夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『返校 言葉が消えた日』

2021年08月09日 | 映画(は行)
『返校 言葉が消えた日』(原題:返校)
監督:ジョン・スー
出演:ワン・ジン,ツォン・ジンファ,フー・モンボー,チョイ・シーワン,
   リー・グァンイー,パン・チンユー,チュウ・ホンジャン他
 
大阪ステーションシティシネマにて、『白蛇:縁起』の次に。
 
公開前に本作のポスターを見たとき、ホラーやな、パス!と思いました。
最近の私はホラーにも耐性ができて、時には好んで観に行くけれど、
学校を舞台にしたホラーって、なんだか途轍もなく怖そうで。
 
そのときは、これが台湾のホラーゲームを基にしているものだと知らなかったんです。
しかもそのホラーゲームの題材が普通じゃないことも。
知れば観に行かずにはいられません。
 
1960年代は中国国民党が強権政治を敷く戒厳令下にありました。
中国国民党は中国共産党などの反体制派に厳しい政治的弾圧をおこない、
反体制派と見るや捕らえて投獄し、死刑に処す。
これら一連の弾圧は「白色テロ」と呼ばれています。
その白色テロをテーマとしたホラーゲームって、そんなものがあるんだ。
 
翠華中学(日本では高校に当たる)に通う女子生徒ファン・レイシンは、
ある日の放課後、いつのまにか教室で寝込んでしまう。
ふと目が覚めると学校の様子がおかしい。まわりには誰もいない。
 
校内をさまよっていると、後輩の男子生徒ウェイ・ジョンティンに遭遇。
彼はファンに片想い中で、ファンが想いを寄せているのは教師チャン・ミンホイ。
 
戒厳令下、本を手に取ることもままならないなか、
チャンは同僚の女教師イン・ツイハンと共に、
読書好きの生徒たちを集めてひそかに読書会を開いていた。
ウェイはその読書会のメンバー。
 
同級生や教師を探し、学校から脱出しようと力を合わせるウェイとファンだったが、
どうにも外に出ることができず……。
 
中国や台湾や韓国のこういった時代背景の作品を観るたびに驚きます。
軍事政権下の韓国が描かれた『1987、ある闘いの真実』(2017)や、
本作と同様に学生がアカ認定されて拷問を受けた様子を描いた『弁護人』(2013)など、
30年からせいぜい半世紀ほど前に本を読むことが禁じられていたなんて。
そして未だに自由に本を読むことが許されない国が存在する。
 
国家の君主は何を恐れているのでしょうか。
本を読めばたちまちみんな賢くなって自分が倒されるとか?
 
時代はもう少し遡りますが、それでもまだ百年は経っていない時代に、
本を読めばアカ認定されることがありました。
『チャイルド44 森に消えた子供たち』(2014)のそんなシーンもよく覚えています。
本を焼かれる時代には生きていたくない。
 
白色テロを知るためにも一見の価値がある作品ですが、堂々のホラー(笑)。
直視できないシーンもたくさんありましたから、ホラー苦手な人にはやっぱり無理かも。
このホラーゲームを体験することも可能だけど、いや、私には無理。(^^;

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