夜な夜なシネマ

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『裸足の夢 A BAREFOOT DREAM』

2013年10月19日 | 映画(は行)
『裸足の夢 A BAREFOOT DREAM』(英題:A Barefoot Dream)
監督:キム・テギュン
出演:パク・ヒスン,コ・チャンソク,清水圭,シン・チョルジン,ト・ヨング他

『モンゴル野球青春記 バクシャー』の余韻も冷めぬうち、
同じくナナゲイにて、今度はサッカーの「実話に基づく」

キム・ウォンガンは、実業団サッカーチームで活躍した選手。
しかし、引退後に手を出した事業で騙されて失敗。
多額の借金をなんとか返済しようとオイシイ話に飛びつき、
21世紀最初の独立国、東ティモール(1999年にインドネシアの占領から解放、
国際法上では2002年にポルトガルより独立)へとやってくる。
コーヒー農園で大儲けするはずが、これがまたしても大ホラ話で意気消沈。

在東ティモール韓国大使館に駐在する外交官パクは、
まだ内戦の傷跡が深く、貧困と飢餓に覆われているこの国にいるのは危険だと、
早々に韓国へ帰ることをキムに勧める。

パクが運転する車に乗った空港までの道すがら、
キムは子どもたちが裸足でサッカーをする様子を目にする。
ここにスポーツ用品店を開けば大儲けできるではないか。
そう考えたキムは残ると決め、さっそく店をオープンする。

ところが、サッカーシューズを買う金など誰も持っていない。
あまりの無計画ぶりにパクは呆れるが、
パクから紹介された日本人中古車ディーラーの東城が割賦販売で儲けているのを見て、
子どもたちに先にサッカーシューズを与え、
1日1ドルずつ、2カ月間で完済させることを思いつく。
子どもたちは大喜びでサッカーシューズを履くのだが……。

主演のパク・ヒスンは、高知東生の見た目をさらに軽くしたような人。
何度詐欺に遭おうが学習しているとは思えず、苦しい言い訳ばかり。
金勘定ばかりして、子どもたちから巻き上げようとする姿には嫌悪感が募ります。

そんな彼に、子どもたちの家族からクレームが入ります。
子どもは大事な働き手。サッカーばかりされたら仕事をしなくて困る。
キムはそれにもっともらしく言い返しはしますが、
このときは子どものことを考えているわけではなく、
金儲けのことしか考えていませんから、何を言っても薄っぺらい。
けれども子どもたちが喜んでひたすらボールを蹴り、
ミスター・ウォンガンと頼られているうちに心情に変化が現れます。

複雑な状況下にある東ティモールでは、チームメイトの家族同士が争って、
負傷したり死亡したりしたケースもあり、試合中に味方同士で喧嘩になることもしばしば。
そんなとき、キムが考えたのは、「チーム外に敵がいれば目がそちらに向くだろう」。
その敵として真っ先に考えられるのが日本ですから、
日本国民としてはあまりいい気はしませんねぇ。

主演=軽薄、敵=日本ではあまりテンションは上がりませんでしたが、
これまでの人生で何もかもが中途半端だったキムが、
この子どもたちとなら最後までやり遂げられそうだと感じ、
国際試合に出場させようと走り回る辺りからは私も泣きモードに。

「モンゴルで野球」と「東ティモールでサッカー」とどちらが大変か。
なんて比較はできませんが、スポーツの持つ力は偉大。

同監督の『クロッシング』(2008)とはまた違った衝撃の作品です。

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