夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『トランス・ワールド』

2013年10月18日 | 映画(た行)
『トランス・ワールド』(原題:Enter Nowhere)
監督:ジャック・ヘラー
出演:サラ・パクストン,スコット・イーストウッド,キャサリン・ウォーターストーン,
   ショーン・サイポス,クリストファー・デナム他

劇場で観た作品を優先してUPしていたら、DVDで観た作品の出番がなかなかなく。
隙間にこれもUPしておきます。

最近「トランス」が流行なのか、昨日劇場で観た作品が『トランス』ならば(これは後日UP予定)、
『アップサイドダウン 重力の恋人』に登場した企業の名前はまさに「トランスワールド社」でした。

さて、本作は2011年の未公開のアメリカ作品、9月初めよりレンタル開始。
ドーナツ型に収められた森と小屋と車のジャケット写真と、
「出会うはずのない3人、たどり着いた異次元の世界」のキャッチコピーに惹かれ。
原題は“Enter Nowhere”、そう、どこにも行けない。

意外なめっけもんで、未公開が惜しまれるとまでは行かずとも、
DVDで観るにはかなり満足、面白かったです。
未公開作品についてはしばしばそうであるように、今回もネタバレ全開モードで。
今後ご覧になる可能性のある方はご注意ください。

ガソリンスタンドに併設されたショップへ入ったカップルが、
おもむろに銃を取り出して強盗をやらかすシーンからスタート。
中年の男性店員がレジから金を取り出すが、
カップルの女のほうはレジ後ろの金庫の中身まで奪おうとする。
店員は「どうしてもと言うなら開けるが、中身は気に入らないと思う」と。
意味深に笑う店員に女はキレ、3つ数えて引き金をバンッ。

場面は切り替わり、森の中をさまよう清楚な雰囲気の女性サマンサ。
夫と車で出かけ、途中ガス欠に。助けを求めに降りた夫は帰ってこない。
夫を探そうと森の中へ。やがて古びた小屋を発見するが無人。
わずかな食糧を見つけ、盗み食いしているところへ若い男トムがやってくる。

トムは車の故障に遭ってこの森に紛れ込み、数日間ここにいるとのこと。
夜は氷点下まで冷え込むため、じっとしているのが無難だと言う。
しかし、昼間にいくら付近を探索しようとも、
なぜか毎回この小屋の位置へ戻ってきてしまうらしい。

翌日、おもてでドサッという音。サマンサが出てみると、倒れている女が。
見るからにガラの悪そうなその女は、介抱してもらったというのに終始けんか腰。
目覚めて早々に小屋を出て行くが、迷路のような森から出られずに戻ってくる。

この女こそが冒頭のシーンの強盗犯ジョディでした。
態度が少し柔和になったころ、3人が驚愕する事実が発覚します。

ここから、もろネタバレ。

3人それぞれ、自分たちがいると思っていた場所も年代もバラバラでした。
サマンサは1962年のニューハンプシャー、
ジョディは1984年のウィスコンシン、
トムは2011年のサウスダコタ。
そして全員が血縁関係にあるのです。

サマンサはジョディの母親で、出産時に死亡。
サマンサの夫、つまりジョディの父親は戦死。
両親を知らずに育ったジョディはグレて、あちこちで強盗。
獄中でトムを出産した後、死刑に。
施設に預けられたトムは、恨んでいた神父を殺してから自殺。
3人とも自分がそうやって死ぬ予知夢を見ていました。

そしてここは第二次世界大戦中のポーランド
やがて小屋での任務に就いていたドイツ人、ハンスが戻ってきますが、
このハンスこそがサマンサの父親。

ハンスが空爆を受けて死んでしまうことさえなければ、
3人の人生はちがったものになるはず。
そう考えた3人は、何が何でもハンスを防空壕へ引っ張り込んで救おうとします。
その途中、トムをかばったジョディが撃たれ、ジョディが死んでしまえば、
その息子であるトムも当然いなくなってしまうわけで。

次々に3人が消えたあと、生き残ったハンス。
ハンスが空爆を逃れたおかげでどうなったか。

過去を変えれば未来も変わる。
未来に影響を与えるようなことをするのは許されるのか。
タイムマシンものではよく問われることですが、
不幸だった3人が、不幸であってもこの世に生まれたいと願い、
自分の母親の幸せを願い、それゆえに成し遂げたこと。
いいラストです。

余談ですが、小屋の外に初めてハンスの姿が見えたとき、
「誰だろう」と言うトムやサマンサに、ジョディが「マイケル・マイヤーズだわ」。
『ブギーマン』(1981)に登場する殺人鬼のことでした。

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