュマロは食べたくない(笑)。
読了日:01月30日 著者:低橋

■誠実な嘘 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
京極夏彦も顔負けの750頁余、ぴったりのブックカバーは無いし、頁を開いて持っている手も辛い厚さ。いや、京極さんはもっと分厚いか。序盤はアガサの目的がわからず、単にメグに憧れているのかと思う。そのうち少し印象が変わり、今村夏子の『むらさきのスカートの女』に登場する黄色いカーディガンの女のような存在を想像。そういうことかとわかる頃には不気味さが募り、時折聞こえる闇の声に多重人格者を疑ったりも。誰のための秘密か。誰のための嘘か。タイトルが意味するところはイマイチ私にはピンと来ません。読み応えはあるけれど、不穏。
読了日:01月31日 著者:マイケル・ロボサム

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2022年12月に読んだ本まとめ

2023年01月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2022年12月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:3063ページ
ナイス数:756ナイス

■ひとんち 澤村伊智短編集 (光文社文庫)
1週間に同じ作家を2冊も読むつもりはなかったのです。だけど今年の初めにこんな本も出ていたのを知って、好奇心を止められず。おかげで「くらしマート」と「宝塚ファミリーランド」に再び入り込むことになりました。全編近未来の話だった『ファミリーランド』よりもこっちのほうがジワジワ怖い。「ぼぎわん」に始まった著者は、なんだかぞわっとする平仮名4字を作るのが上手い。そのせいで「ひとんち」とか「じぶんち」まで嫌な感じに思えてくる。映像が流れる店頭では思わず立ち止まって画面の端を確認してしまいそう。この表紙も相当恐ろしい。
読了日:12月02日 著者:澤村伊智

■関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか (交通新聞社新書145)
生まれたときからン十年、ずっと阪急沿線に住んでいます。最初は宝塚線、途中で千里線、今は箕面線。阪急沿線の人ってお高くとまってるですよねという声、否定しません。だって阪急ですから(笑)。初めてひとりでJRに乗ったとき、そのギャップに衝撃を受けました。特に環状線で露出狂に遭ったときはまだ若かったから、こんなことが電車の中であるんや、阪急ではあり得んと思ってしばらく呆然としました。今はどの電車もそれぞれ良さがあって好きですが、私にとってはやっぱり阪急がいちばん。知らなかった歴史満載で、阪急好きに配りたくなる本。
読了日:12月08日 著者:伊原 薫

■LAST 東京駅おもてうら交番・堀北恵平 (角川ホラー文庫)
まだまだ新しいシリーズのような気がしていたのに、これだって第1巻が発行されてからとっくに3年経っていたのですね。よろず建物猟奇犯罪捜査班ロスを埋めるだけだったはずが、すっかりおもてうら交番にも魅せられていました。しかしこんな最後が待っていたとは切なすぎます。恵平と平野先輩のコンビは永久不滅であってほしかったけど、想像し得なかった形でのこれも永久不滅か。曳家も比奈子もちらほら姿が見えるし、平野先輩にもきっとどこかで会える。そして終了と同時に新シリーズが。ロス期間を最小限に留めてくれてありがとう、内藤さん。
読了日:12月13日 著者:内藤 了

■収容所(ラーゲリ)から来た遺書 (文春文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】原作を読んだのは5年半前。高齢だけど読書好きの両親にも薦めたら、「こんな良い本を教えてくれてありがとう」と甚く感謝されたのを思い出します。瀬々敬久監督のことは“ピンク四天王”の異名をとっていた時期のほうが今よりも面白かったと思っています。原作の句会の描写がほぼないのは残念だけど、このほうが映画としてはわかりやすいか。北川景子が綺麗すぎて昭和感は薄れます(笑)。遺書を記憶するシーンを最後まで伏せていたのは映画として当たり。泣きに走っていると思いつつも泣きますよねぇ。
読了日:12月14日 著者:辺見 じゅん

■薬喰 (角川文庫)
実は巷で人気の文化人類学者だか民俗学者教授を主人公にしたミステリーをさほど面白いと思えず、表紙からこれもそんな感じだろうと想像していました。そうしたら、こっちのほうが適度に重く適度に軽くて断然面白い。内藤了が好きな人ならこれもイケるだろうな〜と思いながら読んでいたら、まさかの“おもてうら交番”に通じる展開のうえに、内藤さんの新シリーズ“警察庁特捜地域潜入班”に続くかのような神隠しの物語でビックリ。このおふたりはネタ合わせしているのではと疑いました(笑)。自覚なく勘の鋭いアマネとタヌキ先生のコンビ、好きだ。
読了日:12月17日 著者:清水 朔

■FIND 警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花 (角川ホラー文庫)
えーっ、いきなり主人公の姓が違うやん。と思ったら、最初から旧姓に戻した設定になっているのですね。関心の薄い未解決事件を捜査する部署に左遷された清花。この手の内藤さんシリーズの中では異色の自信溢れるママさん刑事は、比奈子や恵平より可愛げがなさそうで、好きになれるかどうか心配でしたが、最終盤の「独りで闘わせたことが悔しいんだと思う」と言葉にグッと来て、これからがうんと楽しみになりました。さーちゃんと呼ぶってマジかと思われた班長も、なるほどこの仕事ならその呼び名が正解。今度は七味じゃなくてグミ携帯。良いチーム。
読了日:12月22日 著者:内藤 了

■おやすみラフマニノフ (宝島社文庫)
今は七里センセのファンですが、もしもこの辺りから読み始めていたら、ファンにはならなかったと思います。それもこれも『さよならドビュッシー』の映画版がアンマリだったせいなのですけれども。本作も「ボク」だったり「お母さん」だったり、今の七里さんっぽくない。なんだか乗れないなぁと思っていましたが、演奏のシーンが圧巻で、音楽が本職の人なのかしらと驚いてしまう。そうか、音楽は職業ではなくて生き方なのかと妙に納得。私はまだ岬先生のことをほぼ知らないので、この先も楽しみです。七里センセ遡りパターンが私にはよかったと思う。
読了日:12月27日 著者:中山 七里

■かがみの孤城 上 (ポプラ文庫 つ 1-1)
この厚さの上下巻に怯み、手を出せずに映画版を先に観ました。原作ではどんなふうに描かれていたのかが気になって、今年最後の本にしようと覚悟を決めて頁を開いたら、なんだこの文字のデカさは。老眼でも大丈夫とまでは言わないけれど、一日で読み切れるほどに字が大きくて有難い。幼稚園のとき、背の順に並んだ私の前後の子がいとこ同士で、そりゃもういじめられたことを思い出す。幼心に「こいつらが世界から消えますように」と祈ったものです。幼稚園児はまだ無理でも、世の中のすべてのいじめられっ子に「これ読んで。大丈夫だよ」と言いたい。
読了日:12月29日 著者:辻村 深月

■かがみの孤城 下 (ポプラ文庫 つ 1-2)
上下巻併せて800頁近くを年内に読みきるのは無理だと思っていたのに、こんなにスイスイ読めるなんて。想定外の文字の大きさだったポプラ文庫にありがとう。こころの一人称で書かれている錯覚を起こしていたことに気づく。完全に彼女の気持ちになっていたからでしょう。映画版がまさにこのまんまで、よくこれほどまで原作に忠実に作れたものだと思います。違う世界に生きているわけではない。この城で出会えたみんなと同じ世界でいつか逢えるのだとしたら、それは生きる力になる。記憶が消し去られてしまったとしても、心のどこかで響き合うはず。
読了日:12月31日 著者:辻村 深月

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