夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

2022年9月に読んだ本まとめ

2022年10月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2022年9月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:4793ページ
ナイス数:1315ナイス

■アキラとあきら (徳間文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】5年前に読んだ本の内容なんてほとんど忘れています。同じ名前の少年が2人いて、一方は金持ち、一方は貧乏、でもどちらも頭脳明晰、大手銀行に将来を期待されて就職、ぐらいでしょうか、うっすらと覚えていたのは。三木孝浩監督作品は今年だけで3本目。がっかりすることのほうが多かったけれど、これは面白かった。竹内涼真横浜流星、どっちもイイ。意外にも泣かされたのは、めっちゃ嫌な奴だったはずのユースケ・サンタマリアの表情。あと、いつもオイシイところを持って行く江口洋介。楽しめます。
読了日:09月01日 著者:池井戸潤

■マリアビートル (角川文庫)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】原作を読んだのは読書メーターを始める前だったことに気づく。ということは5年以上前。『アキラとあきら』同様、そんな前に読んだ本の内容は覚えちゃいないんですが、公開初日の昨日鑑賞。伊坂幸太郎の小説がブラピ主演でハリウッド映画化されるなんて誰が予想していたでしょう。内容をほぼ覚えていないのに最初から可笑しい。レモンとタンジェリンで檸檬と蜜柑を思い出してすぐに笑えるのは原作の読者だけ。わざわざ舞台を日本にしたまま映画化しなくてもと思ったけれど、観てみればそこが面白かった。
読了日:09月02日 著者:伊坂 幸太郎

■呪街 警視庁異能処理班ミカヅチ (講談社タイガ)
同著者が書く好きなシリーズが次々と終わってしまうなかで始まったこのシリーズ第2弾。まだ今までのシリーズを超えるほどにはのめり込めませんが、霊視能力を持つがゆえに悲しい人生を送ってきた青年・怜のことをどんどん好きになっています。異能処理班はもちろんのこと、怜の周囲の人々がみんな個性にあふれて魅力的。自分が人を救えると思うことが実はどれだけ傲慢な考えなのかも思い知らされました。しかしこれ、想像力に富んだ人なら恐ろしい絵面まで浮かんできて結構衝撃的でしょうね(笑)。ホラー苦手なくせしてイメージ湧かない私は平気。
読了日:09月02日 著者:内藤 了

■フーガはユーガ (実業之日本社文庫)
『ブレット・トレイン』を観たら、別の双子が出てくる話も読みたくなり。いつもの著者の作品同様に軽妙なタッチで描かれていますが、ここに登場する青少年の生い立ちは揃いも揃って凄絶。現実にはありえない設定も、あとがきにある「自分が書く話の中でくらいは、大変な目に遭う子供たちが特別な力で冒険してもいいのでは」という言葉に胸が詰まります。虐待を受けていたり悲惨な境遇にあったりする子供たちみんなにこんな力が授けられるといいのにと思う。雑魚だって組むひと次第。「優」の字の説明には唸りました。その説明どおりの人でありたい。
読了日:09月04日 著者:伊坂 幸太郎

■あきらがあけてあげるから 【3歳 4歳からの絵本】
ウチの父の名前は「あきら」です。高齢者にありがちなことですが、転んで骨折。現在入院中です。そもそも筋力がちっともなくて、入院するずっと前からペットボトルのふたを手だけで開けることはできませんでした。「お父さん、ヤットコ持ってきてペットボトルのふた開けはるねん」と母が言っていました。リハビリ病院でしっかり筋力をつけて、なんでも開けられるようになってから退院して来るんだよ。感想だかなんだかわからなくてすみません。ヨシタケさんの本には必ずオチがあって最高。ついでに亡き義母がペットボルトと言っていたのも思い出す。
読了日:09月06日 著者:ヨシタケ シンスケ

■あきない世傳 金と銀(十三) 大海篇 (ハルキ文庫 た 19-28)
全13巻、ほんの数年だったように感じていたのに6年半ですか。『みをつくし料理帖』と併せたら、私はこの間いったいいくつ歳をとったのかと考えるとゾーッ(泣)。姉妹が和解することを望んでいた人も多かろうと思いますが、私はそんな良い性格じゃないので(笑)、結に天罰が下ることを祈っていました。祈ったとおりになったような、でも縋りもせずに姉にまだ敵意丸出しの彼女を見ると、これはこれでアッパレか。ひとの命には限りがあるけれど、寿命が尽きても、生み出した色は残る。顔料をつくる会社に勤めていた亡き弟を想い、グッときました。
読了日:09月11日 著者:高田 郁

■透明な螺旋
東野圭吾を読むたびに思う、こういうのをリーダビリティが高いと言うのだろうなぁって。何度も書いていることですが、最近のどの作品を読んでも昔の同著者を読んだときのような切なさには駆られません。もしやこれはあちらのせいではなくて、こちらが愚鈍になっているせいかもしれないと思うほどです。だけど、他の作家の作品を読むときにはなかなかない速さで頁が進む。本作は湯川教授の出自がわかって、本筋よりもそちらに驚きました。しかし勘が良すぎるでしょう、湯川先生。彼には何も隠し事ができない(笑)。騙されたままで居たい場合もある。
読了日:09月13日 著者:東野 圭吾

■帝都地下迷宮 (PHP文芸文庫)
読んでも読んでも新作が出て全作読破は叶いそうにもない七里センセ。解説を読んで納得、デビュー時に百もネタを持っていたなんて。書き続けることができなければ作家じゃないと言い切られたら、打ちのめされる人がいっぱいいるのでは。廃駅を住処とする集団。突拍子もない話ですが、現実に起きた事故をモチーフにされると、本当にこんな目に遭っている人がいるかもしれないと思わされます。いつも思うのは、七里センセが一般人だったら、公安に真っ先に目をつけられるのではないかということ(笑)。政府に物申して何かやってくれそうな気がします。
読了日:09月16日 著者:中山 七里

■沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】封切り日だった昨日、レイトショーにて鑑賞。今年初めに読了したところなのに、どうしてこんなにも細部を忘れているのか。『オリエント急行殺人事件』みたいな話で、思いのほか歌の先生が悪かったように記憶していたのに、全然そうじゃなかった。その歌の先生役の椎名桔平と奥さん役の檀れいの演技はちょっと大げさな印象。福山雅治が主人公であることは間違いないけど、本作では北村一輝がお見事。エンドロールを見ると、柴咲コウはさほど変わっていない。でも福山雅治、若い。なんだかんだで歳とった。
読了日:09月17日 著者:東野 圭吾

■100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集
本を読むのが大好きだった両親も高齢になり、読書に集中するのは難しくなっているようです。そんな両親がパラパラと眺めて拾い読みできる本を探していてたどり着きました。難易度の高い低いがあるから、低いものなら私でも即答できます。でも、知っているはずなのに正解が出てこないタイトルのなんと多いことよ。同じ著者の2作品タイトル合体とか、ありそうですね。結構衝撃的で「マジか」と思ったのは、パン屋が蕎麦屋に変わっているやつ。私は「痔」も「痣」も書けません。タイトルの覚え違いをしていても、書けない字を書ける人、すごいです。
読了日:09月19日 著者:福井県立図書館

■君と夏が、鉄塔の上 (ディスカヴァー文庫)
少しでも暑さの残る夏の間に読まなくちゃ。何にでもオタクというのは存在するもので、主人公は鉄塔オタク。鉄塔にも性別があり、しかも料理長型女鉄塔などという楽しげな形式名称まであるなんて。想像していたよりもファンタジー。『E.T.』ばりにチャリが空を飛ぶ。群れない中学生男女3人の関係性がとてもいい。巻末に収録された短編で彼らのその後を知って嬉しくなります。「どうせ、いつかは笑い話にしなきゃいけないと思うんだ」という言葉になぜか涙が出そうに。そう、先がどうであれ踏み出さなきゃいけないときがある。いつか笑い話に。
読了日:09月22日 著者:賽助

■震える天秤 (角川文庫)
現実社会で起きた事件を思わせるフィクションを書かせたら中山七里染井為人か、と言ってもいいですか。老人が運転操作を誤ってコンビニへ突っ込む。事故かと思いきや、疑わしき背景。住民同士を守ろうとする結束力は凄いけど怖い。夢中になって読みましたが、最後の最後だけはもっとはっきりと「本当のところ」が知りたかったような。だけどそこを明らかにしていないからこそこのタイトルが生きてくるのかもしれません。律の元妻・里美の法廷が見てみたい。認知症かどうかは調べられても、認知症の人の運転能力は調べられないという話になるほど。
読了日:09月26日 著者:染井 為人

■べつに怒ってない (単行本)
喫茶店で背中にナポリタンが降ってきたら普通怒りませんか。それで腹を立てないって、どんだけ心の広い人なんだと思ったけれど、一応そこここで不機嫌になったりムッとしたりはしている模様(笑)。ドラッグストアでの買い物、ごはん半分の話など、思わず頷いてしまう。最後の最後に驚く。だって私は本作を読みはじめた日、ベッドの角で足の小指をぶつけて悶絶したから。幼少の頃からあちこちにヒビを入れた経験があるので、骨に異常を来していればもっと痛いと日にち薬を選択。真紫だった小指がようやくマシになってきたところで読了とは奇遇です。
読了日:09月30日 著者:武田 砂鉄

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2022年8月に読んだ本まとめ

2022年09月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
7月と同じく4冊しか読めませんでした。
今月は元のペースに戻して読めるかなぁ。
 
2022年8月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1252ページ
ナイス数:588ナイス
 
■空飛び猫 (講談社文庫)
が亡くなってちょうど2ヶ月経ちました。まだまだ読書のペースは上がらないけれど、今月こそいっぱい読むぞと気合いを入れるため、まず1冊目にすぐ読める薄さのこれを。翼が蝉の羽のように見えて少し不気味ではありますが、可愛い挿絵。猫たちがこちらの想いを乗せて飛んでくれたら、どんな願いも叶いそう。村上さんの訳注も面白いです。特に「いんげん」と「にんげん」の話を読むと、映画や本のジョーク部分の翻訳の難しさがわかりますね。確かに、声に出して読みたい本。
読了日:08月03日 著者:アーシュラ・K. ル・グウィン
 
■ワルツを踊ろう (幻冬舎文庫)
ここまでスプラッタばりの惨殺シーンが出てくる中山作品ってありましたかね。殺される人はそこまで多くないものの、津山三十人殺しを思い出さずにはいられず。高齢者のみの限界集落に戻った主人公に同情すべきなのでしょうが、いきなり拡声器でクラシック音楽を流して人々に気に入られるわけもなく、好人物には程遠い。いつだったかも書きましたが、こういう話を読むと坂東眞砂子の『くちぬい』を思い出して気が滅入る。もしかすると板東さんは本作の主人公に拍手喝采を送りたくなったかも。しかしこの行為すら仕向けられたことだとしたら。絶望的。
読了日:08月05日 著者:中山 七里
 
■相続レストラン (角川文庫)
弟が亡くなるまで相続のことなんてまるで知りませんでした。両親健在だから私は法定相続人ではないけれど、それでもこの2カ月でどれだけ詳しくなったことか。お料理絶品のうえに相続に関する相談までできるレストランが本当にあれば、流行るかもしれません。ひとつずつ相談事を片付ける短編集かと思いきや長編でした。不動産があって隠し子もいたら、そりゃ大変。装丁からイメージするほど軽い話ではなく、かといって妬み嫉みが渦巻くドロドロ話でもないから気は滅入らず。『看守の流儀』で知った作家ですが、こっちも面白い。シリーズ化できそう。
読了日:08月13日 著者:城山 真一
 
■法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
ジャンルは違えどもデザインを専攻していた点が京極さんと重なって気になり、なんとなく読んだ『女學生奇譚』が私のツボにハマりました。こんなシリーズも書いていらっしゃるのねと読み始めたものの、昆虫は苦手なんです。しかもちっとも可愛いとは思えない、見かけたらギョエーッと叫んでしまいそうなやつばっかり。眉間に皺を寄せながら読みましたが、超面白かった。内藤了好きなら絶対これも好きでしょう。暴走気味の赤堀先生は藤堂比奈子とかぶる。虫の描写がかなりキツイけれど、死神女史が扱う事件がセーフだった人はたぶんこれも大丈夫かと。
読了日:08月25日 著者:川瀬 七緒

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2022年7月に読んだ本まとめ

2022年08月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
が亡くなってもうすぐ2ヶ月。
そろそろちゃんと本を読めるかなと思いましたが、全然無理。
父が要らんことして転倒&入院しましたからねぇ。
今月こそ、こんなに読めたでぇと弟に言えるくらい読みたいけど。

2022年7月の読書メーター
読んだ本の数:4冊
読んだページ数:1311ページ
ナイス数:497ナイス

■ゴーストハント5 鮮血の迷宮 (角川文庫)
去年の5月から6月にかけて勢いつけて第4弾まで読んだ後、1年も放置してしまいました。『ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷』とか『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』とか、ホラー苦手なくせして好奇心に抗えずに観ておいてよかった。もうめちゃくちゃウィンチェスター(笑)。私は第2弾のお人形さんのほうが怖かったようにも思うけど、映像化するとこっちのほうが断然怖そうです。隠された血まみれの処刑室なんてゾワーッ。安原くんの肝すわりすぎ。麻衣と真砂子のやりとりが結構好きです。去年並みに続けて読みたくなった。
読了日:07月03日 著者:小野 不由美

■ラブノーマル白書 (文春文庫)
人目に触れるところで広げるのは不可。単行本の出版時のタイトルは『人生エロエロだもの』だったそうで、それよりはマシだけど、なにしろ全話書き出しが「人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた」。各話の太字タイトルも恥ずかしいし、挿絵にいたっては絶対に見られたくない。この本の読者の中で『変態だ』を劇場鑑賞した人はそんなにいないと思うから、それは私の自慢かも。でも自慢にはならないかしらん。絶賛公開中の『トップガン マーヴェリック』デヴィッド・ボウイの曲がかかったら思い出してしまうじゃあないか。嫌だわ、もおっ。
読了日:07月04日 著者:みうら じゅん

■ハニー・ハンター 憑依作家 雨宮縁(祥伝社文庫な25-3)
最も楽しみにしていた“よろず建物”が終わり、“藤堂比奈子”もとっくにいなくなり、“フロイト”も消えて“けっぺー”すらもうじき去ってしまいそうな今、それほどには楽しみじゃないけれどそれなりには楽しみにしているシリーズです。雨宮縁のような変装の達人が本当にいるのならば会ってみたいもの。彼(彼女)と秘書の庵堂の過去に触れる箇所もあり、少しは謎が明らかになってきました。すべてのハンターを操っているとおぼしき人物が怖すぎて、自分の想像力が乏しいことに安堵する。あんなシーン、まんま想像できる能力があったら眠れない。
読了日:07月12日 著者:内藤 了

■白昼夢の森の少女 (角川ホラー文庫)
『夜市』を読んだとき、その妖しい光景が目の前に広がるようで魅了されました。本作の第1話『古入道きたりて』でそれを思い出し、1冊まるごと没入間違いなしだと思ったけれど、この第1話より気に入る話は最終話までついぞ出て来ず。ノスタルジーを感じるホラーというよりも、もう少し新しい印象を受けます。あとがきを見てみると、著者の意向のみで書いたというよりは、テーマを与えられて書いたものが多いよう。『夜市』のほうが好きとはいうものの、やはりこの著者の文体には引き込まれます。昭和、平成、それぞれのキャッチフレーズを考える。
読了日:07月28日 著者:恒川 光太郎

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2022年6月に読んだ本まとめ

2022年07月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2冊しか読めなかった月なんて、何十年前まで遡ってもそうそうないと思います。
が亡くなった悲しく寂しい月。今月はいっぱい読みたいです。

2022年6月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:985ページ
ナイス数:393ナイス

■ハケンアニメ! (マガジンハウス文庫)
読み始めたのは5月末でした。その途中で弟がホスピスに転院。余命わずかということで付き添いを許され、読書する時間は多かろうとアホほど文庫本を携えて行ったのに、1冊どころか1頁も読めず。文字が頭に入らなくて。弟が亡くなって今日で2週間。やっと読了。頁を開けば弟を思い出す切ない1冊になりました。映画版を観た折には弟との連絡専用にしていたスマホがブルッと来たんだったなぁ。映画版は斎藤監督メインだったけど、原作の並澤さんの話も面白い。サバクとリデルライトの対決じゃないとは驚いた。原作、映画版共に行城がカッケー。
読了日:06月17日 著者:辻村 深月

■ギブ・ミー・ア・チャンス (文春文庫)
弟の死後まだ日も浅いので、ヘヴィーな話は読む気になれません。「少しだけ生きる気力が湧いてくる短編集」の「少しだけ」というのが控えめで良い感じ。冴えない人生を送っている人ばかりが主人公。元関取の探偵、売れない歌手や漫画家、国際線の客室乗務員から転職したローカル列車の車内販売員、着ぐるみを被るはめになった市役所職員などなど。表題作は誰かと組んで芸人になりたいのに相方が見つからないコンビニ店員の話。少しの運と機会があれば風向きも変わったろうに。「夢は叶う」と言うのは夢が叶った人がいう言葉。でも夢は持ち続けたい。
読了日:06月23日 著者:荻原 浩

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2022年5月に読んだ本まとめ

2022年06月01日 | 映画(番外編:映画と読み物)
2022年5月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2696ページ
ナイス数:810ナイス
 
■十代に共感する奴はみんな嘘つき (文春文庫)
あらら、ならば私も嘘つき。薄さだけに釣られて買い、最初の数頁で、しまった、これは川上未映子の『わたくし率 イン 歯ー、または世界』のように、薄いのにやたら時間がかかるやつかと後悔。でも違った。わかるよその気持ちと言いたくなるシーンがどれだけあったことか。ラップになりそうな文体とか、確かにオバハンにはついて行きづらいけど(笑)、教師の言動を「あなたパンでも作っているんですか」と言ってみたり、一度は告った相手に「それ言われて喜ぶと思ったの?」と毒づいてみたり。わかるよほんとに。傷ついても生きる。今日が好き。
読了日:05月03日 著者:最果 タヒ
 
■ジグソーパズル48 (双葉文庫)
頭を使わずに読めそうな本だと思って手に取ったのに、めちゃめちゃ難しいじゃあないか。そもそもどうして48なのかと思ったら、登場人物の名前がAKB48のメンバーのアナグラムになっているんですと。知らんがな。同じ女子高に通う生徒が登場する短編7つ。日常に起きた事件と言うけれど超非現実的。笑ったのは「サドルは痴漢」。当時「サドルになりたい」とつぶやいていた男子がいたと何十年も経った最近知ったから(笑)。トイレに行って手を洗わずに出てくる女子が多いということもこの本で教えてもらいました。隠された謎、ひとつも解けず。
読了日:05月05日 著者:乾 くるみ
 
■死にゆく者の祈り (新潮文庫)
中山七里初心者だった頃には犯人を推理しつつ読んでいましたが、今は推理なんて全くしません。推理したところでどうせ当てられないから、「無」の気持ちで臨む。教誨師といえども、目の前にいる死刑囚が自分の命の恩人だったら冷静ではいられない。残された時間が一日だけだったとしても、生きていることに価値を見出せない時間を過ごすよりは、経を読むことにはよっぽど価値があるという言葉は突き刺さる。最後にドンヨリした気持ちで終わることにはならないと信じて読めるのも中山作品の魅力。御子柴弁護士登場か!?と思ったけど、来んか(笑)。
読了日:05月08日 著者:中山 七里
 
■流浪の月 (創元文芸文庫 LA な 1-1)
作中の台詞に出てきたように、ストックホルム症候群かと思って読み始めました。しかも『完全なる飼育』を思わせるような。小児性愛者と聞いただけで理解しがたくてゾッとしてしまうものですが、こういうケースもあるのですね。切なくて、苦しくて、堪らない。たった2カ月一緒に暮らした青年と少女。ふたりの間に何があったか、いや、何もなかったのだということはふたりしか知らない。どうして人は「あった」としか考えられないのか。理解されることはなくとも、ふたりが穏やかな時間を過ごしているラストシーンに救われる。こんな愛情の形もある。
読了日:05月11日 著者:凪良 ゆう
 
■死刑にいたる病 (ハヤカワ文庫JA)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】原作ではイケメンなんですよね、連続猟奇殺人犯。確かに阿部サダヲは上手いけど、どアップをそんなに見たい顔ではない。やっぱりイケメンのほうがよかったような。白石和彌監督らしく、直視に耐えないえげつないシーン多数。爪剥がす、腱切る、嬰児を焼くシーンまでモロ映しで、下手なホラー映画より怖いから、その手の作品が苦手な人はご注意くださいませ。岡田健史は良かった。岩田剛典にはちょい違和感。ラストシーンに至るまでゾーッとさせられるので、心身ともに元気な人にだけご覧になること推奨。
読了日:05月11日 著者:櫛木理宇
 
■流浪の月 (創元文芸文庫 LA な 1-1)
【再読ではなく、映画版を観たので書き込み】公開初日の本日、舞台挨拶付きの回を鑑賞して帰ってきたところです。挨拶込みだと実に200分の長尺。もしも原作を読んで、文って結局どういう状態だったのかとモヤモヤしている方がいらっしゃるなら、あまりにも具体的な映画の描写にスッキリするはずです。松坂桃李がモザイクなしの全裸になってそこを晒す。更紗は原作よりも人づきあいを上手くこなす印象で、建物は原作のほうが瀟洒な印象。亮は「突き落とされた」とまでは言わない、最後はマシな人。原作の切ない感じは映画でも出ていると思います。
読了日:05月13日 著者:凪良 ゆう
 
■父と私の桜尾通り商店街 (角川文庫)
最も読みやすい芥川賞作家だと思っていますが、読み終わるといつも、苦しいような虚しいような、なんとも言いがたい感情に襲われます。どの著作にも出てくる、いわゆるちょっとイタイひと。空気を読めなかったり要領が悪かったりして、もしもそばにいたら苦笑いしてしまうかもしれません。そんなことを思う自分に嫌悪感を抱きます。これらの登場人物に私は優しく接することができるだろうか。そう考えること自体、自分を上に据えているのでしょう。彼女たちを幸せだとは思えない。でも幸せかどうかなんて本人にしかわからない。幸せであってほしい。
読了日:05月15日 著者:今村 夏子
 
■猫なんかよんでもこない。 (コンペイトウ書房)
漫画を登録するのは初めてです。なんとなく、漫画と本は別物で、読書の冊数に入れてもいいものかどうか迷っていたから。でもこれは読んだ本に入れておきたい。この猫の顔は猫なのか、全然好きな絵じゃないよと思うのに、読み終わる頃には可愛くて仕方ないように感じます。猫を飼ったことのある人なら誰でも「あるある」と笑い、「そうそう」と涙に暮れることでしょう。やっぱり、猫がなつかないなんて嘘ですよね。呼んでも来てくれないことは多いけど、呼ばなくても来てくれたりする。旅行帰りにミャーミャー鳴かれたときには悶絶したのを思い出す。
読了日:05月19日 著者:杉作
 
■院内カフェ (朝日文庫)
出版されて即購入し、一旦は読みはじめたものの頭に入って来ずに閉じてしまいました。あれから3年半。弟が癌になり、積読の山の中にあった本作に再び目が留まる。先月までが入院していた病院、そしておそらくもうじきホスピス棟に入ることになる病院のカフェを思い浮かべて読む。患者は、希望がない現実を見るよりもいいと、怪しげな道であってもミラクルを期待する。そんな時期がありました。現実を見るのはとても辛いことだけど、こんなカフェがあればいいなと思う。って、コーヒーはいたって普通のようですけれど(笑)。ここで待っていたい。
読了日:05月24日 著者:中島たい子

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